未来からの訪問者 Part2
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Q.両親の好きなところは何ですか? By虎杖 悠仁
陽「好きなところ……ですか?!」
虎「おう!これなら陽太も答えやすいかなって思ってさ。」
陽「う〜〜〜〜〜ん…………。」
貴「そんな悩むくらい出てこないの?!?!」
陽太は頭を捻らせて考える。その様子に憐は驚いてツッコんだ。未来の自分達は、子どもに好かれてないのかもしれない……。
貴「どうしよう憂太……。ひょっとしたら私達……良い親じゃないのかも……。」
乙「え?!……そんな、落ち込まないで憐……大丈夫だよ!き、きっと色々あってすぐに答えが出せないだけだよ……!」
背中にどんよりした空気を背負い落ち込む憐に、乙骨は隣に寄り添い、すかさずフォローするが、気落ちした表情はあまり変わらない。
虎「もしかして俺……質問ミスった?」
野「何初手から余計な事聞いてんだよ。」
虎「えーーー?!無難な質問だと思うのですが?!?!」
野「アンタのせいで憐先輩、この世の終わりみたいな顔して落ち込んでるわよ〜。」
伏「最低だな虎杖。」
虎「釘崎だけじゃなく伏黒まで?!なんかオマエら俺に冷たくない?!?!」
虎杖の在り来りな質問によって和やかな空気になる事を予想していたが、結果は彼が予想していたよりも暗い空気に……。それは虎杖の質問によってすぐに答えない陽太の態度によって憐が分かりやすく落ち込んだ事が原因だろう。そんな彼女の様子に、乙骨も何とか元気づけたいと励ましたが、現状はあまり変わらなかった。そんなどんよりした空気にさせた虎杖を、他の一年生二人はあくまで虎杖の味方になるつもりはないようだ。
伏「……悪いが、俺達は席を外す。後は家族水入らず先輩方と話してくれ。」
突然近くから携帯の通知音が聞こえた。鳴った方向に目を向けると、恵さんが自分のスマホを確認するなり、俺に向かって告げた。
虎「え?!せっかく質問したのに?!俺らもう終わりなの?!」
釘「は?!こんな空気の中よく言えたわね!?」
伏「五月蝿い……凛先生からメッセージが来た。俺達3人の任務だから来いと。五条先生も早くしてください。」
五「あれ、これ僕も行く流れなの?結構良いシーンなんだけど……。」
伏「さっき凛先生から来たメッセージには、五条先生にも任務があることを伝えてくれと頼まれました。……アンタ、スマホはどうしたんですか。」
五「そんなのポッケに入れてある……あれ?無いや……。あっ!そういえば、机の上に置きっぱだったよ!しまった……凛の愛のメッセージに気づかなかったなんて!こうしちゃいられない、待っててね凛!今から会いに行くよー!!」
五条先生は凛さんの愛を叫びながら、教室を抜け出し走り去っていった。
伏「俺らも行くぞ。」
虎「え〜俺もうちょっと聞きた……分かったよ伏黒!よし、こうなったら……乙骨先輩!任務終わったら必ず聞くから絶対教えてくれよ!」
釘「良い、憐先輩!私に隠そうだなんて考えないでよ!この後絶対根掘り葉掘り聞くから!隠したり嘘ついたら真希さんにチクるから!」
伏「乙骨先輩、神崎先輩、お先に失礼します。」
そう言って恵さんが動く気配の無い、悠仁さんと野薔薇さんの首根っこを掴み引きずって行った。
乙「行ってらっしゃい〜。」
貴「野薔薇ちゃん、先輩を脅さないで……。」
それをほのぼのしながら手を振る父さんと顔を青くしながら見送る母さん。五条先生、悠仁さん、恵さん、野薔薇さんが一気にいなくなって、教室には俺と父さんと母さんが残された。あれだけ煩かった空間が、今は鳥の鳴き声一つ聞こえないほど静かだ。
陽(少し気まずい……。何を話そうか……、そういえば悠仁さんの質問……。)
……せっかくの質問だし、過去の両親に会えるなんて早々ないだろうからちゃんと答えるか。……さっきからずっと落ち込んでる母さんの姿を見ると心が痛む。
陽「……あ、あの!好きなところはちょっと……恥ずかしいので……尊敬している所なら言えます!」
でも好きな所は……と思い自ら代替案を提案した。俺も思春期なのだ。流石に過去の両親とはいえ、俺にとっては自分の親に変わりはないので、その本人達に面と向かって好きな所を伝えるというのはなかなかにハードルが高い。簡単に言うと小っ恥ずかしい。だからこその代替案だ。
陽「……父さんは、普段柔らかい雰囲気なのに、仕事となったらガラッと雰囲気が変わって、どんな呪いや呪詛師相手でも、ものともせず祓ってしまう強い人なんです。」
俺は顔を見回しながら語るも、一度瞼を閉じ口を止める。そして再度瞼を開け、キョトンした顔をした父さんだけを見ながら口を開く。
陽「なのに本人は地位や名誉に興味はなく……一途に母さんだけをずっと愛し続けています。今でも母さんや俺によく言うんです……。」
『憐に出逢えて良かった……僕は憐と出逢う為に生まれてきたんだ。そして憐に出逢えたから、大切な君にも会えたんだよ……陽太。君のおかげで、僕の人生がまた更に色付いた。大切なものが増えて守る為に、もっと強くなろうと思えたんだ。僕達の元に来てくれてありがとう……!』
陽「俺達家族や大切なものを守る為に全力を尽くす人間……それが俺から見た父さんです。そんな父さんを人としても呪術師としても凄く尊敬しています。」
語るのが恥ずかしいと言いながらも、自身の中で思っていた本心を語り出す。彼が話せたのは過去の姿の父親だったから。この思いは本来の時代の父親には話していない。理由は再三言っている小っ恥ずかしいから。だけどいずれ伝えるだろう……。これは言わば練習みたいなものかな。父さんは俺の事からかったりしないと思うけどやっぱり恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。
陽「それに母さんは、そんな父さんに負け劣らず深い愛情を持っていて、ずっと父さんを愛し支え続けている。世間で言われるような恋愛では無い、重い感情だと母さんも自覚していました。でも母さんは……─────。」
『良い?陽太。……正直に言うと私達夫婦は少し変わっているのかもしれない。世間でいう仲睦まじい夫婦……じゃないのかも。』
『母さんと父さんが?!?!母さん達で仲良くないなら、世の中の夫婦は大変だな……。』
『え?!……いや、ううん。むしろその逆で相手を自分に縛り付ける呪い……のような想いを互いに持っている。実際に、過去に私達は大切な人の死を拒むあまり、その人を呪いにしてしまった事がある。その事を後悔した事もあったけど、そのおかげでその子とまた会えたし、それも愛の形なのかなって思ってる。
愛ほど歪んだ呪いはない……呪いと愛は紙一重なのよ。』
『……。』
『でも、愛はとても素晴らしいものなのよ。私、憂太に出逢わなければこんな素晴らしい感情を知ることもなかった……。良くて親愛までね……〝最愛〟を知ることも無かった……私、憂太を好きになれて良かった!そのおかげで陽太にも会えたし……私、とっても幸せなの!』
『……母さん。』
『長々と語っちゃったけど、つまり私達は私達なのよ。例え、誰かに私達の事を悪く言われても、気にしないで欲しいし、そんな私達の息子である貴方も変わっていると揶揄されるかもしれないけど、気にしないでね!よそはよそ、うちはうちよ!そして貴方もいつか自身の〝最愛〟を見つけなさいね?
私達の元に来てくれて、ありがとう陽太!ずっと大好きよ!』
陽「……父さんだけじゃなく、俺の事もちゃんと愛してくれていました。惜しみなく愛情をくれていると実感出来ているから、どんなに辛いことがあっても、折れずに生きていける……俺は母さんにも頭が上がらないんです。」
今度は母さんへの想いを過去の本人に向けて語る。結局小っ恥ずかしいと思っていたが、想いをぶちまけて何だかスッキリした。
そんな俺の話を最後まで真剣に聞いていた父さんは
乙「ありがとう、陽太くん。君のご両親に対する想い……本当に良かったよ。未来の自分の息子に尊敬されてるなんて、未来の僕はちゃんと頑張っているんだね。」
嬉しそうに目を緩めて、俺の話を噛み締めていた。気の所為でなければ、目元から透明の膜が少しはってい
るように見えた。それを母さんが優しく拭き取ってあげていた。
乙「この世に生を受けた僕、乙骨憂太の存在意義は、神崎憐と出逢うこと、そして憐を愛し全力で守る事にあると思っている。」
陽「!!」
乙「それが出来ているのか今はまだ何とも言えないけど、君が……陽太くんという大切な存在に会えているのなら、未来の僕は約束を守り続けて……憐と一緒に生きているんだね……それが凄く嬉しいな。」
陽「父さん……。」
朗らかに笑う父さんを見て、自分の時代の父さんの面影をみる。当たり前だが、この人と父さんは同一人物……似てて当たり前である。
やはりこの人は俺の父親だ……。
いきなり過去に飛ばされて、そこに居たのは知っているようで知らない人達。過去の両親とその知り合いの人達……当然だが未来の自分の事は知る由もない。知り合いは誰一人いないこの時代で、正直不安だったのだが、過去の両親達から自分の知っている両親の片鱗が見えて、一気に肩の力が抜けるくらいには安心した。そしてこの俺のことも……真剣に向き合って聞いてくれた。息子だと信じてくれているのだなと改めて感じて嬉しかった。
貴「……私の存在意義も憂太と出逢う為、そして彼を愛し支え続ける事だと思っているよ。それが未来でも出来ていることは、貴方の存在が証明してくれた。だから私も陽太くんの話を聞けて良かった!未来の私……絶対憂太と陽太くんを愛しているんだなって分かるよ。」
隣で見守っていた母さんがおもむろに語り出す。やはり母さんも父さんと同じ事を考えていた。似た者夫婦とはこのこと。しかも話を聞くだけで未来の自分のことまで分かるなんて……さすが母さんだな。
貴「……でも偶に自信が無くなるの。私が憂太の隣に居てもいいのかって……本当は、あの子の方がもっと憂太を幸せに出来たんじゃないか……とかね。」
乙「!!」
母さんの一言で、父さんの顔色が変わる。
貴「今も空の上で、私達を見守ってくれてるんじゃないかな。」
母さんは自分の首元にあるチェーンを外し指輪を見ながら呟いた。