未来からの訪問者
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────── 2017年から数年経った20XX年の夏
東京都立呪術高等専門学校
?「落ち着いてください……。」
?「私のせいなの!私がちょっと目を離してしまったから……!あの子が……、
?「だから落ち着いて……非常事態だからこそ、落ち着くのです!あれくらいの子どもは好奇心旺盛で、親が注意しても少しの間でふらふら〜と歩いて居なくなっちゃったりするんです。貴方のせいではありませんよ。」
?「だとしてもよ!そんな子どもをちゃんと守るのが親の役目よ!ただでさえ陽太は、生まれつき呪いが見える体質なのに……。もし今この瞬間にでも、呪いや変な輩に襲われていたりしたらと思うと……私は自分を許せない!母親失格だわ……。」
現在、高専では数多の人間が忙しなく駆け回っている。理由は一つ……ある少年がいきなり姿を眩ませたのだ。事の発端は少年の母親が、仕事の為、東京都立呪術高等専門学校に少年を連れてやって来た所から始まる。
少年の母親は、高専に着くと早速パソコンに手を伸ばした。業務内容は、主に書類作成である。具体的に言うと、その書類とは、呪術師が円滑に任務を行えるよう、調査された情報を入力、任務報告書を作成する事である。キーボードで文字をカタカタとうち時折、傍で人形遊びをしている息子を眺めながら、仕事を行っていた。
そんな書類作成に集中していた時──────。
?「??」
パソコンのキーボードをタップする音だけが部屋の中に響き渡る。先程まで人形遊びをしていた息子の声が聞こえていたのに、今はやけに静かである。もしかして疲れて眠ってしまったかなと思い、手を動かしつつも、視線は自身の息子がいる方に向ける。
?「居ない……陽太!?」
その場所にいたはずの息子がいない……。どうして……どうして居ないの?!少し目を離した隙に……居なくなってしまった。
?「陽太!……何処にいるの陽太!返事をして……!」
部屋を抜けて廊下に出る。辺りを見回しても、人一人いない。自分のせいだ……書類に手こずって、息子の事を疎かにしてしまっていた。なんて事だ……息子は生まれつき〝呪い〟が見える体質……この高専内なら異質な呪力があったら直ぐに気づけるけど、もし高専の外に出てしまったら……──────。
?「私のせいだ……私が、ちゃんと陽太を見ていなかったから……。」
母親は最悪な未来を想像し、絶望する……。もし私のせいであの子に何かあったら……──────
?「どうしたのですか?そんな大きな声を出して……廊下まで響いていましたよ。」
?「姉さん……。」
すると彼女の声を聞きつけて、一人の女性が扉を開け、直ぐに傍に座り込んでいる少年の母親に歩み寄ってきた。その人は、髪が黒くショートヘアの女性だった。少年の母親よりも歳は上だが、彼女とあまり見た目が変わらない……というより顔はよく似ている。彼女達は歳の離れた姉妹だった。
姉である黒髪の女性は、少年の母親である妹に尋ねた……一体何の騒ぎだと……。
?「息子が……、陽太が……いきなり居なくなっちゃったの!!助けて姉さん!……どうしたらいいの?」
?「なんて事!……直ぐに探さなくては。今すぐ高専内に居る関係者に通達致します。貴方は此処で待っていてください……もしかしたら、陽太くん戻ってくるかもしれませんから。……大丈夫です、きっと陽太くんはすぐ見つかりますから。」
?「ありがとう……姉さん。」
黒髪の女性は、少年の母親を励ますように力強い笑みを浮かべていた。
?「そうです……3歳の男の子で、私の甥っ子です。言い方が悪いのですが分かりやすく言うと、呪いのような見た目をしたぬいぐるみを持ち歩いている子です。もし見かけたら至急保護してください。」
黒髪の女性は、憔悴している少年の母親を尻目に各関係者に通達を行った。これで高専内は大丈夫だろう……自分も捜索に加わりたいのだが、妹の様子を見ていると酷く心配になる。彼女は、遠方に一週間任務に出ている旦那の代わりに、一人で子どもを育てていた。たかが一週間……されど一週間。子どもというものは、実の親でさえ予測不能な行動に出る。この歳になると流暢に会話が出来るようになり、一人で歩く事も可能だ。だからこそ……注意深く見ていなければいけないのだが、最近はある身体の変化により、少年の母親自身も少し不安定になっていた。
(最近あの子に構ってあげられなかったのが悪かったんだ……私ってば最低な母親だ……。)
?「今、私の夫と貴方の旦那様にも連絡しておきましたから。幸か不幸か2人とも今日、任務から帰ってくる予定でしたよね。……あまり自分を責めないでくださいね。」
?「……うん。」
?「私もこれから陽太くんを探していきます。貴方はあの子の無事を信じて、此処で待っていてください。」
?「何から何までありがとう……姉さんが居なかったら私……もっとパニックになってた。」
?「私も経験者ですからね……。さて、それでは行ってきますね。」
そう言って黒髪の女性は、少年の母親を残し、部屋を出ていった。
─────────────────────
─────────更に数時間後
あれから何時間経ったのだろう。一向に見つかったという報告は来ていない……。あれから出ていった姉も今だ帰ってきてない。
(やっぱり……何かあったんじゃ……!!駄目よ……姉さんに言われたでしょ?母親の私があの子の無事を信じないで誰が信じるのよ!それに彼も出張から帰ってきてるはず……。
お願い……、無事でいて……陽太!
陽太を助けて…… 。)
ドタドタ……ガラッ!
?「見つかりました!陽太くん、見つかりましたよ!」
廊下を走る音がする……音に気づき扉の方を見ると、いつもは無造作に扉を開けない姉さんが、大きな音を立てて扉を開けた。
そして姉さんから告げられた言葉は、行方不明だった息子が見つかったという知らせだった。
?「妻からあらかた報告を受けていてね。高専に着いた後、僕と彼はそれぞれ探していたんだけど、保管庫にあった〝時限の鏡〟の傍で寝ている所を彼が見つけた。彼は凄く慌てていたから、僕が主に確かめたけど、どうやら寝ているだけのようだったから、そのまま彼に預けきたよ。それで念の為硝子にも診てもらったんだけど、特に異常は無かったから、もうすぐ此処に彼が連れてくるよ。」
?「本当ですか?!……良かった。本当に良かった……。」
?「良かったね……それじゃ僕達はこれで失礼するよ。」
?「本当にありがとう!姉さん!、
そうお礼を伝えると、姉さんと
?「ありがとうございます、悟。甥が無事で本当に良かった……。」
五「どういたしまして。凛の家族は僕の家族でもあるんだから、全力で探すさ……。」
貴2「……ありがとうございます。兎に角無事で良かったです。……あら、いつの間にかこんな時間ですね。」
五「どうしたの?」
貴2「あの子が学校から帰ってくる時間ですよ!夕ご飯の準備しなくては……。」
五「そうだったっけ……。じゃ、僕も帰ろうかな〜。はい、凛……手を出して。」
貴2「ふふっ……はい!」
部屋を離れ外に出る二人。もうすぐ彼女の傍には彼女の夫が、陽太くんを連れてやってくる頃だろう。彼女と陽太くんの事は彼に任せて、私達は早々に高専を離れる。陽太くんを探す事に夢中で、自分達の娘が帰宅する時間が差し迫っていることをようやく知った。
娘の帰宅時間に合わせて、夕飯を作っているので、娘が帰宅する前に帰らなくてはと思いつつも、久しぶりに手を繋ぎ帰るこの時間が、少しでも長く続きますようにと、反対な思いを抱えながら夕陽が照らす道を、五条夫婦は歩いて行くのだった。