京都姉妹校交流会
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あの後交流会は続ける事となり、2日目の内容は野球に決まったのだけど、実は私には問題がひとつある。それは……
乙「う〜ん、そう言われてもな……。」
貴「そんな〜……。そこを何とかお願いします、憂太さん……!」
私は今、憂太の前で頭を下げて必死に懇願していた。理由はひとつ……憂太から交流会参加を諦めるように言われたからだ。私が眠ってる間に、私の体の状態、これからどうするべきかなど、硝子さんから色々聞いていたみたいだ。その硝子さんから軽いドクターストップを貰っているのと、憂太としても心配みたいで、今回の交流会は見学したらどうかと言われた。
私も憂太と同じ立場だったら、諦めるよう促すから気持ちは分かる……だけど、これは例え憂太相手でも譲れない。正直皆の意見聞くまでは、序盤から足手まといになった私が言う資格はないと思って、交流会の続行は敢えてどちらでも良いと言ったけど、今は違う……。ちゃんとやりたい理由が出来た……それを憂太にもわかって欲しい。幸いにも開始時間まで、まだ時間はある……その間に何としてでも、説得して私も交流会に参加する。
乙「さっきも言った通り、僕は家入さんから憐の体の状態について色々聞いたんだ。僕が早めに治したおかげで、何とか体の傷の大半は治ったけど、完治している訳じゃない。それに、君は気づいてないかもしれないけど、ここ数ヶ月だいぶ体に負担をかけていたせいで、疲労が溜まっているんだよ。今また無理に動くと悪化しちゃうよ……。」
貴「うっ……。」
憂太を説得するつもりが、逆に言いくるめられている。
(やっぱり手強いな、憂太は……。)
自惚れとかではなく、真希達も言うし私も分かってきたんだけど、憂太は私の事になると、意志が強くなる。私の為に言ってくれるのが分かるから、今も憂太の言葉が心にグサグサ刺さっている。
乙「僕は意地悪で言っている訳じゃない……君の体が心配で……これ以上苦しんで欲しくないから言ってるんだ。」
お互い真剣だからこそ目は逸らせない……憂太の意思は固い……ここぞと決めたら絶対変えないのだ。
貴「分かってるよ!……憂太が私の事を心配してくれているのは……。憂太が丁寧に教えてくれたから分かってる……でも、ごめんなさい……私も譲れない!
だって二年生になってやっと交流会に参加できるようになったの。一年前……、憂太はちゃんと戦力として呼ばれていたけど、私は里香の事で保険として呼ばれただけだった。しかも結局里香は出てきて暴れちゃってたのに、私は止められなくて、見てる事しか出来なくて、何も役に立たなかった。
今回の団体戦も私が単独行動したばっかりに、足引っ張って皆に迷惑を掛けた。だから今度こそ頑張って役に立ちたい……ちゃんとした形で、皆と勝ちたいの!」
貴「それに……五条先生に頼まれて海外に行っていて、今年は一緒に参加するの難しいだろうなって諦めてた憂太と、一緒に出来るチャンスなんだよ!……とても嬉しいんだ……去年出来なかったけど、ようやく貴方と一緒に参加できる……。」
乙「憐……。」
貴「私以上に心配してくれてありがとう……。でも大丈夫、もう無理はしない……自分の出来る範囲で頑張る。……もし万が一ね、倒れそうになっても憂太が助けてくれるでしょ?」
乙「……。」
貴「だからお願い……私も交流会に参加させてください。」
私の伝えたい事を全て憂太に伝えた。憂太の目を逸らさずに……しっかりと強い眼差しで言えたと思う。
憂太は私の真剣な表情に、悩ましい顔をしていたけど、息を吐いて少し困ったように笑いながら告げた。
乙「憐には敵わないな……。」
貴「それじゃ……!」
乙「君の思いは分かったよ……。僕の負けだ……。そこまで言うなら憐も参加していいよ。……いざとなれば、僕も一緒にいるから無理はさせないようにすればいいだけだからね。」
貴「やったーーー!!ありがとう、憂太!」
嬉しくなり思わず憂太に飛びついた私。難なく受け止めた憂太は、言いたい事がまだあったようで、そのまま私を受け止めた体勢で話し始めた。
乙「でも、少なくとも一年前の交流会の事は、何も役に立ってない事なんてなかったよ。……あの時、君がそばに居てくれたから僕は……例え勝っても、負けてボロボロになっていたとしても、何がなんでも君の元に帰ろうと頑張れたんだから。」
貴「えっ!?……あっあの時か……。」
霞に見られてた、思い出すと少しむず痒くなる時の会話ね……。付き合ってない時からこれだったからね……憂太の素の言葉は色々な意味で危険なんです。
乙「それに、僕だって君と一緒に参加出来るのを楽しみにしていたんだよ。呪術師同士の戦いなんて、何になるんだろうって思ってたけど、大切な人達を守る為に、自分の実力を知っておく必要がある。それなら交流会も良いなって思えるよ。」
憂太は類稀なる呪術師としての才能を持ち、他を見ない圧倒的な強さの持ち主だが、基本争い事を好まない。特に自分の欲がない人だから、自身の欲の為に人を傷つけようとする人間が理解できないのだ。【戦い】という行為自体にに意味を見いだせない彼は、何の為に戦うのか、何故呪術師を続けるのか以前聞いた事がある。
貴『憂太はさ……、戦う事……好きじゃないよね。』
乙『!!……どうしてそう思うの?』
貴『だって勝った時とかあんまり嬉しそうじゃないもの……。』
乙『……。』
貴『人間は自分の正義の為だったり、自分の欲望の為に暴力に頼って解決する事が多かった……歴史の教科書見てもそうだよ。昔から人間は争いが絶えなかった。個人と個人の喧嘩が大人数となり、やがて国同士の戦争になったりね。自分の目的の為に戦うのに、憂太はそうじゃない……あまり自分の為に戦ってないよね……。
里香を解呪できた今、争い事が嫌いな貴方が、一般人が送る平凡な日常にも戻れたはずなのに、敢えて危険な世界に身を置く理由は何?どうして戦うの?』
私や真希、狗巻くん、パンダくんは小さい頃から呪いがある世界に関わりがあった。家系の理由もあれば、真希みたいに、自分の目的の為に呪術師として、危険な世界に身を置いて戦っている人もいる。だけど、彼は由緒ある呪術師の子孫である事は分かったけど、高専に入学するまでは、ごく普通の生活を送っていた。そんな彼がどうしてこの世界に残る事にしたのか……。でもまぁ……聞かなくても予想はついている。
乙『確かに僕は【戦い】という行為に意味を見い出せていないし、自分なんかの為に命を懸けて、人を傷つけて何の意味があるのか、今後もきっと理解できないかもしれない……。でも、こんな僕と友達になってくれた皆や、助けてくれた先生達の役に立てるように……。
こんな僕を愛してくれた君を守る為に、僕はこれからも呪術師として戦うよ……。』
自分より他人を優先するお人好しな人なのだから……。
貴「そうだね……。でも、結局今年の団体戦には出られなかったから残念だったね、憂太。」
乙「うん……皆と一緒に戦えなくて残念だよ。」
貴「でも個人戦……今年は野球だけど、頑張ろうね!」
乙「そうだね!……でも、憐は絶対無理しちゃ駄目だよ!僕が止めたら絶対休んでね……良い?」
分かる人には分かると思うけど、恋人に心配されるって良いものよね……。でも、憂太の言った通り無理せずに頑張ろう!
貴「肝に銘じます……!」
存分に話し合った後、私達は野球が行われるグラウンドに急ぐのだった……。