京都姉妹校交流会
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貴「憂太……あのね……。」
乙「うん、どうしたの?」
彼は穏やかに笑っていて、私の言葉に耳を傾けてくれている……。
聞いた相手を安心させるような優しい声が好き……。
目尻を下げて笑っていたり、時には少年のように無邪気に笑った顔も……、皆にからかわれて、困ったような顔をする所も……、間違えても優しく諭してくれる所も……。
誰よりも優しい憂太が、大好きだ……。そんな彼だけには心配かけたくなくて……、迷惑かけたくなくて……、ずっと言えなかったことを……面と向かって憂太にちゃんと伝えた。
貴「……後輩が亡くなったと知った時……、部屋に一人で篭って泣いてたの……。他の一年生の子達は、前を向いて強くなろうと努力していたのに……、私はそんな風に切り替えられなくて……、一日中泣いていた……。仮病を使って……、真希達の誘いも……、断ってた……。」
乙「うん……。」
憂太は私の頭や髪を撫でながら、静かに相槌を返していた。
貴「姉さんにも……、また繰り返すのかって……、里香の時のように死を受け入れずに……、拒否するのかって言われて……。だから……、私なりに……、時間をかけて……、ゆっくり受け入れたかった……。まずは時間が欲しくて……、すぐ考えて落ち込んじゃうから……、あんまり考えなくて済むように……、任務を大量に入れてた。でもそれじゃ駄目な事に気づいて……、遅かったけど、皆の特訓にも参加した……。」
乙「うん……。」
貴「真希達が心配してくれていた事も知ってる……何気ない気遣いや、優しさが嬉しかった……。憂太とのやり取りも私にとっては、辛いことを忘れられる時間だった……本当に救われたの。でも声を聞かれたら……、憂太に心配かけちゃうと思って……、敢えて電話を避けてたの……。返事が遅くなった時もごめんね……。」
乙「そうだったんだね……。」
貴「……だけど、本当は……、本当はずっと……寂しかった!毎日携帯で連絡をとっていても……、寂しさが消えることはなかった……。憂太に逢いたかった……!隣にいて欲しかった……!でも、貴方が頑張って長期間任務に行ってるのに……、そんな事言えないと思って……、そんな強い貴方のそばに居るなら……、もっと強くならないとと思って……、自分でも無理してた……。ごめんなさい……、心配かけて……、迷惑かけて……、ごめんなさい……。」
今まで誰にも言わずに、ずっと我慢していた事を憂太にぶつける。言っても大丈夫なのだと分かったから……。でも、心配させた事には変わりないし、私が悪いのだから謝る。
すると憂太は、一度強く抱きしめた後、体を離し私の頬に流れる涙を拭いながら、優しく語りかけた。
乙「ありがとう……勇気を出して僕に話してくれて……。そうだね……皆に心配かけた事は後で一緒に謝りに行こっか。でも皆、迷惑かけられたなんて思ってないよ……。君が、大切だから……心配するんだ。自分を傷つけるような事はして欲しくないだけだよ……。
勿論僕もそう……迷惑かけられたなんて思ってない……君に対して、そんな風に思った事なんて一度もないよ。」
貴「そうなの……?」
乙「そうだよ……僕が憐に同じ事したらどう思う?迷惑だなって思うかな?」
貴「ううん、思わない……思わないよ。ただ、いくら強い憂太でも心配はするけどね……。」
乙「ね、同じだよ……。それに嬉しかったんだ……君も僕と同じように想ってくれてたんだって……。以前に比べて成長した僕でも、心配してくれるんだって……。
僕もずっと寂しかった……。皆と……君と離れたくなかった。でも、先生に頼まれた重要な事だったから……辛い時や寂しい時もあったけど、毎日連絡してくれる君のおかげで、どんな事でも頑張れたよ……。一日でも早く終わらせて帰りたいって気持ちでいっぱいだったな……。」
(憂太も私と同じだったんだ……。凄く嬉しいな……。やっぱり想う……憂太に出逢えて良かったよ。)
乙「僕もずっと……、君に逢いたかった……。
…………ただいま、憐。」
貴「おかえり……憂太!」
二人は再び抱きしめ合い、その後静かに口付けを交わした……。
──────────── 同時刻 一年生side
乙骨が憐の看病している同時刻、東京校一年生3人組は、伏黒の部屋に集まり、3人でピザを食していた。虎杖も伏黒も野薔薇も、個々に負傷はあれど命に別状はなかった。この3人の中でも、伏黒は先刻の特級呪霊……花御との戦いにおいて呪いの種子を埋め込まれていた。この種子は呪力を糧に成長する種子で、腹部に刺さっていたのだが取り除き、硝子の治療を受け、ピザを食べられるほどには回復していた。
そして自分の部屋で休息を取っていたのだが、比較的軽傷な野薔薇と何故だか元気な虎杖が、見舞いにピザを持ってきており、それを3人で食しながら、今回の交流会について振り返っていた。
各々感想を言い合う最中、突如第三者、今までいなかった東堂が会話に乱入してきていた。神出鬼没な東堂に驚いた虎杖は、全力で部屋を抜け出し東堂から逃走するが、東堂を後を追っていき、二人の全力の追いかけっこが始まったのだった。
それを見ていた伏黒と野薔薇は呆れつつも、野薔薇は、自分の近くで起きた、不思議な出来事について話し始めた。
野「そういえば、憐先輩が呪詛師に襲われそうになった時、先輩を守ったヤツがいたのよね。」
伏「……神崎先輩の事か。」
野「そうよ。自分の話ばっかなモテねぇ呪詛師に襲われそうになったのよ。先輩怪我が酷くて、私らの中じゃ一番殺りやすかったんでしょうね……。先輩ももう限界だったのか、弓すら構えられてなくて……誰も間に合わないと思ったのに、後ろから物凄いスピードで走ってきた男が、呪詛師の刀から先輩を守って、自分の刀で受け止めていたのよ……。」
伏(遠距離からでもたどり着く敏捷な足の速さ……そして刀を持った男……。足の速さは、恐らく呪力で身体強化をしていると思うが、刀を扱う術師は多い……。これだけじゃ特定は無理だな……。)
伏「他に特徴はあるか?」
伏黒は野薔薇の情報を元に、憐を救った人物を割出そうとしていた。
野「そうね……私達より少し歳が上そうな男で……あっ!確か、真っ白な服着てた……!
……そういえば、その男が着ていた服、私達の制服と殆ど同じデザインだったわね……。確か高専の制服はある程度、カスタマイズできるのよね?……色も変えられるのかしら。」
伏「……!!」
伏(俺達と殆ど同じデザインという事は、その男が着ていた衣服は高専の制服で、多分釘崎が見たのは白い制服だ……。白い制服を着て刀を持つ、恐らく俺達より歳が少し上の男……、そして神崎先輩の危機に現れて、先輩を守ったってなると……あの人しかいない。)
最後に追加された白い制服を着ていたという情報によって、先程まで大した意味を持たない情報が、どれもある一人の人物を指し示す、重要な情報に変わった。
またこの事によって、伏黒はその人物が誰なのか確信した。しかし、野薔薇は皆目見当もつかず、考え込んでいると伏黒の表情を見て騒ぎ始めた。
野「アンタ……誰か分かったんでしょ?教えなさいよ。」
伏「いや、別に……。」
野「しらばっくれてんじゃねぇよ!!そんな分かりやすい態度で騙せると思ってんのか!?!?教えろ伏黒……!憐先輩を救ったあの謎の男は!!一体誰なんだよ!!」
伏「……止めろ、釘崎。揺らすな……一応、俺まだ怪我人だぞ……。まぁ、俺から言わなくても、そのうち分かるから待ってろ……。」
そう言うと野薔薇の対応もそこそこに、伏黒は起こしていた上体を戻し、そのまま横になり始めた。
野「なんで伏黒が分かって私が分からないのよー!!しかもコイツ、人に教えずにそのまま寝始めてるし……一体誰なのよもう……。あーー!!気になるわーー!!」
伏(……帰ってきてたんだな、乙骨先輩。)
各々の時間を過ごした交流会の初日の団体戦は、様々なアクシデントが起きたものの、何とか無事に終わりを迎えた。