京都姉妹校交流会
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貴「……えっ?……ゆ……うた……?」
呪詛師が振り下ろした刀から私を守ってくれた人物……その人物は憂太だった……。
どういう事??なんで日本にいるの??海外任務は??
まさかの展開に思考と理解が追いつかない……考えても分からない……なんで……どうして……
貴「……うっ……痛い……。」
考えていたら頭も痛みが出てきた。嘘でしょ……ただでさえ、体の傷も痛くて辛いのに、ここにて来て頭痛まで……。
それにもう……立っているのも難しくなってきた……。憂太に支えてもらってるから余計に力が抜けそうだ。
(まだ駄目……だって目の前に呪詛師がいるんだよ……呑気に寝てる場合じゃない……。それに……憂太がいる……呪詛師から助けてくれた……守ってくれた!……凄く嬉しいのに、久々に逢えたのに、こんな所で気を失いたくない……。)
貴「……ハァッ、……嫌、……駄目だよ、……まだ私は……!」
乙「もう大丈夫……。僕が君を守るから……ゆっくり休んでて。」
心地よい声で……、優しい眼差しで……、憂太は私に休むよう告げる……。私が求めていたものだった……。
あぁ……貴方の声が聞きたかったの───。
貴方の顔が見たかったの───。
貴方にずっと……逢いたかったの──────。
貴「ゆ……う……た……。」ドサッ
既に限界に近く気力だけで立っていた彼女の意識は次第に朦朧としてきた。乙骨の言葉を聞いて、彼の名前を名残惜しそうに呼んだ後……ゆっくりと瞼を閉じ、意識を闇の底に沈めた。
──────────────────
乙骨 side
〝帳〟の中で探し始めて十数分……僕はいまだに憐の姿を見つけられずにいた。エリア内に色んな呪力を感じるが、誰がどの呪力なのかまでは分からない……。それに僕は人より呪力感知が苦手で、よく二年生の皆にも感知に関しては宛にならないと言われていた。そんな理由もあり、何処に憐がいるかまでは分からなかったのだ。
森の方から大きな呪力を感じて、その場所に向かおうとしたけど、途中で真希さんと伏黒くんを抱えたパンダくんと遭遇した。久々の再会に、積もる話もあるが、そんな場合でもないので、手短に今の状況について教えてもらった。あの大きな呪力は未登録の特級の呪いである事、その呪い相手に、東堂さん達が戦っている事などだ。
乙「色々教えてくれてありがとう、パンダくん。」
パ「このくらい気にするな!じゃ、俺は〝帳〟の外に真希と恵を連れて行くからな。」
パンダくんは、真希さんと伏黒くんを再度抱え直した後、僕に背中を向け走り出そうとしていたが、ふと前屈みになっていた姿勢を伸ばし、背中を向けたまま話し出した。
乙「……なぁ、憂太。オマエが探してるアイツなら、森じゃなくて寺社仏閣がある方にいると思うぞ。一年生の野薔薇と行動してるな。……前に電話したら本人が出て言ってたから間違いない。」
乙「あれ……僕、誰探してるか言ってないよね?なんで分かったの?」
パ「それくらい分かるぞ〜。俺じゃなくても真希や棘も同じ事言うだろうな。オマエらを、俺達はいつも見てたからな……早く行ってやれよ。……ずっと我慢してるみたいだからな。」
乙「……。」
いつも見てた……僕と彼女の様子をパンダくん、真希さん、狗巻くん、五条先生、凛先生はいつだって優しく見守ってくれていた。気にかけてくれて、助けてくれていた……。
だから、言葉にしなくとも分かる……。
僕が、誰を求めて探しているのかとか……彼女がずっと我慢していた事とか……。
……彼らにはお見通しだったみたいだ。
乙「……うん、そうだね。早く迎えに行かなくちゃ。気にかけてくれてありがとう……パンダくん。約束守ってくれてありがとう……真希さん。」
パ「いいってことよ。じゃ、後でな。」
パンダくんは二人を抱えて、〝帳〟を抜ける為再び走り出すのだった。
乙「パンダくんが言っていた寺社仏閣方面に行ってみよう。きっとそこにいるはず……。」
僕も止まっていた足を再び動かして、彼女がいるであろう場所に急ぐのだった。
乙「どこだ……。」
あれから僕は森を抜け、石畳の道へとやってきた。多くの木々が生い茂っている森の景色はガラッと変わり、高専が保有する見事な寺社仏閣が立ち並ぶ景色の場所にいた。その場所の近くにいくつか、呪力が集まっている箇所があった。……どこだ……何処にいるの……憐。
見回してみるとはるか前方に、こちらに背を向けた状態の歌姫先生と真希さんの妹さんと、見た事ない女の子……多分新しく入ってきた後輩の子らしき女の子を見つけた。
そして、その女の子の近くに……僕が求めていた〝最愛〟を見つけた。
「見つけた!……?」
見かけない人物がいる……サイドテールの金髪の男だ。彼女達が相対している金髪の男は、恐らく先生が言ってた侵入者の呪詛師……。数の利があるとはいえ、このまま襲われたりしたら危険だ。
乙「!!」
駆け出そうとした瞬間、金髪の男は憐に近づき、刀を振り下ろそうとしていた。
(この距離なら間に合う……。)
僕は、袋から刀を取り出し、呪力で自身の身体を強化し、地面を蹴って駆け出した。その勢いで、石畳の道をへこませてしまったが、そんな事を気にしている余裕は無い……。だって僕は……君に逢いたくて、守りたくて帰ってきたんだ……。
あの時、憐を守り抜くと誓った……だから、絶対死なせない……!
──────────────────
乙骨 side
男が振り下ろした刀を自分の刀で受け止める。憐の体を支えることも忘れずに……。
憐は諦めて痛みを覚悟してたみたいだけど、いつまで経っても来ない痛みの理由を知る為、目を恐る恐る開けていた。そこに本来いるはずのない僕の姿を見て、余計に目を見開いていた。
僕の名前を途切れ途切れに言っていた……海外にいるはずの僕が何故ここにいるのか分からなくて、混乱しているんだろう。余計に悩ませているのかもしれない……頭痛も出てきて体も限界だった憐……。それでもなお彼女は倒れる事を拒否していた……。
(どんな理由にせよ、君は頑張りすぎだから……、僕がそばにいるから……、休んでいいんだよ……。)
乙「もう大丈夫……。僕が君を守るから……ゆっくり休んでて。」
そう言うと彼女は少し安心して、意識を失った。支えていた手にグッと彼女の重さが加わる。とりあえず、彼女は大丈夫そうだ……でも早く反転術式で治さないと。
乙「リカちゃん、憐をお願い。」
リ「はぁい。」
リカちゃんに憐を預けて、僕は改めて刀を振り下ろしてきた男の方に向き直る。
男は僕が刀を受け止めた後、驚いてすぐ後ろに下がっていた。
重「残念、あの子の苦痛に歪む顔が見れるはずだったのにな〜。聞いてた話と違うし……」
乙「距離が一番離れていたのに、怪我で弱っている憐を殺そうとした。……絶対に許さない。」
(……本来なら憐の為に、ここで殺しておくべきだけど、尋問しなければならないことを踏まえると、手と足を使い物にならなくさせる程度が無難か。……だから、殺しちゃ駄目だ。)
大切な彼女を殺そうとした事を考えると、怒りで頭に血が上りそうになるが、何の目的で侵入してきたのか、理由を聞くために理性で抑える。
再度刀を持ち、男を斬ろうと足を踏み出そうとした瞬間───
バシュ
歌「〝帳〟が上がった!?」
高専内を覆っていた〝帳〟が上がったのだ。
重「マジィ?30分も経ってなくない?逃げよっ。」
歌「なんだったんだ、アイツ……。」
不完全燃焼ではあるが、〝帳〟が上がったということは、五条先生がこの〝帳〟を破ったことになる。空を見上げてみると、小さい人の形をしたものが宙に浮いている事が分かった。あれは五条先生だ……それならもう大丈夫だろう。ここの区画に残されている他の人達の事も安心できる。
男はそそくさ逃げ出した。跡を追っても良かったが、憐の治療が最優先だ。僕は、男の跡を追わずに、憐を抱いているリカちゃんに近づく。
乙「……リカちゃん、ありがとう。」
リ「いいよォ。……憐だァ」
乙「そうだね、リカちゃんも久々に会えたから嬉しいよね。」
リ「ウン、嬉しいィ!」
リカちゃんに預けていた憐を抱きとめる……。リカちゃんの様子を見ると、彼女も憐に久々に会えて嬉しいようで、憐の姿を見て喜んでいた。
(でも酷い傷だ……早く治さないと。)
憐の傷を、その場である程度治し、僕は憐を抱えて校舎まで戻る事にした。