未来からの訪問者 Part2

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──────── 20XX年 未来


陽太side



―――小さい頃から時々変なものを見た。



―――〝それ〟は普通の人間には見えない存在。



―――そんな物が見えたから、周りから気味悪がられ、友達など1人も出来なかった。



―――だけど、君だけはそんな俺を受け入れてくれた。



―――俺の初めての友達……リカちゃん。

















閉じていた瞼を開けるとそこは、何度目かの白い空間。見慣れた景色に安堵するも、早くもこの現状に違和感を持つ。……確かに俺は鏡を使って未来に戻った筈だ……なのに、何故俺は夢を見ていた時の場所にいるのだろう?





?「おかえり……リカが誰なのか、分かった?」




聞きなれた少女の声にゆっくり振り返る……現状を把握。優しげな笑みを浮かべた少女に向き合う。……やっと君のことが分かったよ。



陽「ただいま、リカちゃん……いや、〝祈本里香〟さん。」



俺の答えを聞いた少女は、悪戯が成功したように目を細めて笑っていた。







─────────────────────





過去への時間旅行から帰った俺は、気がつくと資料室の床に横たわっていた。以前過去に飛んだ際も、俺は鏡の近くに横たわっていたらしい。見つけた父さんと五条先生から聞いた話だ。昼前に来ていた高専だが、外を見るとすっかり日も暮れていた。いつもは、目的が終わり次第高専の寮へと帰宅するのだが、今日は家族が暮らす自宅へと帰ることにする。過去の両親からの言葉を脳内で思い出しながらゆっくりと、道中を進んでいく。


高専から少し離れた住宅街に自宅はある。家の扉を開けると、鼻にくる香ばしいスパイスの匂い。今夜のメニューはカレーだなと予想をつけながら、靴を脱ぐ。そして廊下を進んでいき、手洗いうがいを済ませ、リビングの方へ。棚に荷物をおくと、向こう側のキッチンで母さんが一人料理をしている真っ最中だった。どう話しかけようか悩んでいると、母さんは掻き回している手を止めて、「おかえり。」と声をかけてくれた。俺は一言だけ、「ただいま。」と返した後、椅子に座り母さんが料理をしている姿を眺めていた。


(うん、俺の知ってる母さんだな。)


貴「もうすぐで出来上がるから待ってて。」


陽「うん。」


貴「気づいていると思うけど、今日はカレーよ。」


陽「それは楽しみ。母さんのカレーは美味しいからね。」


そんなに会えてないはずはないのに、なぜだか久々に会えたような感覚がして、嬉しくて母さんと軽口を交わしていると、母さんは「そうやって言ってくれるのは、家族だけね。」と笑いながら残りの工程を終わらせてしまうのだった。



────────────────────────






貴「で……今日は何でまた帰ってきたの?いつもだったら連絡してくれるのに。今回はなかったからびっくりしたのよ。」


ダイニングで母さんの作ったカレーに堪能していると、母さんが不思議そうに聞いてきた。 食べている最中に、自然に話を持ってこようと思ったのだが、先に向こうから切り出されてしまって驚いた。確かに、通常時高専に通って寮暮らしの為、普段は家には帰らない。家に帰る時は前もって家族に連絡をしておくのが決まりだ。


陽「実は……話したいことがあって……。」


食べる手を止めて、真っ直ぐ母さんの目を見つめた。真剣な雰囲気を悟った母さんも食べる手を止めて、俺の反応を待った。


陽「俺……さっき、過去に行ってきたんだ。」


貴「!!」


陽「そこで、悠仁さんや恵さん、野薔薇さん、五条先生と会ってそれで…………学生の父さんと母さんにも会った。

会って、話をして、色々教えて貰ったんだ。」


過去の父さんと母さんのこと、二人の馴れ初めのこと、そして……────────────。


陽「……二人の幼馴染である〝祈本里香〟さんのこと。」


言い放った瞬間、思わず下を向く。膝に置いてある手が小刻みに震えているのが見えた。何でだろう……16年間一緒に暮らしてきた、血の繋がった家族なのに……、俺は母さんから答えを聞くのが怖い……それは、以前同じことをして泣かせてしまったのが原因。俺の何気ない行動で、傷つけてしまったと思ったからだ。


貴「そう……それで?本当は聞きたいことがあるのよね?」


思ったよりも驚いていないその声にハッとして下を向いていた顔を上げる。……思い出したのか。


陽「前に話した夢の中の女の子の話、覚えてる?」


貴「……覚えてるわよ。」


陽「その子の話をした時、母さんは思いっきり泣いてたよね?自分じゃ立てなくなるくらい……。」


口を噤ぎ黙って聞く母さん……覚えていて当たり前か。一心不乱に泣いていたんだ。相当衝撃的だったのを覚えている。


陽「あの時は、夢の中の女の子が誰なのか分からなかったけど、今なら教えて貰ったから分かる。その子が〝祈本里香〟さんだよね……数十年前に亡くなった母さん達の友達で幼馴染の。」


前回と同様悲しげな表情をしていたが、幾分か穏やかな顔をしていた。


陽「母さん達にとって、本当に大切な人だったんだと知った。でも分からないこともある。……何であの時母さんは、俺の夢の内容を聞いて泣いたの?」


父さんに待つように言われたけど、過去の母さんからは、もう一度聞くようにアドバイスをくれたし、それに俺も知りたい。高専で百鬼夜行のことも調べたけど、それだけじゃ分からないことも多かった。あの日母さんがあんなにも涙を流した理由は、ある程度予想はつくけど、本当の訳を本人の口から聞きたいのだ。


貴「……なるほど、過去の私の助言に従ったのね。いい判断だわ。ただ先に謝っておく……ごめんなさい、心配かけて。本当は、大した理由じゃないの。」


陽「……??」


大した理由じゃない?母さんは、少し罰が悪そうに笑う。


貴「……里香が夢で会いに来てくれている陽太が、羨ましくなっただけ。」














陽「……え??」


目を伏せて申し訳なさそうに話した内容に、思わず目が点になる。


貴「本当は……その子が誰か教えてあげようと思ったの。確信はあったから……でも、本当にその子が里香なら、いいなって思った。私の夢にあまり出たことないの、出たとしても私の記憶の中の里香だから。それは過去の想起……。」



予想外の答えに一瞬言葉に詰まるが、母さんの訳を聞いていくと少しずつ理解出来た。でもそれって……


陽「過去の母さんも似たようなことを言ってた……!夢に出てきたことないって……。」


貴「うん、〝過去に来た陽太くん〟に言ったね……あ〜段々記憶がはっきりしてきた。」


母さんは「そっか、あれは陽太だったのね。」と驚きながらも嬉しそうな反応を見せた。


貴「……里香は、私の元には来てくれないのに、陽太の元には自ら顔を出してるのかと思ったらね……私や憂太の話なら私達本人に聞けばいいのに、息子の貴方に聞くなんて狡いなって思ったのよ。」


陽「……………………………母さん?」


今の俺の顔はどんな顔をしてるのだろう……少なくとも、もう少し早く聞いておけば良かったと思ってしまった。……母さんも人騒がせな人だな。


貴「ごめんなさい……今まで、貴方に無用な心配をさせてしまって……。」


陽「まぁいいよ……母さんはそういう人だもの。それに母さん至上主義の父さんが大袈裟に言ったのも原因だし……乙「僕が何だって?」うわっ!!父さん!?」


父さんが俺の背後からぬるっと現れた。いつ帰ってきたの??音もなく忍び寄るのやめて欲しい!心臓に悪いから。


貴「あら、早かったね……おかえりなさい。」


乙「ただいま……で、僕がどうかしたの?」


陽「え?!…いや、それは……えっと〜。」


貴「陽太がね、過去の私達に会ったみたいでね?そこで私達の馴れ初めとか、里香のこととか色々聞いたんですって。」


俺が悩んで迷ってるうちに、母さんが父さんの分の夕食を用意しながら今まで話していた内容を簡潔に纏めていた。それを聞いた父さんが「なるほど。だから僕は、唐突にあの時の陽太のことを思い出したんだね。」と言いながら母さんの隣に座る。……母さんもそうだけど、俺からしたら数時間前のことだから覚えてるのはまだしも、父さん達はもう数十年前の出来事なのになんで思い出せるんだ?記憶力いいの??30代後半なのに??


貴「陽太の夢に出てくる女の子の話をした時、私号泣したでしょ?そのせいで重く考えさせてしまったのよ……陽太には申し訳ないことをしたわ。」


乙「あっ……僕が陽太に、僕らから話すから待ってて欲しいって言ったんだよ。だから陽太は、話すのを待っててくれたんだよね?でも君は、自ら調べ答えに辿り着いた……まさか、過去の僕達に頼るとは思わなかったけど。」


俺だって最初は鏡なんか使う予定なかった。高専になら、何か手がかりがあるかもしれないと思って、資料室を訪れてみたら真希さんが居た。真希さんは両親の同期で、両親から絶大な信頼を得ている人物。何か知らないか尋ねてみた所、「〝百鬼夜行〟を調べてみろ、私から言えるのはそれだけだ。」と言い、資料室を去ってしまった。そのキーワードを頼りに、他の資料室を調べまくっていたら、布で覆われた大きな物を発見。布を捲ってみると、鏡がありその鏡を調べてたら、いつの間にか過去に渡っていたのだから。


陽「里香さんは、とても優しい人なんだな。俺のこと、助けてくれてたんだよ。父さん達には言ってなかったけど、俺の初めての友達はリカちゃんと里香さんだった。」


幼い頃の記憶を引っ張りながら思い出す。呪術師の両親から生まれた俺は、物心ついた時から〝呪い〟という存在が見えていた。でもその呪いは普通の人間には見えないもの。小さい頃から見えた俺は、それが当たり前に見えるものだと認識し、尚且つ他人に言いふらしていた。しかし、見えない人には分かるはずもなく、そのうち嘘つき呼ばわりされたり、気味悪がられ、周りから敬遠されていた。悲しい幼少期時代を過ごしていたかもしれないけれど、自暴自棄にならず元気に生きてこられたのは、無条件に愛してくれた家族と、父と一緒に助けてくれたリカちゃんと、夢でしか会えないリカちゃん……基里香さんが受け入れてくれたから。だから俺は、恵まれていると素直に思えたのだ。


陽「父さん、母さん……いつもありがとう!俺、二人のこと尊敬してるから!」


過去の父さん達に言えたのだから、今度こそ本来の父さんと母さんに伝えたい。そう思った時には自然と口から出ていた。





―――ようやく思いを伝えられた時の二人の表情を



―――俺をきっと忘れない……。















?「……玲奈を忘れないでよね!お兄ちゃん。」










突如部屋の中に響くソプラノの声。


陽「玲奈れな!!おま……帰ってきたなら早く言えよ!!」


文句を言いながら、俺の後ろから現れたのは俺のもう一人の家族。


(過去の両親には、言ってなかったけど……貴方達二人の子供は、俺だけじゃないんだよな。)


乙「おかえり、玲奈。」


貴「おかえり〜玲奈!待ってね、今から玲奈の分も用意するから。」


母さんが玲奈の分の食事を準備する中、玲奈は俺の隣の席へ座る。さっきの文句だけじゃ言い足りなさそうな顔だった。


玲「だって、ただいまって言ったのに誰も気づかないし、着替えて下降りて見れば、パパとママとお兄ちゃんで、話してるみたいだし、入りづらくて玲奈だけ蚊帳の外みたいで嫌だったんだもん!」


陽「だからってお前……珍しく俺が真剣な雰囲気で話をしてる時にさ……」


玲「知らないもーんだ。パパ、今日は帰ってくるの早いね!お仕事早く終われたの?!あっママ!ありがとう〜!」


陽「俺が真剣な雰囲気で話してるって言ってるの聞いてた?」


彼女の中で、俺から両親二人へと話題が移った。母さんからカレーを受け取り、モグモグ食べ始めた。我が妹ながらマイペースだな。


この子は、乙骨玲奈。俺より三つ下の妹だ。顔立ちは母さんそっくりだけど、髪は茶髪で瞳は黒、性格は誰に似たのかマイペースで我儘、この間中学生になったばかりのませている女の子だ。


貴「こら!喧嘩しちゃ駄目よ。今ね、パパとママの昔話を聞いて貰ってたの。」


玲奈は〝呪い〟が見えないし、術式も持っていない。所謂非術師と呼ばれる人間だ。だから、父さん達含め俺達の職業を詳しく教えていない。玲奈は霊媒師みたいなものだと思っているが、あまり信じて無さそうだ。玲奈が家にいる時は、呪術師に関する話は避けている。


玲「何それ〜?!お兄ちゃんばかり狡い!玲奈も聞きたい!パパとママは何処で出会ったの?初キスはいつ済ませたの?初デート場所は?」


玲奈はイマドキの女の子なのだ、こういった話題には敏感に反応する。


貴「ちょっと玲奈!親になんてこと聞くのよ!初デート場所ならまだしも、初キスだなんて……今の子ってませてるわね。」


乙「玲奈、ママをあまり困らせてはいけないよ?でも、そうだな……パパと玲奈の二人の時に教えてあげるね。」


貴「ちょっと、憂太!!」


案外乗り気な父さんに母さんが怒って、父さんは笑って場を収めようとする。父の姿をキラキラした目で見ている妹。


玲「ママのケチ!じゃあお互いの印象は?昔のパパはどうだった?かっこよかったの??パパも昔のママはどうだった?綺麗だった??」


玲奈の怒涛の質問攻めは終わらない。こりゃまた長くなるだろうな……俺が寮に行く前、父さんも早く帰れた日には大体いつもこんな感じ。これが俺の平和な日常……何だか微笑ましい。


家族の様子を見て和んでいると、三人が俺に対して各々視線を向ける。玲奈は怪訝そうに見ているが、父さんと母さんは、とても嬉しそうだった。


貴「順を追って話すから!まずパパとママが出会えた理由はね……パパとママの大切なお友達のおかげなのよ……。」




自分の思い出をしみじみと語り出した母さん。時折父さんに確認しながら、自身の大切な友である里香さんの話を玲奈にしていた。その姿が、過去の両親と重なる……。……俺はあの時、過去に飛んで良かったと思っている。じゃなきゃこの未来は訪れなかったかもしれないから……ありがとう、過去の父さんと母さん……。




───────────────────────







就寝後、俺はまた夢の世界へと誘われた。何度来てもここは心が落ち着く……何も無い白い空間だからこそ、変に気を張らずに済む。


陽「ありがとう、里香さん!俺を守ってくれて……友達になってくれて……。」


何も無い空間でも、声を張り上げければあの人の元へ届く。何度もやってきたことだから、何の躊躇いもない。


陽「あと俺だけじゃなく、玲奈のことまで守ってくれてありがとう。」


朝、起きてくる玲奈が偶に変わったことを言うのだ。


玲「お兄ちゃんって……小さな女の子の友達がいる?」


その聞き方もどうなのだろうと思ったのだが、詳しく聞いてみると、あまり記憶にないが黒髪の少女と談笑した夢を見たというのだ。その少女の夢を見てから、可笑しな事態に遭遇することが無くなったという。玲奈は呪いが見えないから、俺達家族がさり気なく呪いを祓ったりしているのだが、それでも取りこぼしはある。多分里香さんが守ってくれてたんだなと今なら分かる。


陽「でも、大丈夫だよ……少なくとも俺は、自分の身は自分で守れる。だから今度は、母さんと父さんに会いに行ってくれないか?」



静かに佇む少女に問いかける。あんなにも両親が焦がれた友達なのだから、二人も会いに来てくれたら喜ぶと思う……ものすっごく。


里「それは、出来ない……と憂太には前を向いて欲しいから。……でも、大丈夫。いつか……きっと会える。全部、全部終わったら、二人は会いに来てくれる。それまでは、我慢なの……。」


そう答える少女の表情は、悲しげでもありながら希望に満ちたものだった。いつか再会できることを信じて……。


里「だから、と憂太に伝えて……ずっと見守ってるから、全部終わったら、会おうねって。」


その言葉に頷く。里香さんが決めたことだから、無理強いはしない。


里「あとね!陽太にはまた会いに来てもいい?……陽太や玲奈、と憂太のことをもっとお話したいから。」


許可取らなくてもいいのに……何だか可笑しくて笑ってしまった。


陽「ははっ!当たり前だろう……だって俺達、友達だもんな!また話そうよ、リカちゃん。」


里「陽太っ……ありがとう!」



君が誰なのか、過去に何があったのか、多くのことを知れたけど、だからといって関係性が変わるわけじゃない……願わくばこの関係が、ずっと続くといいなと思っている。










こうした俺のちょっとした時間旅行の旅は、思わぬ発見の連続だった。過去の両親のこと、リカちゃんのこと、そしてその情報を得ることにより、両親とリカちゃんの関係性に変化が起きた。人間としても呪術師としてもまだまだ未熟な俺は、更に人生の荒波へと揉まれるだろう。これからもこういった摩訶不思議な出来事に巻き込まれる……だって呪術師だし、仕方ないよな。でもそれに負けずに、家族と仲間と平穏に暮らせるよう、強くならなくちゃ……。打倒父さん!を目標に地道に、堅実に生きていこうと思い、現実の世界を生きる為、ベッドに横になっていた体を起こし始めた。


END





〜あとがき〜

めちゃくちゃ長くなってしまった!そして時間かかりましたが、これにて終了です!最後までお読み頂きありがとうございました🙇‍♀️ 個人的に、Part1の伏線であった妹ちゃんを出せたのが良かったです!最後のページに詰め込みすぎたので、もうちょっと文才があればな……それでは、またいつか。
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