未来からの訪問者 Part2
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陽太side
両親の馴れ初めの話を聞いた結果、父さんも母さんも初めての出会いがそれぞれ違ったことが判明した。……俺は勿論だが、母さんも凄く驚いていた。それはそれはもう母さんの驚きようといったら、父さんの話を聞いて顔を真っ赤にしながら口をパクパク開いているぐらい。
乙「今思えば、僕は初めて憐を見た時からずっと……好きだったんだよ。」
貴「!!」
乙「幼かった僕は、〝恋〟というものを知らなかった。里香ちゃんに教えてもらう迄分かっていなかった。気づくのに、随分時間がかかっちゃったけどね。」
父さんの言葉を聞いた母さんは、左手の薬指にはめられている指輪を触りながら俯いている。
貴「……何よ、もう……。憂太も里香も狡いよっ……!そんな話聞いたことない……。」
思った以上に混乱しているようだった。
貴「でもそっか……あれ、見られてたんだ。あの時の私、里香と離れたくなくて必死だったからな〜。」
両親の繋がりに欠かせない〝祈本里香〟さんの存在。父さんの言った通り、二人の出会いも、別れも、そして再会も、二人の大切な場面において、全て彼女の存在が関わっている。
貴「……また里香に会いたいな。」
そう言って父さんの腕に寄りかかる母さん。父さんは母さんの頭を静かに撫で始める。
乙「里香ちゃんのこと、僕らの過去を含め一通り話したけど、陽太くんは分かったかな?」
陽「よく分かりました……お二人も里香さんも凄くお互いを大事になされてるんですね。」
今回過去に飛んで1番の収穫は、夢の中で会える少女の詳細が知れたこと。里香さんは、俺の両親の幼馴染。恐らく両親の幼馴染である祈本里香さんが、俺に干渉する為に〝夢〟を使っているんだろう。でも俺に干渉するのは何故なのか。
陽「里香さんが、俺の夢の中に何故出てくるのは、多分俺がお二人の子どもだからですかね……?」
里香さんにとって俺は、親友の母さんと大好きな父さんの息子。優しくしてくれるのは当然か。
貴「ちょっと陽太くんが羨ましい……私の夢に里香は出てこないから。」
陽「そうなんですか?!」
乙「そういえば僕もあの日別れて以降、出てきたことないかな。」
陽「?!」
益々不思議だ……なんで俺の夢なんだ?両親の夢ではなく……なんで俺の前に姿を現すんだ里香ちゃん。
乙「君のことも好きなんだよ、里香ちゃんは。」
陽「……どうしてそう言えるんですか?」
貴「私達の子どもってのもあると思うけど、里香は優しい人が大好きだもの。陽太くんは、凄く優しい子なのが伝わる。だから里香は陽太くんの夢に出てくるんじゃないかな?短い間しかいなかった私達ですらそう思うんだから。」
陽「……。」
乙「未来の憐が何故泣いたのか……今の僕らにも分からない。だけど、それでも君自身が見つけなくちゃいけない。……里香ちゃんと僕らの話が何かしら手がかりになると思うから、頑張ってね。」
貴「もう一度未来の私に聞いてみてるのもいいかもね。大丈夫、そこまで私も愚かじゃない……愛する子どもの疑問にはちゃんと答えるから。」
陽「はい!ありがとうございます、憂太さん、憐さん。まだ不安はあるけど、頑張って聞いてみます!」
父さんの言う通りこれは俺自身が見つけなければならない答え。ヒントは沢山得た。あとは自分で組みたてて真実を見つけるだけ……この時代でやるべき事は済んだのだ……。
──────思わぬ事態が再び引き起こした奇跡
──────過去から未来に繋がる道標を聞いた少年は……
──────その後、過去の両親に見送られながら、本来の自分の時代に帰っていった……。
────────────────────────
─────────その後の現代
虎「もう陽太帰っちゃったの?!遅かったか……。」
伏「残念がるとこかそれ。」
野「ふ〜ん……まぁ、帰れたんならいいんじゃない?それより、私達よりも先に話した話って何よ!……真希さんどう思います?」
真「別にいいじゃねぇかと言いたいところだが……今回は野薔薇と一緒だな。憐と憂太に色々聞くか。」
狗「しゃけ!」
パンダ「ウンウン、俺達も聞きたいぞ。」
五「正直聞き足りないから僕も交ぜて〜!!」
貴2「まぁまぁ、良いじゃないですか……今夜は二人だけにしてあげましょう?私で分かる範囲ならお話しますし……今日のあの二人は色々あったでしょうから、明日以降に聞きましょうか……。
さあ、今日はみんなでご飯を食べに行くでしょう?パンダくんは学長と一緒に過ごされるんですよね。憐と憂太くんは別で食べるみたいなので、私達だけで行きましょうか〜。」
凛の声に続いて乙骨と憐以外の人間は、ぞろぞろ出ていく。パンダだけは夜蛾の元へ行く為、一人違う方向へと歩いていく。憐と乙骨は、陽太が元の時代に帰った後、各高専メンバーに今迄の陽太のやり取りを簡単に説明した。それを聞いた虎杖達は、各々思うことはあるけれど、憐の赤くなった顔色、涙の流れた後を見て詮索することを止めた。
────────────────────────
──────その後の二人
あれからどれだけ時間が経っただろう……。この時代で知るべきことを終えた陽太くんは、再び時限の鏡を使い元の時代へと帰って行った。本当に帰れるのか心配したが、陽太くんは「一度経験しているので大丈夫です!色々ありがとうございました!それではお元気で〜。」とカラッとした笑みを浮かべ、臆することなく鏡を使用した。
貴(経験しているって……どういうこと?陽太くんはこの鏡を使ったことがあるってこと?だとしてもあんな簡単に使っていいものなの??)
そして、陽太くんを見送った私達は、皆に簡単に事の結果を伝えた後、皆とは別れ、憂太と一緒に部屋に戻ってきたわけだけど……
貴(ほんとにあんな感じで帰しちゃって……良かったのだろうか。)
モヤモヤしながら指輪を眺めていると、向かい側に座っている憂太が、心配そうにこちらを見ていた。
乙「今日は驚くことばっかりだったね。」
貴「……そうね。」
乙「……陽太くんは大丈夫だよ。」
貴「どうしてそう言えるの?」
憂太の言葉に指輪を眺めていた視線を彼の方へ。何故確信を持って言えるのか……私には分からない。彼は自分の部屋だと言うのに、座り心地の良いベッドを私に譲り、向かい側にある椅子に座っていた。
乙「……理由は分からないけど、大丈夫な気がするんだ。」
憂太にしてはハッキリとしない理由だ。
貴「根拠もないのに断言するなんて、憂太らしくないね。」
彼らしくない……憂太は、明確な根拠がない場合断言しない。
乙「そうだね。自分でも不思議に思うけど、何故かそう思えるんだ。」
憂太のその自信はどこから湧いてくるのか。私にも謎に自信が湧いてくる時があるから分からなくもない。それか、私を励ます為の優しい嘘とか……。
貴「そうだよね、きっと大丈夫。……信じるって決めたもの。」
いつまでも悩んでいられない。今すぐ結果が分かることはないのだ。もしあるとしたら、それは未来の私達にしか分からない。だから、考えていてもしょうがないのだから、どうせなら幸せな未来を信じて今を生き抜いていこう。
貴「それにしても里香のことを聞かれるなんて思わなかったな。」
私達以外にも里香の存在を大事にしてくれる人がいるなんて思わなかった。ましてや、里香が夢に出てくるなんて……羨ましい。
貴「でも、久々に話したから、何だかまたあの公園に行きたくなっちゃったな。……そうしたら会える気がするの……。」
幼い頃3人で遊んだ思い出の公園がある私達の地元に、帰りたくなっちゃった。あの地には、まだ私の両親が住んでいる。全然実家に帰省していないし、この機会に帰るのもいいのかもしれない。里香の件で帰りづらくなり、東京に来てから一度も帰っていない。姉さんだけは、たまに帰省するけど私はいつも断っていた。
乙「それなら今度の休みに帰ろうよ……!僕も一緒に着いていく。あの公園にも行って……あと、里香ちゃんのお墓参りも……。
憐、僕と一緒に里香ちゃんに会いに行こう。」
憂太が嬉しそうに話し出す。そして椅子から立ち上がり、私の前に手を差し出した。彼は知っている……私が全然帰省していないことに。そしてその理由についても分かっていた。だけど、今まで憂太から私にその事を言い出したり、無理強いをさせたりしなかった。……彼は待っていたんだ。私が帰ると言い出すのを……。
貴「……うん!」
私は戸惑うことなく差し出された彼の手に自分の手を重ねた。
乙「あと、これは出来たらでいいんだけど……。」
手を重ねた状態で、憂太が頬を掻きながら小さな声で言い出す。
乙「君のご実家にも伺ってもいいかな?」
想定したことよりも軽いお願いに、拍子抜けする。
貴「それは全然いいけど、どうしたの?なんか歯切れが悪いね。」
うちの両親は、幼い頃から仲が良い憂太に対して非常に友好的だ。絶大な信頼をおいている。だからそんなに気負う必要はないはずだけど……。
すると、憂太は覚悟を決めたような顔をして話し出す。
乙「あの頃は、〝憐ちゃんの友達〟として、里香ちゃんと遊びに行っていたけど、今回は違う。あの頃とは、僕達も成長して大きく関係性が変わった。
だから今度は友達ではなく、〝憐の婚約者〟として、君のご両親に挨拶がしたいんだ……。」
貴「……!!」
驚きすぎて反応する速度が鈍かった。今なんて言った??……私の両親に挨拶したい??婚約者として??……っ!!
貴「そ、それはその……大丈夫だと……思いマス。」
恥ずかしくなってつい片言になる。そんな私を見て、笑いが堪えきれなかったのか、声に出して笑う憂太。
貴「ひ、酷いよ憂太〜!だってしょうがないでしょ!!まだ慣れないんだから……。」
必死に弁明する……だって私達まだ17だよ?!姉さんだって、五条先生と挨拶に行ったの高専卒業した後だし、現代の若者達よりも色々と展開が早い気がして、余計に気恥しさが出てくる。
乙「憐が可愛いからついね……。時間は沢山あるんだし徐々に慣れていこうよ……何より愛おしい君をこの世に生んで、大切に育ててくれたおじさん、おばさんにお礼が言いたいんだ。そして、今度は僕が憐の隣に立つ人間として、認めて貰えるように……ね?」
憂太はしっかりと先の未来を見据えている。私はというと、今を生きるのに必死で、その先のことなんてあまり考えていなかった。……両親への挨拶なんてまだ先なんだと思っていた。だけど、今日の不可思議な出来事のおかげで、未来のことを考える〝きっかけ〟になった。未来のことなんて誰にも分からない……陽太くんみたいに特殊な子は別だからね!だけど、少しでも憂太や周りのみんなが、幸せな人生を歩めるような未来になっていたらいいと思う。その為にも、色々なことを頑張らなくちゃね。
貴「ねぇ……憂太。」
幼い頃から仲が良かった私達。一時は疎遠になってしまったけど、こうして再び一緒にいることが出来ている。お互いの職種は特殊で、常に死が付きまとう危険な呪いを祓うことで生活をしている。そんな生活を送っているからこそ、平和な日常が当たり前に訪れないことを知った。そんな日々を仲間達と、大切な人と共に歩んでいこう。
そうして歩み続けた時、いつしか人には、沢山の物が手に入る。それはガラクタかもしれないし、とても大切な物だったりと様々だ。みんな纏めて箱にしまっているけど、時には箱から物がなくなる時もあるし、全部なくなってしまう時だってあるかもしれない。でも、ふとした時に見つかるかもしれない……そうやって集めたり無くしたり、箱の中身が変わりながら、私もいつか箱の中に多くの物を敷き詰めるだろう。
その物の中には憂太や里香、真希達や悠仁達といった大切な人の存在が中央を占めているけど、そのうちきっと……。
貴「未来で陽太くんに、会おうね。」
私の宝物の中に、彼の存在が入る未来がやってくる……。
乙「そうだね……僕らはずっと一緒だから、きっと会えるよ。」
互いに見遣りて笑い合う。後に、幸せな未来に思いを馳せながら、晩御飯の準備を始める二人の姿がみえた。