最終章
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貴「そう……この指輪はね、憂太の誕生日プレゼントを決める時に、里香から貰ったの。里香は、私の事を大切な親友と言ってこの指輪をくれた。あの時、あまり気にしていなかったけど、改めて見ると憂太の持っている指輪と色は違うけど、お揃いだよね。」
乙「ほんとだ……。」
僕と憐ちゃんの手には、それぞれ里香ちゃんから遺された指輪がある。きっと里香ちゃんは、この指輪で離れそうだった僕と、憐ちゃんを繋ごうとしていたんだ。
貴「幼い頃からずっとこの指輪だけは毎日つけてた。親友を忘れないように……。里香が私に遺してくれた最期の宝物だから。だからこの指輪に誓うよ。もう憂太の傍を離れたりしない……貴方だけを愛し続ける。死がふたりをわかつまで……。」
乙「……。」
彼女の言葉は誓いの言葉のようだった。笑顔で言っていたけど、ブラウンの瞳はいつにもなく真剣だった。死がふたりをわかつまで……まるでプロポーズをされているみたいだ。
貴「……なんか、プロポーズみたいな言葉になっちゃったけど、これが私の想いと覚悟だよ。中途半端は嫌いだし、里香が私達を繋げてくれたから、私はいるかも分からない神ではなく里香に誓うよ。きっと里香も見守ってくれているだろうし。……だから、憂太も……私を受け入れるならこのくらいの覚悟で、隣にいて欲しい。」
貴「それと、他人を守る為に自分の命を犠牲にするのはやめて。もう前みたいなことはしないで。私の隣にいるのなら、『生きている』事が大前提。呪術師だから難しいかもしれないけれど、貴方が傷つく事で悲しむ人がいることを忘れないで……。」
僕の想いは、人より重いが故にもしかしたら彼女の負担になるかもしれないと思っていたけど、杞憂だったようだ。
貴「憂太は自分の事をよく卑下していたけれど、私からしたらとんでもない……とても優しくて、素敵な人なんだから。今直ぐにとは言わない……少しずつでいいから『自分』を大切にしてね。」
彼女は言いたいことを全て言えたのか、満足したような顔をしてこちらを見ていた。少し不安気な顔をしているが、心配する必要なんてないのに……。僕は君と一緒にいられるのなら、何だってする。
せっかく彼女から、誓いの言葉を聞くことが出来たのだから、それなら、僕も彼女に対しての覚悟や想いに誓いをたてよう。伝えたい事は全て伝えよう。
僕は彼女の持っている金色の指輪を、彼女の薬指にはめ、自分の指輪を触りながら言った。
乙「僕もこの指輪に……神様ではなく里香ちゃんに誓うよ……憐の傍を離れたりしない。この先一生を共にし、愛するのは君だけ。少なくとも、僕が生きている間は、君を絶対に死なせないし守り抜く。君は、死がふたりをわかつまでと言ったけれど、『死』のその先まで一緒だよ。例え生まれ変わったとしても、僕は必ず君を見つけ出す……、そしてずっと……、ずっと……一緒だからね。それが僕の覚悟だよ……。だから……君の想いも覚悟も受け入れるから、僕の想いも覚悟も受け止めて欲しい。」
貴「……!」
彼女はとても驚いていた。だけどまだ僕の言いたいことは終わっていない。
乙「憐ちゃんを悲しませたくないから、自分の身体も大切にする。保証はできないけど、必ず生きて君の元へ帰るよ。それに、僕も君にお願いがあるんだ。君も自分の事を大切にして欲しい。前の時みたいに、僕や他人の為に自分の身体がズタボロになるまで、戦うのはやめて欲しい……。正直本当に生きた心地がしなかったんだ……。今は呪術師としての階級が4級まで下がった僕が言えることじゃないんだろうけど、またすぐ強くなるから……だから、無茶だけはしないでね。」
君が僕を心配してくれているように、僕もまた君の事が凄く心配なんだ。もうあんな思いはしたくない……。その為にも一刻も早く強くならなくちゃ。
貴「分かったよ。無茶はしない……困ったら憂太に相談する。それにしてもお互い重い誓いね……。」
乙「そうかもしれない……けど僕は嬉しいよ。憐ちゃんと同じ気持ちだと分かって。」
貴「そうね……私も嬉しい。これから改めて、よろしくね憂太。」
乙「こちらこそよろしくね……憐ちゃん。」
僕らは見つめ合い、そして笑い合った。お互いの左手の薬指には、それぞれ誓いの証がはめられている。僕達の誓いは、天高く見守っている彼女に届いただろう。神様じゃなく、里香ちゃんに誓うのが僕達らしいとも思った。
貴「一応私達付き合ってるんだから……そろそろ私の名前を呼び捨てにしてもいいんじゃない?……さっきは1回だけ呼んでくれたの嬉しかったし。なんなら、私だってちゃんと憂太の名前、呼べるようになったんだし……。」
乙「えっ?!……なるべく早く呼べるように、頑張るよ!」
まずは、彼女の名前を呼び捨てで呼べるようにならなくちゃね。
こうして僕らは、以前とは違う関係性になった。里香ちゃんとの約束を果たす為の第1歩、大きな進歩だった。その事に喜ぶ暇もなく、これから先やる事は沢山ある。また新たな季節がやってきて、僕らの年は上がり、この呪術高専で学ぶ事も増え、新たな後輩もやってくるだろう。何にせよ彼女が居れば僕は、どんな事が起きても乗り越えられる。これからも大切な人達を守れるように、強くなろう……。そう心に刻み、今日もまたこの呪術高専に通う日々が始まるのだった。
END