五「完全秘匿での死刑執行？あり得ないでしょ。」


「しかし本人が了承した。」


五「未成年……16歳の子供ですよ。逆に何人呪い殺されるか分かりません。」


「では、やはり……。」


五「えぇ……。乙骨憂太は、呪術高専で預かります。」








「久しぶりじゃないか、乙骨」


乙「こっちに来ないで……。」


ある学校の教室でそれは起きた。一人の少年が壁を背にして俯いている。黒い髪に、首にはきちんとネクタイをしている。そしてその少年を囲むは、同級生4人の男子生徒。その中でも少し肌黒い少年が、黒い髪の少年に言った。


「おいおい寂しいこと言うなよ」


────────「駄目だってば」────────


「俺がどれだけオマエを殴りたかったか。もっと俺の気持ちを想像してくれ！！」


────────「やめて」───────────


「こんなにじらされたら、うっかり殺しちゃうぞ？」


そう告げた肌黒い少年が、ネクタイを外しながら近づく。


乙「来ちゃ駄目だ……里香ちゃん。」


その瞬間、見る間もなく肌黒い少年が、黒い髪の少年の後ろから現れた"ナニカの手によって"姿を消す。そして肌黒い少年だけでなく、同じく黒い髪の少年を囲っていた3人の男子生徒の姿も消える。


記録 ─── 2016年11月東京


同級生による執拗な嫌がらせが誘因となり、首謀者含む4名の男子生徒が重傷を負う。


乙「ごめんなさい……。ごめんなさい……。」


突如起きた惨劇に、黒い髪の少年はカタカタと震えながら、座り込む……謝罪の言葉を述べながら。


後にこの少年に暴行しようとした男子生徒4名は、教室の中のロッカー内にて、見るも無惨な姿で発見される。


そしてこの黒い髪の少年の名前は、乙骨憂太。後に呪術師の中でも最高峰の特級呪術師として活躍する少年の、始まりをえがいた物語である。