最終章
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彼女は逝ってしまった……。とても綺麗な笑顔で……あの頃と変わらない姿で……私達を残して旅立ってしまった。
笑ってお別れ出来たこと……それは満足している。里香に伝えたい事もちゃんと伝えた。
でも……大切な親友がもう何処にも居ないことを実感し、涙が溢れてしまう。もっと遊びたかった……一緒の学校に通って、恋の話をしたり、くだらない日常の話をしたり……もっとそばに居たかった。普通の人と同じような平和な日常を送りたかっただけなのに……運命の歯車はどこで狂ったんだろう。
貴「……っ。」ポタリ
自分の涙が落ち、地面を濡らす。……もう既に私の涙腺は限界だった。他に誰も居ないし、気を遣わず思いっきり泣いていいよね。
ジャリッ
貴「!!……。」
砂利を踏んだ音が後ろから聞こえた。私は瓦礫の上に座っているから、私じゃない。皆はもう行った筈……誰なの?
そう思い後ろを振り返ると
乙「憐ちゃん……。」
憂太がこちらに向かって歩いていた。
貴「憂太?!なんでここに……。」
乙「えーっとその……憐ちゃんが心配だったから……その……。」
貴「……乙骨くんは相変わらず優しいね。」
私が心配だったから残るなんて、ほんとお人好しね。
私より里香のそばに居て、好きな人と今度こそ本当のお別れなのだから、憂太の方が辛いはずなのにね。私は素早く涙をふいた。
乙「そうかな?……そんな事ないと思うけど……。」
貴「変なとこで謙遜しなくていいの!……事実なんだから。」
乙「……うん、ありがとう憐ちゃん。」
貴「……。」
乙「……。」
私達の間に流れる沈黙の時。正直今は自分の事で精一杯すぎて、憂太の事にちゃんと向き合えるか分からないけど、迷惑かけたのは事実だから、謝るのが筋よね。
貴「さっきも言ったけど、里香の件……知らなかったとはいえ、私も呪っていて、そのせいで乙骨くんに迷惑をかけてしまって、ごめんなさい。」
乙「違うよ……里香ちゃんは僕が呪…貴「そうだけど!私も呪っていた事は事実なの!」……憐ちゃん。」
貴「それに……私は姉さんのいる所に逃げた。乙骨くんの辛い時に……逃げて忘れようとした事、本当にごめんなさい……。」
乙「……。」
謝罪の言葉を口にする度に、自分の罪を自覚する。そして彼に対しての罪悪感で、心がいっぱいになる。自分を責め続けると同時に、また楽になろうとしている自分がいて嫌になる。……こんな自分が大嫌いだ。
貴「少なからず乙骨くんだけに辛い思いをさせてしまった……本当にごめんなさい。……こ、これからは……なるべく貴方に話しかけないようにするから……!?」
ギュッ
憂太は本当に優しい人……でもだからこそ私がそばに居ることで辛いなら、距離をとろうと言葉を続けようとしたら、目の前が真っ白になった。
貴「えっ……?」
今……私、憂太に抱き締められてる……?
乙「ごめんっ……でも、もう我慢出来なくて……。僕が言っても聞いてくれないかなって思って……。お願いだから……僕の話を聞いてよ。」
貴「……。」
予想外の出来事に上手く頭が働かない。なんで今、私は憂太に抱きしめられてるの??私に話を聞かせる為??
乙「このまま聞いて欲しい……。あのね……里香ちゃんが居なくなった後、何も言わず君まで居なくなった事は驚いたし、本当に悲しかった。でも、全く怒ってもないよ!だってあの時僕だけが辛かった訳じゃない……憐ちゃんだって、辛かったんだよね。里香ちゃんの事大好きだったのは知ってるから、里香ちゃんの事を知ったら凄く悲しむだろうなって思ってたから。」
貴「……。」
乙「でもね……こうして憐ちゃんと出会えて、真希さんや狗巻くん、パンダくんという新しい友達と仲良くなってるのを見て安心したんだ……。笑ってすごせてるんだねって……。」
貴「何それ……。」
なんで私の心配なんか……。自分の弱さで勝手に離れていったやつの事なんか……怒ってくれればいいのに……嫌いになってくれればいっそ私も楽なのに
……。
乙「それに久しぶりに再会したのに、僕や里香ちゃんの事を覚えてくれてたでしょ?笑顔の再会とまではいかなかったけど、その事も僕は嬉しかったんだ。あぁ……君の中にまだ僕や里香ちゃんは存在していたんだって……。」
貴「もう……何っそれ……。」
あぁ……拭ったはずなのに勝手に目から雫が溢れはじめる。
乙「長くなっちゃったけど、僕は全く怒ってもないし君の事を嫌いになんかならないよ……。嫌いになれるはずがないよ……だって君は……」
貴「……?」
乙「……た、大切なっ!幼馴染の女の子で友達だからね!……。」
何それ……こんな私の事をまだ友達だと呼んでくれるの?幼馴染だと認めてくれるの?
貴「っ!!……憂太はほんとうに……お人好しなんだから。」
いつだってそう……彼は辛い時にそばにいてくれた、弱くて狡い私を受け入れてくれた、自分だって辛いのに一生懸命励ましてくれた、いつも彼は私を助けてくれた。……隠していた想いが、改めて自ら訴える。
やっぱり私は憂太を愛していると……──────。