凛 side


伊「申し訳ございません。何者かが、私の〝帳〟の上から二重に〝帳〟を下ろしていました。加えて予定にない、準1級レベルの呪いの発生。全ては私の不徳の致すところ、なんなりと処分を……。」


五「いやいい……相手が悪過ぎた。」


貴2「……。」


私と悟は、狗巻くんと乙骨くんの任務に同行していた補助監督の伊地知くんから、任務の報告を受けていた。ハピナ商店街に発生した低級の呪いを祓うこと……それが今回の狗巻くんと乙骨くんの任務だった。狗巻くんを指名しての任務だったのだから、簡単な任務のハズだった……手こずるような任務ではないはずだ。


伊地知君が言っていた〝帳〟の上からさらなる〝帳〟を下ろし、予定にない上級の呪いの発生……どう考えてもおかしい。


あきらかに誰かに仕組まれている……もしかしたら、〝呪詛師〟の仕業かもしれない。


伊「と申しますと、犯人に心当たりが？」


五「……。」


貴2「悟……。」


犯人に心当たりがあると取れる行動をしていた悟。伊地知くんの言葉を遮るくらい、確定できる証拠があったのだろう。私の予想は呪詛師が絡んでいることくらいしか分からない。しかし、悟は、棘くんと憂太くんの任務場所のハピナ商店街に、一人で直接赴き、その場所で何が起きたのか、自分の目で確かめてきたらしい。そんな彼が、酷く思い詰めたような表情をしていたことに気がついた私は、悟の腕に寄り添った。


悟は私を一度見た後、私の頭を撫でながらある人物の名前を告げた。


五「夏油傑……。4人の特級が一人、百を超える一般人を呪殺し、呪術高専を追放された……最悪の呪詛師だよ。」


貴「夏油くん……？！そんな……呪詛師が関わっていると思ってはいましたが、まさか夏油くんだなんて……。」


五「本当だよ……。僕は直接この〝眼〟で確認してきた。傑の呪力の残穢を僕が間違えるはずはない。」


貴「……夏油くん。」


夏油傑……。かつてこの高専で、同じ呪術師を目指し、学んでいた同期……私の尊敬するべき友人の一人だった。悟にとっても私にとっても、勿論硝子にとっても、忘れられることの出来ない人物。この四人で過ごした高専時代の出来事は、今も尚私の中で色褪せることない、良き思い出として心の中に残っている。