五「ねぇ、憐。僕に聞きたい事あるんじゃない？」


貴「……よく分かりましたね。その綺麗な瞳は、私の考えてる事とか何もかも見透かしてるんですか？」


五「だって、僕最強だから……。」


貴「……はぁ〜。そうですよね〜貴方はそういう人ですもんね。少しは真面目に話せないんですか。」


五「そう怒らないでよ〜。せっかく話しやすい雰囲気にしてあげようとしたのに。」


貴「逆に話しづらいわ！……姉さんはどうしてこんな人と人生を共にしようと思ったのか……。」


五「ちょっとちょっと〜！凛には、関係ないでしょう。それに僕には凛しかいないし、凛も僕しかいない。まさに運命共同体ってやつでしょ！」


(話逸れまくってるよ……。)


五条先生と話すといつもこうだ。大体からかわれるか、姉さんとの惚気話か。同じ話の展開になるんだから……そろそろやめて欲しい。


五「話が逸れたね……。まぁ僕が最強なのもあるし、お前をガキの頃から見てるしな、大体表情で分かるよ。」


貴「……上手く隠してるつもりなんだけどな。」


五「憐の聞きたいことは分かってる……。憂太と祈本里香の事だろう？だけど、残念〜まだ何も分かってないんだよね。どうして祈本里香は、憂太を呪っているのか。どうして、呪術師の家系でもない祈本里香の呪いが、あそこまで莫大なものになっていることとかね。」


貴「そうですか……。」


あの五条先生でも分からないなんて……。里香についてまだ謎な部分が多い。憂太や里香の為にも早く解明しなくては。


五「分からないからこそ、知るためにトライ＆エラー……敢えて色々やらなくちゃね。」


貴「……何か起こるんですか？！大丈夫ですよね？」


トライ＆エラーって五条先生には、これから何が起こるかある程度予測が付いているのかな。お願いだから、最悪な事にだけはならないように……。


こんな人だけど、腐っても呪術界最強の呪術師、万が一のことがあってもきっと対処してくれるはず。


(そう……この人なら、どんな事からも絶対姉さんを守ってくれると思って託したのだから。)


五「大丈夫だよ、もし祈本里香が暴走したとしても、憂太も真希も絶対に死なせないよ……かわいい義妹（いもうと）のためにもね。」


貴「……ありがとうございます、義兄（にい）さん。」


五「あれ、その呼び方久々に聞いたね〜。もっと呼んで頼ってもいいんだよ〜！」


貴「うるさいです、調子に乗らないでください！」


ほら、こうやってすぐ調子に乗るからあんまり素直に言いたくないんだよね。


五「それとさ僕も憐に聞こうと思ってたことがあったんだよね。なんで憂太によそよそしいの？凛に聞いたけど、仲が良い幼馴染なんだよね？久々に再会したとはいえ、あの態度は良くないんじゃない？あれじゃあ〜憂太が可哀想だね。」


貴「それはっ……。」


言葉に詰まる……。確かに姉さんから仲の良い幼馴染と聞いていたら、あのぎこちない空気に五条先生ですらも、突っ込まざるを得ないだろう。


貴「……五条先生も知っての通り、私がこっちには引っ越してきたのは6年前。姉さんが濁してたと思いますけど、こっちに引っ越してきた理由……心が病んで地元にいるのが辛くなったからって言っていたと思いますけど。詳細を話すと実は、里香の交通事故の件があったからこっちに来たんです。」


貴「その間まともにゆ……乙骨くんとは話すどころか一度も会わなかったんですよ？気まづいじゃないですか……。」


五「ふーん……でもその割に憂太のこと凄く心配してるよね。表情は不安気だしほら、見てよ……憐の手のひらに爪のあと残ってるじゃん。強く握りしめてたからじゃない？真希の実力を知っている憐ならここまで心配したりしないでしょ……となると残るは憂太のことかな。」


(……凄いバレてる。)


……何も言えない。ポーカーフェイスを保っているつもりだったけど私には向いていないな。


貴「……乙女の秘密ってことにしといてください。」


流石にこの言い訳はきついと思うが、私がこれ以上何も言わないと察したのか、五条先生はこう言った。


五「……分かったよ。これ以上何も聞かない。でも一つだけ……。時が解決してくれる事もあるけど、時は金なりという言葉通り時間は有限だ。無駄に待つよりも、行動してみたら意外とどうにかなるかもね。」


貴「……分かりました、頭の片隅に入れておきますね。」


五条先生の言葉にそんなことを言いつつも、憂太達が帰ってくるまでの間、ずっと考えているのだった。