乙骨side


五「入っといでー！！」


(ものすごく冷めた空気を感じる……。)


正直廊下からでも伝わる冷めた空気に、五条先生に呼びかけられながらも、本当に入っていいんだろうかと思うが、五条先生や凛先生からは、憐ちゃんの他にも生徒達がいて、凛先生曰く、〝みんな良い子です！〟って言っていたから、良い人達……だと願いたい。漠然とそんな事を考えながら、扉を開けて教卓の前まで歩いていく。


まともに前を見ることが出来なかったが、自己紹介をする為に前を向いた瞬間、ある女の子と目が合う。亜麻色の髪で、ブラウンの瞳を持つ女の子。小さい頃よりも髪が長くなっていたが、間違いない……彼女は僕がずっと探し求めていた人だった。


(憐ちゃん……。)


彼女は驚いている様子だった。瞳は大きく見開き、座っていた椅子を倒しながら立ち上がっていた。無理もない……あれから6年も経っている。しかも里香ちゃんの事がなければ、本来来るはずのない学校だったのだから、僕が高専（ここ）に来る事も予想外だったんだろう。でも……


（驚いているって事は……少なくとも僕の事を覚えていてくれたんだね。）


あれから6年の時が経っても、彼女が僕の事を覚えていた事に少し心の中で喜びながらも、表には出さず自分の名前を名乗る。


乙「乙骨憂太です。よろしくお願いします。」


その言葉と同時に、槍先が僕の顔の横に突き刺さった。あまりの出来事に、冷や汗をかく。そして気づくと3人に囲まれていた。


真「これ、なんかの試験？ おい。オマエ、呪われてるぞ。」


真「ここは呪いを学ぶ場だ。呪われてる奴がくる所じゃねーよ。」


……自己紹介をしただけなのに、何故クラスメイトとなる人達に警戒され、囲まれているのか分からなかった。……何で彼女にまで武器を向けられているのか分からなかった。