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忠実な彼ほど牙を剥く

「すみませんねぇ……外が暑かったもんですから喉がカラカラでして……水も持ってきてないなんて情けないですよねぇ……」

「いえいえ、客人に何も出さない方が失礼ですよね。すみません」

「そんなとんでもない。ところで1つ聞いてもよろしいでしょうか?」

視察官はじっと私を見つめ気味の悪い笑みを浮かべた。
それを見て思わずゾクッとした。

「審神者とはいえ、男の中に女が1人。どんな気持ちですか?」

「?どういう意味ですか?」

質問の意味がわからずキョトンとしていると視察官は変わらずニヤニヤしながら続けた。

「いやぁ、気になりましてね。刀とはいえ1人の男な訳でしょ?それにあなたは美人さんだ。」

「何が言いたいんですか?」

「刀剣男子と性交した審神者もいらっしゃるんですよね。で、あなたはどうなんです?」

ゾッとした。
先程とは全く別人のようだった。

「有り得ませんね」

「えぇー。せっかくいい身体してらっしゃるのに」

ガタン

すると男は立ち上がり息を荒くしてジリジリと私に近付いてきた。
私がそれを迎え撃とうと思わず身構えたときだった。

「お茶をお持ちしました」

そこへスーッと戸が開きお茶を持った長谷部が戻ってきた。

「?御二方共、何をされているのですか?」

長谷部がキョトンとした顔で男と私を見ていた。
長谷部の顔を見て安心したのか私はその場にへたりこんでしまった。

「審神者様がふらついて倒れそうだったので私が支えようとしたところちょうど近侍殿が戻ってこられたので……。少し休憩された方がいいかもしれませんね。」

先程の薄気味悪い笑みとは打って変わってニコニコと愛想笑いをしてサラッと嘘をついた。

「ホントですか?なら少し休まれた方が…」
長谷部はお茶を机に置いてへたりこんでしまった私の側へと駆け寄ってきた。

本当はこの男に襲われかけたと言いたい所だが何せ政府の人間だ。
後々ややこしくなって皆に迷惑をかけたくない。
私はグッと我慢して長谷部に大丈夫だと言った。

「それはそうと面談の方は無事に終わりましたので私はそろそろ失礼させて頂きますね」

男は立ち上がり身支度を整え帰ろうとした。

「視察官殿、せっかくお茶をいれてきたのですからよければ飲んで行かれてはどうですか?」

ぐいっと男の前にお茶を差し出す。

「あー!そうでしたね!ビックリしてつい忘れていました!いただきますね!」

男は慌てて目の前のお茶をとると一気に飲み干した。

「あー喉が潤いました!ありがとうございますーでは私はこれで失礼しますね。審神者様お身体の方お大事にしてくださいね。」
「ありがとう………ございました」
作り笑いで座り込んだまま男を見送った。
「俺が視察官殿をお見送りさせて頂きます。主はこちらでお待ちください。すぐに戻ります。」

「ではでは後日結果の方を送らせて頂きますね。本日はありがとうございましたー」

男はそう言うとそそくさと部屋を出ていった。
長谷部は私に一礼すると男に続いて部屋を出ていった。







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