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忠実な彼ほど牙を剥く

そして視察当日。
本丸に政府の人間が来ると聞いて他の連中はどうしたらいいかとなどと騒いでいたが、主はいつも通りでいいからと仰って笑っていた。
全くうちの本丸は落ち着きがない。
賑やかの意味では良いところでもあるのだが。

すると、ピンポンと本丸のインターホンが鳴った。
主と一緒に玄関へ向かい俺が戸を開けると、そこには小太りの視察官であろう男が立っていた。

「こんにちはー。本日本丸の視察をさせて頂きます小野と言います。よろしくお願いしますー」

外が暑かったからか男は汗だくでハンカチで額を拭きながらニコニコと笑っていた。
「こんにちは!ここの本丸の審神者をしている者です。こちらは近侍のへし切長谷部です。よろしくお願いします」
男はハンカチをしまい手を差し出し主に握手を求めてきたので主がそれに応じていた。
「おや、近侍殿はへし切長谷部ですかぁ。これは頼もしい」

俺は軽く会釈をした。

「?小野さんお一人ですか?」

主が不思議そうに辺りを見回す。
確かに政府の人間でも補佐官として刀剣男士が着いてるのがよく見かけるが…。
その男は1人だった。

「あぁ、一般的には補佐官として刀剣男士が着いてくるのですが、私が良いと断ったんです。政府の本社と各本丸とほぼ直結のようなものなので私1人でも大丈夫かと思いましてね」

「そうなんですね…じゃあまぁとりあえず中ご案内しますね!」

そう言うと主が先頭を歩きそれに続いて視察官、そして俺の順番で本丸の中へと入っていく。
政府の人間が刀剣男士も着けずになど珍しいものだ。
この時の俺はこういう事もあるものなんだとそんなに深くは考えていなかったのだ。

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