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prrrrr・・・
何度目のコール音か、数えるのも馬鹿馬鹿しくて覚えてもいない。
「なな子ちゃーん!出てくんなきゃ俺ちゃんもう寂しくて死にそうなんだけどー」
その日は傭兵としての依頼でこの街でも有数の反社会的な組織のでけえビルに俺は来てた。
金さえちゃんと支払ってもらえるんなら別に正義だとか悪だとかもうどうだっていい。
ワンフロアをクリアした俺は適当に吹っ飛んでぐちゃぐちゃになった机(だったもの!)に腰掛けながら愛しのなな子ちゃんに電話をかけてるわけだけど全く繋がらない。
というかここ数日、傭兵業が忙しいのもあってなな子ちゃんの生身どころか声すら聞いてない。
「つーかもうめんどくせえしなな子ちゃん家に行った方早くね?(Exactly!)」
そうとなればさっさとやる事やってこ!
上のフロアから増援が来たのか、既に事切れた屍を蹴り飛ばしこちらに向かってくる黒服の集団の姿が見える。
「HEY!聞いてるBaby達!俺ちゃん用事できちゃったからさー・・・一気に来てくんない?」
ガシャンと愛銃を両手に構え、俺はラスボスを倒すべく次のフロアへと向かうのであった。
+
私が仕事を終えて帰ろうと外に出ると空は既に黒く、街中から聞こえるのはお酒を飲んで楽しむ人の声が聞こえる時間だった。
家に帰る頃には夕食の支度なんてものをする気になんてなれない事はわかっている。
むくんで疲れた足をのろのろと動かしながらコンビニで適当に買い物をして家に帰る事にした。
マンションのエレベーターを待っている間にスマホを見ると彼から数十件もの着信履歴が残っていた。
しかし時刻は数時間も前だ。
かけ直そうか考えたが自分の事ですらいっぱいいっぱいなのだ。
電話をかけ直す元気などあるわけがない。いや、正しくは今このエンプティな体力であいつのマシンガントークを受け止める自信がない。
そっとスマホをポケットに戻し、変わりに家の鍵を出す。
「ただいまぁ」
別に誰に言うわけでもないが癖なのだ。
しかしその日はいつもと違った。
居間の方からごそごそという音と人の気配。
・・・いや、あいつの場合はこんなに静かになんてできるわけがない。
「ウェイド・・・?」
それでも私は彼の名前を呼んでしまう。
部屋に入り、私は絶句した。
いや絶句するなという方が無理だ。
「あ、なな子ちゃんおかえりー」
「ンッ・・・アンッ・・・」
ここは確かに私の部屋だ。
お気に入りのソファの上でウェイドが他の女とよろしくやってやがる。
ティッシュやゴムは床に散らばり、ビール瓶やらなんやらも転がっている。
恐らく女は商売嬢だろう。美人なのがまたイラっとする。
ひとりは素っ裸で満足気にぐったりと床に転がり、もう一人はまさに現在進行形でウェイドとお楽しみ中で甘い声を漏らしている。
「お楽しみのところすいませんがお部屋をお間違えですよ、ウェイド・ウィルソンさん」
「いやいや別に間違ってない間違ってない。ここ苗字なな子さんのお宅で間違いないですもん」
「じゃあなんで私のお気に入りのソファの上でよろしくやってるやつがいるんですかね」
「ん~~~~、なな子ちゃんとよろしくしたくて遊びに来たんだけどいなかったんだよね。んで、俺ちゃんってばなな子ちゃんに熱いラブコールたっくさんしたんだけどぜ~~~~~んぜん繋がんなくて。何回もかけてるうちに間違って女の子のデリバリーに繋がっちゃった☆」
「繋がっちゃったじゃねえ」
「でもさ俺ちゃん、こんなに寂しくって・・・」
と見せ付けるように嬢を犯し続ける目の前の男。
言いたい事はたくさんある。
しかしウェイドの腰はしっかりと動いていてこれ以上会話をするのも馬鹿馬鹿しい。
右手にぶら下げていた買い物袋を思いっきりウェイドの顔に投げつけ部屋を出た。
「引っ越そう」
エレベーターの中で決意した。
スーツ姿のまま夜の街へと戻る事になったがあの家にいるより遥かにましだ。
適当に着替えと必要なものを24hの店で購入し、コインランドリーに向かった。
別にウェイドがぶっ飛んだ事をするのは今に始まった事じゃないのはわかってる。
何を思ったか血まみれのまま家に来た事もあるし(しかもベッドで寝てた)、片腕もげたまま来た事もある。
あいつと楽しい関係を築くのであれば、それくらいの事に目をつぶれないとだめだ。
しかし女を連れ込まれたのは初めてだ。
こればっかりは私の気持ちが穏やかでいられない。
決してウェイドとは恋人関係ではないのは確かだ。
だけど友達以上恋人未満のような、言葉にはできないが悪くない関係だと思っていた。
でもそれだけだ。
「まー・・・所詮そんなもんかー」
自分の心を誤魔化したくて声に出した。
マンションを出て、適当に歩いていたがこの街はそれなりに都会だ。
コインランドリーなんてすぐに見つかる。
トイレで買いたての服に着替え、着ていた服を洗濯機に入れて回した。
椅子に腰掛け、自販機で買ったコーヒーを片手に不動産情報誌を見る。
パラパラとページをめくる音とゴウンゴウンという機械の音以外ここにはない。
時間も時間だからか私以外の人はいなかった。
しかし自分以外の回ってる洗濯機がいくつかあるのが見えているから、そのうち誰か取りにくるだろう。
「っとに・・・ばっかじゃないの」
静かな空間で気分が落ち着いたのもあり、思わず独り言が漏れた。
めくるページに集中なんてできずそのまま閉じ、近くにあったゴミ箱にシュートした。
それと同時に人が入ってきたのが見えた。
気にせず残りのコーヒーを飲んでいるとその老人が困ったようにこちらに近付いてきた。
「あのーすみません」
「なんでしょう・・・?」
「いやね、恥ずかしいんですがこの歳になるとこういった機械の操作がわからなくて・・・この蓋を開けて中身を取り出したいんですがね・・・」
「ああ、そのくらいでしたらやりますよ」
どんな事情か知らないが目の前の老人は使い慣れない機械操作に困っているようだ。
蓋にはロックがかかっているだけだったので、ロックを外し蓋を開けてあげそのまま後ろに下がろうとした。
「いやあ助かりました」
「いえいえこの位・・・全然・・・」
蓋を開けた私の目に洗濯機の中身が見えた。
ちらりと見えたそれはぼろぼろになったクマのぬいぐるみで、それと目があった時ゾクリと全身が震えた。
「え?」
「こんな時間に、こんなにドン臭そうな女がいてくれて本当に助かったよ」
私って今日の運勢最悪なんじゃないの。
バチッというスタンガンの音が聞こえたときにはもう既に私の意識は飛ばされていた。
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