鵜飼繋心
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久々に会った父と母は変わらずに私を受け入れてくれた。
私の部屋はそのままだったようで、母も掃除をしていてくれたおかげで問題なく使えた。
持ってきた荷物を片付け、あれやこれやとしているうちに外はすっかり夕方になっていた。
椅子に腰掛け、深呼吸をするとお腹がくぅと鳴った。
そういえば昼を食べて居なかったことを思い出した。
しかし夕飯までは少し時間がある。
ふ、と高校の頃の記憶が蘇る。
高校生当時、部活に入っていた時だ。
下校時刻に友達と皆でよく坂ノ下商店に行ったものだ。
昼間に鵜飼君と昔話をしたせいか、懐かしい記憶でいっぱいになる。
「散歩ついでに行っちゃおうかな」
さっきは鵜飼君と喋りながらで、外の風景を見る余裕なんてなかった。
歩きながら昔を思い出すのも悪くない。
そう思い、携帯と財布をだけを持って家を出た。
何もない景色が懐かしい。
東京で働いていた時はいつもぴりぴりとして、常に気を張っていた。
街行く人々の単調なざわめきや車のクラクション、都会特有の騒音がないだけ
でこんなにも心が穏やかになるなんて思ってもいなかった。
そんなこんなで目的地である坂ノ下商店に着いた。
カラカラと軽い音をたてながらドアを開き中に入る。
学生時代から変わらない内装にほっとする。
とはいえあんまり遅くなるとあれなのでささっとお菓子を決めた。
何も考えずにカウンターに向かうと見慣れた姿に思わず手にしたお菓子を落としかけた。
「待て苗字、何も言うな」
「だって・・・っ」
「あー・・・これには深いわけがあってだな?」
「はた、はたきまで持ってて、か、可愛い・・・っあは!!」
「笑うんじゃねえよ!つーか人の話しを聞けっ!」
「いやだって・・・っ!エプロンが似合っ・・・!」
「だかっ、くそっ・・・笑うなー!」
カウンターの向こうにいたのは昼に別れた男のエプロン姿だった。
流石に失礼とわかっていても、はたきにエプロンという最強オカン装備には耐え切れずなな子は噴出した。
流石に彼の言い分も聞かないわけにもいかず、話をきいてると外から声がしてきた。
「「「っちわーーーー!!」」」
「タイミング最悪だなおい!!」
そこには今日すれ違った部活の男の子たちの姿だった。
元気に挨拶をしてくれたのが印象的でよく覚えている。
皆、揃いの黒いジャージ姿でぞろぞろと店に入ってきた。
何人かの背中が見え、そこには排球部と書かれていた。
「あ、さっきのお姉さん!っちわー!」
「あら君、さっきの・・・バレー部だったんだ」
「そっす!」
「ひひひ日向!お前っ!こここのお姉さんと知り合いなのか!!」
「すれ違っただけっす」
「羨ましい!!ああ羨ましい!!」
「龍は後ろの方だったからなー・・・あ!俺、2年でリベロやってる西谷夕って言います!おねえさんのお名前は?」
「あ、ノヤっさんずるい!俺も!俺も!2年の田中龍之介!WSしてます!」
あっという間に囲まれて、男の子たちの自己紹介が始まってしまった。
突然の事でおろおろしていると見かねた鵜飼君が動いた。
「お前ら、店先で騒ぐな!それと、苗字。お前も嫌なら嫌って言えよ」
「え、あ、ご、ごめん」
「苗字さんって言うんすね!す、素敵な名前だ・・・!」
「龍、その気持ち・・・わかるぞ!」
「ノヤっさんもわかってくれるか・・・!」
「お前ら!先に走って行ったと思ったら・・・店先で迷惑をかけるんじゃない!」
西谷君と田中君の二人がわいわいと騒いでいると店の入り口から同じジャージの男の子が入ってくると同時に鬼のような顔で叱りつけ説教が始まった。
皆の視線が説教の方に向いているうちに私はこそりと鵜飼君に声をかけた。
「鵜飼君、お客さんたくさんみたいだし・・・またね」
「あ、ああ。お客っつーかなんつーか・・・まぁ、また来いよ。俺がいない時もあるけどな」
「そうなんだ。じゃあ・・・暇なら連絡して?」
「・・・ん」
鵜飼君は男の子たちの視線に気付き、ぶっきらぼうに返事をした。
照れた時の仕草は学生の時から変わっておらず、つい口元がほころんだ。
「君たちも、またね。部活頑張って!」
「「「お疲れっしたーーー!」」」
にこりと笑いながら店を後にした。
後ろでは男の子たちの大きな声と鵜飼くんの怒鳴り声が聞こえてそれがまたおかしくて、私は笑った。