prayer[P3→BBB]
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俺の冷気に充てられ、顔色が悪くなった少女が震える声で「病室では患者さんが休めないので」と言うので彼女の言葉を受け入れ部屋を変えた。
廊下を少し歩くと小さな部屋があり、そこは小さいながらもカンファレンスルームのようだった。
「どうぞ」
目の前にはサーバーから入れたコーヒーが差し出される。
いつものように女受けのいい笑顔を向けコーヒーを受けとったが、その笑顔は彼女には合わなかったようだ。
彼女も椅子に腰かけたのを見て、俺も腰を下ろした。
ツェッドとの通話で判明したひとりの存在。
ゴーストのような、実体があるのかわからない謎の存在を操る少女。
目立つような特徴があるわけでもない、どこにでもいる学生だ。
そう、どこにでもいるが故に
しかも彼女はブラットベリ総合病院に住んでいるとも言っている。
俺の情報網を使っても彼女の情報は一切出てこなかった。
偽名かと思いあらゆる手を使って調べたが彼女はこの世に存在していない。
出生も何もないどころか、いつからこの地に来たのかすら不明だ。
それだけだ。
俺がこの人畜無害そうな顔した女子高生にいつでも殺せるようにしている理由がそこにあった。
ふぅと吐く息は冷たく、少女がぶるりと震えた。
「スターフェイズさんでしたっけ、それで…何を知りたいんですか」
「話が早いようで助かるよ。何、別に難しい話ではないよ…君を調べさせてもらった」
その一言で彼女の表情が怪訝そうな顔から呆れるような顔に変わった。
予想と違う反応に俺の方が眉をひそめた。
鼻で笑うようにこちらを見て彼女は口を開く。
「それで…何かわかりましたか?」
「………」
「何も出なかった、ですよね」
「その通りだ。”何もでなかった”これが答えだ。だからもう一度問う。お前は何者だ」
パキパキッという音が部屋に響くと室温が急激に下がった。
少女の両足が氷で包まれ椅子に固定されていく。
吐く息も白く、普通の人間ならばパニックを起こすだろう。
しかし目の前の少女は動揺をする事もなく、ただそれを受け入れていた。
彼女は悲し気に微笑みながら、人差し指をそっと口へと当てた。
「今から私が何をしても騒がないでくださいね。決してあなたを傷つけません」
足は氷で固定してある。
彼女が攻撃動作をしたとしても一瞬で凍らせる自信はある。
何をする気なのか全くわからないが最後まで見てやろうと決めた。
右手をそっと右太ももに這わせると色白で健康的な足にはにつかわない黒いレッグホルダーがちらりと見えた。
そして小さな手で銃を取り出し、そっとこちらに見せる。
銃にはS.E.E.Sの文字。見た事のない組織名だ。
そして彼女は微笑みながら自分のこめかみへと銃を持っていく。
そこからはスローモーションのようだった。
拳銃自殺のような姿が目から離れない。
トリガーの指がゆっくりと動く。
「ペルソナ」
彼女がそう呟くとゴーストとは違う、神々しさを感じる何かが現れた。
それと目が合い、口を開くも声が出ることはなかった。
「この子の名前はオルフェウス。スターフェイズさんにも”視える”んですね」
いつの間にか固定していたはずの足の氷は解け、彼女は立ち上がった。
「私は決してあなたに敵対する存在にはなりません。ただ帰り道が知りたいだけなんです」
先程まで顔色悪く震えていた少女はそこにはいなかった。
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