prayer[P3→BBB]
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「で、君は一体何者なんだい?」
「えぇ・・・ただの、女子高生…?」
「どうしてそこで疑問系になるんだ…」
あれから色々あって私は今目の前の高身長スーツさんに尋問されている。
ここエアコン効きすぎじゃない?え?エアコンじゃない?
じゃあどうして私の肌はこんなにピリピリと冷え切ってんですかね。
目の前の顔がいいが性格はさっぱりわからんお兄さんから冷気が漏れているのは気のせいだと思いたい。
どうしてこうなってしまったのか、話は昨日に遡る。
病院内の床に散らばる磯臭いビチビチとした触手。
びちゃり、という生々しい音と液体の飛び散る音。
その奥で赤い刃が目にも留まらぬ速さで動く。
その刃が動くとまたひとつ、びちゃりと不快な音が増える。
その時、私の脳みそがブツリと切れる音がした。
そう思った時には既にホルスターの召喚器を頭へと向けていた。
「っ、ばっ!!」
「―我は汝、汝は我」
褐色お兄さんが驚き、戸惑う声をあげながら私を見る。
今更遅い。
誰が!この!触手を!片付けると思ってんだチクショー!?
決意と共にトリガーを引く。
我は汝の心の海より出でし者……幽玄の奏者「オルフェウス」なり
異世界でも私のペルソナはしっかりとそこにいた。
何度かこちらの世界で試した事はあったが、やはり召喚する度本当に出てくれるか不安にはなる。
しかしオルフェウスはそこにいてくれた。
赤いスカーフを揺らめかせ、背中の竪琴がキラリと光った。
その姿に安心した私は口を開く。
「あんた"達"、反省しなさい・・・マハラギ!」
「「は?」」
ゴォっという音と共に突然の火柱が上がった。
そんなこんなで、こんがりと焦げた二人を病室へと運び(適当に治療して)事なきを得た。
まあ、結局掃除は私がする羽目になったが…。
その現場を見ていた魚類の人は驚き戸惑いつつも常識のある人らしく掃除を手伝ってくれた。優しい。
「なんだか手伝わせてしまって申し訳ないです」
「いえ、こちらこそ病院内でご迷惑をおかけしてしまって…」
「いやいや!〝こっち〝に来てからあなたのような常識的な人に会えたのは初めてなので…なんかもう、泣きそう…」
「〝こっち〝?というと、外から?」
「あー、そうですね。〝外〝です?」
そうだった。
外の世界、本来あるべき世界。だがそこは私のいた世界ではない。
思わず口が滑りかけてしまったが、今いる環境もまた特殊だ。
このヘルサレムズ・ロッドという異界。
青い扉から飛ばされ、数週間が経ったが未だにこの世界を把握できていない。
いや、把握しようにもあまりにも現実離れしすぎていて理解が追い付いていない。
だからこそ、今私の目の前に転がっているよくわからない触手にも無の境地で掃除ができていると言えるだろう。
ベルベットルームだとかタルタロスとか影時間とか、いろんな経験はしてきたが触手を掃除なんて人生においてもう二度と、というか一生経験したくない。
「――あの」
私がとんでもなく死にそうな顔をしてるのを見かねたのか、彼が声をかけてきた。
「よければ名前を伺っても?」
「ああ、失礼。私は苗字なな子です」
「苗字なな子さん、日本の方でしたか?」
「ええ、そうです。なな子とでも呼んでください」
「ありがとうございます。僕はツェッド・オブライエン。日本には興味があるのでよければ今度お話を伺っても?」
「私の知ってる知識内でしかお話できないけど…それで良ければ」
「僕の偏った知識ではなく、本当の日本を知るいい機会なのでそれはとても楽しみです」
―――プルルルル
甲高い機械音が会話をさえぎった。
ツェッド君が慌ててポケットを探り携帯端末を取り出し通話を始める。
慌てたように会話をし始めたので、聞いては悪いと思いそっと掃除用具をもってその場を後にした。
まぁ、また会う機会があれば会えるだろう。
こんな異界でこんな辺鄙な病院だ、もう二度と会えないかもしれない。
そう思い、別れたのはつい昨日の話だった。
そして今。
私は何故かもう二度と会えないかもしれないとお別れをした筈のツェッド君の謝罪と共に、治療済みの褐色君と手術を終えた黒髪ボーイのいる病室で見知らぬ高身長スーツに尋問を受けていると言うわけだ。