prayer[P3→BBB]
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「はいはい、お兄さんどうしましたかー、はいはい左腕がもげたのね。はーい。痛い?うんうんわかったわかった。順番だからねー、このタグ右腕に付けてそっちに座って待っててねはい次ーなになに鉄骨が貫通した?ふんふん、なるほどなるほどじゃあこれ腕につけて待っててねーはい次ー」
次々と運ばれてくる患者に医療用タグをぺたぺたとつけていく。
何故こんな事をしているのか。
説明すると長いが・・・あの日私は塔から落ち、死んだと思った。
しかし死んでなんてなかった、生きていた。
私を助けてくれた先生曰く、院内に突然青い扉が現れそこから投げ飛ばされるように血まみれで腹に大穴を開けた私が飛び出してきたというのだ。
その後青い扉は霧のように消え、あれから一度も姿を現す事はなかったと言う。
色々ありながらも患者として治療をしてもらえた訳だったが、帰る当てもお金もない私はなんやかんやあってこうしてここで働かせていただいてるというわけだ。
このブラッドベリ総合病院はなんとも言えない特殊な環境だった。
来る患者も、人だったり人みたいなのだったり人を辞めてるのまで様々だ。
常識なんてものは一晩で吹き飛んだ。
そして何より私を助けてくれたルシアナ先生。
彼女の見た目も・・・・・・否、普通の女医だ。うん。ちょっと個性的なだけだ。
「なな子くーん」
「あ、ルシアナ先生、どうしました?」
受付のカウンターにぴょこんとあほ毛だけが見えた。
ルシアナ先生の背丈は子供のように小さい。というか見た目がまんま子供。
そしてそのルシアナ先生の後ろを"もう一人のルシアナ先生"が駆け回っている。
そのまた後ろにもルシアナ先生が。
ルシアナ先生はそういう"体質"らしい。
分裂した姿を見るのにもようやく慣れてきたような気もするが・・・やはり時々頭が混乱しそうになる。
そんな事を考えているといつの間にかカウンターによじ登ったルシアナ先生と目が合った。
「君、ちゃんと休憩とってるかい?」
「もちろんですよ!先生こそ全然休んでないじゃないですか!」
「ああ、私は大丈夫。休憩担当がいるから!」
「えー・・・」
「私は医者だから、自分の体調管理はできるけどね。君はこの間まで患者だったんだから、無理はだめだよ!」
それじゃあ、とまた走り出し消えていった。
ルシアナ先生を見送り、何人かの患者を受け付けていた時に事件は起きた。
入り口から慌しく駆け込んでくる人がいた。
くしゃくしゃ頭の小さな少年を抱えた褐色肌の男と異界人の3人組。
抱えられた少年は頭から血を流し顔面蒼白で多分このまま放置したら死ぬ。
「やべえええええええええええええ番頭にこっ!ろっ!さっ!れっ!るっ!おい陰毛死ぬな!!死ぬなよ!!死ぬなら!!俺が国外逃亡してからにしろ!!!!!」
「貴方って人は・・・病院内は静かにしてください!」
「うるせえ魚類!!番頭の怖さはお前だって知ってんだろ!?」
「あのすみません、院内はお静かにお願いします・・・」
「なんだおめぇ、ガキに用事は・・・いや白衣って事は関係者か!」
「ええ、まあ・・・こちらの方は頭部損傷っと・・・コチラの方はヒューマンでお間違いないです?」
「なにのんびりメモしくさってんですかねこのお嬢ちゃんはー!!病院ごっこなら今はしてらんねえんだよ!早く医者ーーーっ!」
ぎゃーぎゃー騒ぐ褐色肌の男に困りつつも、医療用タグを貼り付けヒューマン用の対応をしようとした矢先だった。
「おや、レオ君にザップ君じゃないか久しぶり~」
「せんせえええええ、死ぬ!レオ死ぬ!!」
「わかったわかった。なな子君、このヒューマンは急患だ。ストレッチャー!」
「はーい!」
何番目かわからないルシアナ先生がレオ君の様子を見るや否やオーダーが入った。
異界人と違いヒューマンは脆い。
緊急性が高ければ治療の優先順位が変わるのはよくある話だ。
私は慌ててストレッチャーを用意し、レオと呼ばれる少年をゆっくりと乗せた。
「先生、オッケーです」
「じゃ、あとは任せて~」
いつの間にか分裂したルシアナ先生が4人程集まりだし、猫の手もいらない状態になっていた。
緊急治療室のある方へと運ばれて行くの見送り、褐色肌の男と異界人の人もほっとしたのか近くの椅子に座っていた。
さて私も自分の仕事に戻ろう。
「ちょっとお嬢ちゃん。どういうこった」
「え?何がです?」
突然後ろから声をかけられた。
振り返ると先程対応した異界人の姿だった。
私の背丈よりも何倍もある大きな男で、表情は種族的に読み取れないが身体から伸びている触手が床をビタンビタンと叩いてる様子から彼がキレ気味なのはよーくわかった。
「俺のこのもげた腕より、あんなひょっろいヒューマンの方が優先って意味わかんねえんだけど?俺の方が先に来てたじゃねえか」
「そう言われましても、ヒューマンは脆いですからねぇ・・・お兄さんは身体強そうだし、このくらいかすり傷ですよね!」
「そりゃ俺の方があんなミジンコヒューマンより強いのはわかるけどよー、順番ってもんがあるじゃねえか?」
「そう言われましても・・・」
どうしたもんか、と思いつつも左手は太ももにつけてるホルスターへと手を伸ばす。
そこには私がこちらに飛ばされた時に所持していた数少ない道具のひとつでもある"召喚器"を身に付けてある。
こちらに来てから何度か試しに召喚をしてみたが、影時間も何も関係なしに召喚ができた。理由は未だに不明だけど。
黙り込む私に痺れを切らしたのか男が私の腕を掴もうとした。
が、その腕は褐色肌の男の手で阻止された。
「おいおいおいおい、タコだかイカだかわっかんねぇ見た目のやつがなーに病院に来てんだぁ?あぁ?お前の行くとこは海だろ海!もしくはスシだなお前!」
「あ?んだおめえ?」
「スシも悪くねえが・・・ジャパニーズタコヤキってのも悪くねえんじゃねえの?」
「おいおいおサルさんが何か言ってんなあ?寝言か?」
褐色さんは赤い刀のようなものを ―どこから取り出したのかわからないが― 片手で、イチャモンつけてきた異界のお兄さんは身体から触手なようなものが伸びてきて ―どこから生やしたお前は― お互いの動きが止まった。
一触即発かと思いきや、次の瞬間異界のお兄さんの触手がずるりと増えた!
一度にたくさんの触手が不規則に褐色のお兄さんを襲ったが、赤い刀は目にも止まらぬ速さでその触手を切っていく。
もちろん切られた触手は床にびちゃりと落ちていった。
いや、いやいや。
これ誰が掃除すると思ってんですかね?!
嫌ですよ私これ触るの!
びっちびっちと未だに蠢いてるそれを見て私は決意した。
私が止めねば誰がやる。
「―我は汝、汝は我・・・・・・・・・」
ホルスターから召喚器を取り出し、そっと頭に向ける。
褐色のお兄さんの叫び声が聞こえた。
そりゃそうよね、銃口頭に向けてたら普通はそうなる。私もそう思う。
でもこれは決意の証。
「ペルソナ!!」