〈long〉クヴァールの瞳
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髪、良し。
メイク、良し。
服、皺になってない・・・良し!
その日、なな子はカフェの化粧室で神経質なまでに身支度を整えていた。
ふぅと一息つき、緊張した顔で化粧室から出て席に戻る。
腕時計に目をやると約束の時間まであと30分。
注文していたアイスコーヒーはもう既に氷も解け、グラスは汗だらけだ。
一口だけ飲む。
緊張しているせいか、今のなな子には味がよくわからなかった。
この緊張をどうにかしたいが為に、電脳でネットにアクセスし今日行く予定のお店をチェックする事にした。
暑い外とは裏腹、エアコンをガンガンに利かせた車内。
バトーとトグサはなな子がいるカフェの近くに車を停め見張っていた。
バトーは手にビールを持ち、トグサは缶コーヒーを手に持っている。
隣でビールを飲む男を恨めしそうに見ながら、冷えた缶コーヒーを一口飲む。
「いいよな、旦那は・・・アルコール分解できるからって仕事中に飲むなんて・・・」
「お前も義体化するか?」
「俺はこれでいいの!」
ニヤニヤと笑いながら2つ目のビールの蓋を開ける。
プシュっと音とゴクゴク、と飲む音がトグサの耳に届く。
ため息をつこうかと思った矢先、電脳通信が入る。
「《トグサ、何か動きはあった?》」
「《特に何も・・・ただ、身嗜みを頻繁に気にしているので恐らくこれから誰かと接触するようです》」
「《男じゃねーの?あんなに可愛い格好しちゃって》」
「《あ、誰か来たようです》」
いよいよかと監視カメラの映像に集中した。
現れた男の正体があまりにも見慣れた男の姿で車内に二人分の叫び声が響いた。
「待たせたな」
「い、いえ全然!」
電脳にアクセスしていたせいで一瞬反応が遅れた。
なな子の目の前には先日助けてもらったサイトーの姿があった。
そのままなな子の向かいの席に座る。
「お店なんですけど、予約が20時にしかとれなくて・・・」
サイトーはそっと時間を確認する。18時と数秒。
「・・・まだ時間があるな」
「まさかそんなに予約が取れにくい店だとは思ってなくて・・・ごめんなさい。あの、ご迷惑でしたら別のお店に・・・」
「気にするな。そうだな・・・嫌でなければ、少しドライブでもどうだ?」
「え、あ、はい!」
サイトーが提案をしてくれたのだから、断るのも失礼かと思ったなな子は密室になる車内というのを忘れて返事をしてしまった。
「(って、ドライブ!?)」
なな子の表情の変化に笑いそうになるのを堪えながらサイトーは駐車してある車の元へ向かった。
「「えええぇぇぇぇええぇぇ!」」
「《・・・どうした》」
「《いやどうしたって、少佐知ってたんですか!柘植なな子の今日の接触相手がサイトーだって事!」
「《・・・何?》」
「《別に監視カメラの映像はすり替えもないし、肉眼で歩いてる所も確認した。ありゃ間違いなく本物のサイトーだな》」
「《そう》」
「《そう、って少佐ァ!知ってたなら教えてくださいよ!心臓に悪い・・・》」
「《いえ、私も知らなかったわ》」
二度目の爆弾に二人は開いた口が塞がらなかった。
素子の声も心なしか楽しそうに思えた。
「《サイトーにも何か考えがあっての接触でしょう。そのまま距離を保ちながら監視を》」
「「《了解・・・》」」
「旦那、サイトーがハニトラすると思う?」
「そりゃパズの担当だろ・・・」
「だよなぁ・・・」