〈long〉クヴァールの瞳
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目が覚めた。
飾り気のない白い部屋。
消毒液の匂い。
「・・・・・・・・・病・・・院?」
倒れる直前の記憶を遡る・・・が、記憶が曖昧で再生されない。
電脳の痛みは落ち着いたようだった。
左腕には点滴が刺してあった。
一体いつから点滴をしていたのか、それすらわからない。
右腕には先程の男に掴まれた部分が少し赤くなっていた。
身体を少し起こし、周りを見渡す。
カーテンは閉まっているが、既に外は暗く部屋の外からも人の声はしない事からあれからだいぶ時間が経過してしまったのを覚った。
ナースコールを鳴らそうかと悩んでいるうちに病室にノック音が2回響いた。
どうぞ、と言う前に戸は開かれた。
戸を開けた人物をなな子は知っている。
なな子を助けてくれた眼帯の男だ。
男もまさかなな子が目を覚ましているとは思っていなかったようで、少しだけ驚いた顔をしていた。
もちろんなな子も驚いた顔をしてしまっていたが。
「目が覚めたみたいだな」
「は、はい・・・あの、助けていただいてありがとうございます」
「気にするな。それより、気分はどうだ?突然目の前で倒れたからな、慌てて病院まで運んだが・・・」
「あぁ、はい、もう大丈夫です。時々、電脳が痛む事はあったんですけど・・・気を失う程酷いのは今回が初めてで・・・ご迷惑おかけしてしまって申し訳ありません・・・」
なな子を気遣う言葉に慌ててお礼を述べると、気にするなと言いながらベッドへと歩み寄った。
「電脳が、痛む?」
男は不思議そうな声を出しながら近くにあった丸椅子に座った。
「えぇ。電脳が変な感じになったのは中学生の頃だったんですけど・・・医者からは特に異常は見当たらないと言われまして。でもここ最近になって、何故か電脳がちりちりと言うか・・・」
ほう、と男は興味深そうに話を聞いているから、なな子も思わずぺらぺらと喋っていた。
『―いいかいなな子、あまり人前でその話をしてはいけないよ』
『どうして、お父さん?』
『それは―――』
幼い頃の記憶が蘇る。
しまった、と思った。
「い、え・・・でも、ほらあの、別に死ぬ訳でもなさそうですし」
あははと笑った、つもりだった。笑えているだろうか。
男は深くは追求して来ず、ただ黙って聞いていた。
なな子は無言の空気が酷く恐ろしく、何か会話をしなければと焦っていた。
そうだ、自己紹介をしていなかった!
ハッとしたようにきょろきょろと見渡し、使い慣れた仕事用の鞄を見つけ、その中から名刺を取り出した。
「あの、ご挨拶が遅れてしまって申し訳ありません。柘植 なな子と申します」
「ああ・・・すまんな、仕事柄名刺なんてものはなくてな・・・サイトーだ」
「(仕事柄、名刺を持たない・・・これはつまり、カタギの仕事では・・・ないんじゃ・・・!)」
なな子はじわりと背中に汗をかいた。
―――私は今笑えているだろうか。
飾り気のない白い部屋。
消毒液の匂い。
「・・・・・・・・・病・・・院?」
倒れる直前の記憶を遡る・・・が、記憶が曖昧で再生されない。
電脳の痛みは落ち着いたようだった。
左腕には点滴が刺してあった。
一体いつから点滴をしていたのか、それすらわからない。
右腕には先程の男に掴まれた部分が少し赤くなっていた。
身体を少し起こし、周りを見渡す。
カーテンは閉まっているが、既に外は暗く部屋の外からも人の声はしない事からあれからだいぶ時間が経過してしまったのを覚った。
ナースコールを鳴らそうかと悩んでいるうちに病室にノック音が2回響いた。
どうぞ、と言う前に戸は開かれた。
戸を開けた人物をなな子は知っている。
なな子を助けてくれた眼帯の男だ。
男もまさかなな子が目を覚ましているとは思っていなかったようで、少しだけ驚いた顔をしていた。
もちろんなな子も驚いた顔をしてしまっていたが。
「目が覚めたみたいだな」
「は、はい・・・あの、助けていただいてありがとうございます」
「気にするな。それより、気分はどうだ?突然目の前で倒れたからな、慌てて病院まで運んだが・・・」
「あぁ、はい、もう大丈夫です。時々、電脳が痛む事はあったんですけど・・・気を失う程酷いのは今回が初めてで・・・ご迷惑おかけしてしまって申し訳ありません・・・」
なな子を気遣う言葉に慌ててお礼を述べると、気にするなと言いながらベッドへと歩み寄った。
「電脳が、痛む?」
男は不思議そうな声を出しながら近くにあった丸椅子に座った。
「えぇ。電脳が変な感じになったのは中学生の頃だったんですけど・・・医者からは特に異常は見当たらないと言われまして。でもここ最近になって、何故か電脳がちりちりと言うか・・・」
ほう、と男は興味深そうに話を聞いているから、なな子も思わずぺらぺらと喋っていた。
『―いいかいなな子、あまり人前でその話をしてはいけないよ』
『どうして、お父さん?』
『それは―――』
幼い頃の記憶が蘇る。
しまった、と思った。
「い、え・・・でも、ほらあの、別に死ぬ訳でもなさそうですし」
あははと笑った、つもりだった。笑えているだろうか。
男は深くは追求して来ず、ただ黙って聞いていた。
なな子は無言の空気が酷く恐ろしく、何か会話をしなければと焦っていた。
そうだ、自己紹介をしていなかった!
ハッとしたようにきょろきょろと見渡し、使い慣れた仕事用の鞄を見つけ、その中から名刺を取り出した。
「あの、ご挨拶が遅れてしまって申し訳ありません。柘植 なな子と申します」
「ああ・・・すまんな、仕事柄名刺なんてものはなくてな・・・サイトーだ」
「(仕事柄、名刺を持たない・・・これはつまり、カタギの仕事では・・・ないんじゃ・・・!)」
なな子はじわりと背中に汗をかいた。
―――私は今笑えているだろうか。