〈long〉クヴァールの瞳
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目の痛みで意識が浮上した。
しかし霧がかかったように意識は朧げだ。
「あ…あれ…?」
瞬きを何度もしているが目の前が真っ暗だった。
部屋が暗い?
視界に何も映らない事を怯え、不安に手を伸ばすも何も掴む事はなかった。
「お父さん…」
「ああ、なな子…すまない…大丈夫かい?」
「お父さん、いるの?暗くて何も見えなくて…」
「ここにいるとも」
そっと父の手が私の手を握る。
それだけで今目の前に広がる暗闇への恐怖が薄らいだ。
「今頭痛はしているかい?」
「少しだけ…でも今は目が痛いの…」
父は私の言葉を譫言のように繰り返しながら、部屋を歩く音が聞こえる。
「ねぇお父さん、ここはどこ…?」
「大丈夫…もうすぐだよ」
もうすぐ、もうすぐ…繰り返される父の声が呪詛にように思えて背筋がぞくりとした。
それと同時に腕にちくりとした痛みが走った。
身体の中に何かを注入されていく感覚がする。この感覚、注射だ。
それと同時に体がどんどんだるくなっていく。
「やめて…なにするの…やだ…」
「大丈夫…怖くないよ」
「やだよ、お父さん!やめて!何でこんな事するの…」
「お前の為なんだよ」
「私の為…?」
「お前の瞳はね、特別なんだ」
「瞳…?何言ってるの」
「小さい頃の事を覚えてるかい?」
「…事故にあったって事くらい…」
「そうだ。なな子の瞳はね、あの時失われたんだよ」
「えっ…そんな事誰も…」
「そうだろうね。誰もお前に本当の事を教えてあげなかったんだ…私はね、そんなお前の為だけにその瞳を作ったんだ。義眼に見えない本物そっくりの瞳だ!」
「何…何の話…?お父さんが何を言ってるのかわかんないよ」
「だがもう限界みたいだ…熱を持ち始めてる。このままじゃいけない…だから」
途中から会話が会話にならなくなった。
専門用語ばかりで何を言ってるのか理解ができないのだ。
ただその中からわかるのは、私の瞳は既に限界を迎えている。
摘出をしなければならないという事だった。
身体も徐々に動かなくなってきた。
「(サイトーさん…)」
「《―――えるか…――なな子!聞こえるか!!》」
「!!!《サイ…トー…さん?》」
「《今どこだ!どこにいる!》」
「《わかっ、わからないんです!…私このまま父に手術されるみたいで…もう何も、何も見えないんです…身体も動かなくて…》」
「《なっ!?》」
「《――も…最…サイトーさんの声が…けて…よか…っ――》」
+ + +
「《おい、おいなな子!》」
家に乗り込み、電脳通信を試みたが何かに阻害されているようで中々繋がらない。
そんな中でほんの数秒繋がったがなな子がピンチだという事しかわからなかった。
募る苛立ちに家の中を捜査する手が乱暴になっていく。
「どうした」
「柘植に拘束されてるらしい。手術されるとも言っていた…クソッ」
「手術…そうなるとそれだけの設備が必要になるな」
「しかも家からは一歩も出ていない…どこだ、どこかに隠し部屋があるはず」
「《パズ、サイトー聞こえるか》」
「《少佐か、今家に乗り込んだ》
「《そのようね》」
「《通信阻害がされてるらしくてなな子との通信は数秒が限度だった。居場所に関しては何もわからないが、手術をされると本人は言っている。時間がない》」
「《手術、ね…詳しい話は後でしてあげる。今は居場所を探すのが優先よ》」
「《手当たり次第探してるが…》」
「《もうすぐそっちに強い援軍が行くわよ》」
「援軍…?」
「サイトー、パズ、待たせたな」
「バトー!」
「僕もいるよ!」
「タチコマ!」
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