〈long〉クヴァールの瞳
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結局電脳を調べるのは中断、なな子は解放される事となった。
入り口に柘植が向かえに来ると上から連絡があり、そこまで素子と課長でエスコートした。
下に降りると道路には見慣れない黒い車が止まっていた。
「お父さん!」
「なな子、怖かっただろう・・・もう大丈夫だからね、さあ帰ろう・・・」
父と呼ばれた男 ― 柘植吉春 ― は慌てて車を降り、なな子に駆け寄った。
なな子もほっとした表情になっている。
親子は何か会話をしている様子だが距離をとっている素子には何を話しているのかまでは聞き取れなかった。
しかしその男の睨み付ける表情で彼の九課に対する態度はよくわかった。
なな子は先ほどまでのほっとした表情から困ったような顔へと変わり、チラチラと素子の顔を見ていた。
そして二人は車に乗り込みその場を後にした。
「あれが柘植吉春、ね・・・怪しいなんてもんじゃないわ」
「そう思うなら・・・証拠をつき付けてやれ」
「その通りね・・・《サイトーとパズは今の車を尾行後、家の監視。バトーとトグサは例の研究所を調べろ》」
「「「「《了解》」」」」
+ + +
慣れない環境での緊張の疲れもあってか、嗅ぎ慣れた匂いにほっとし車のシートに背中をゆっくりと預けた。
車特有の心地よい振動にまどろんでいると父が口を開いた。
「なな子、怖かっただろう」
「怖くないって言ったら嘘になるけど、でも大丈夫・・・」
「無理はしなくていいんだよ。お父さんはなな子の味方なんだから」
味方、その言葉でなな子の脳内に素子の顔が浮かんだ。
「うん、お父さんありがとう」
そんな話をしているうちに、家に到着した。
部屋に戻り、ほっとする前にドアの鍵をかけた。
ベットにカバンを放り投げ、PCを起動すると適当に曲を再生する。
最近流行の曲がやや大きめの音で流れ始めた。
窓からちらりとカーポートを見ると、父はまだ車内にいた。
家に戻る前に今回の件でお礼を言わないといけない人がいると言っていたから、おそらくその対応だろう。
あの様子なら暫く戻らない。
ごくり、と緊張で喉が鳴った。
部屋中にあるコンセント、時計、部屋の電気と怪しい場所を次々と調べていった。
素子の言葉をひとつひとつ思い出しながら。
+ + +
『今、あなたの周りで色んな事が起きている。ただ、それが何かまでは詳しくは話せない。だから、あなた自身で自分の身を守るのよ』
『守るって言ったって・・・』
『別にあなたに肉体的にどうこうしろって言ってる訳じゃない』
『どういう事ですか?』
『"あなたの情報"を守りなさい』
『情報?』
『そう。例えば部屋に盗聴器がないか、とかね―――』
「(それらしいものはない、か・・・やっぱり、素子さんの思い過ごしなんじゃ・・・)」
ふぅとため息をつき、ベットに腰をおろした。
その時、ベットにおいてあるクマのぬいぐるみと目が合った。
「・・・」
『盗聴器を探すコツとかあるんですか?』
『そうね、定番なのはコンセント周りの電源がとれる場所が多いわ』
『なるほど・・・じゃあ電化製品を中心に探せばいいんですね』
『基本はね。ただし、特殊な場合もあるわ』
『例えば・・・?』
『贈り物…例えば、ぬいぐるみの中…とかね』
+ + +
「まさかね」
思わず声が震えた。
そっとぬいぐるみに手を伸ばした。
震える手でぬいぐるみを掴み、机に腰掛けた。
引き出しからカッターを取り出し、ゆっくりとぬいぐるみのお腹に刃をいれようとした時だった。
電脳からのコール音だ。
慌てて意識をそっちの向けると勤め先からだった。
「やば…!」
職場への連絡をすっかり忘れていた。
よく見てみると何度も職場からのログがあった。
慌てて電通をオンにしたがそこから流れてきたのは機械的な音声だけだった。
「《無断欠勤による通告無視、解雇通知無視。音信不通の為解雇》」
「は…?」
最悪だ。