〈long〉クヴァールの瞳
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ふとした時に見える映像が何なのか、わからなかった。
断片的な記憶。
中学生になったあたりから見え始めた、謎の映像。
自分以外の誰かの電脳、読み取れない文字の羅列。
誰かの声と崩れ落ちる瓦礫、真っ白なくらいまぶしい光。
「苗字さん・・・?大丈夫?」
「あっ、えっ、っと・・・すいません、ちょっとぼーっとしちゃって・・・」
意識が戻ると、そこはいつもの見慣れた職場の風景だった。
乱雑なデスクに、飲みかけの冷たくなったであろうコーヒー、そして目の前には心配そうになな子を見る女上司の姿があった。
「ここのところ忙しかったからねぇ・・・無理しないで早退してもいいのよ?」
「いえ、早退する程では」
「そうかしら・・・顔色もあんまり良くないようだし・・・」
「じゃあ・・・今日は定時で上がりますね?」
「そうね、無理だけはしちゃだめよ?」
わかりました、と返事をすると上司は席へと戻った。
確かにここのところ電脳の調子があまり良くない。
昔から見える謎の映像は未だに原因不明だったが、電脳がちりちりと焼けるような痛みが出てきたのはここ最近だった。
「お先に失礼します」
「はーい、柘植さんゆっくり休んでね」
「大丈夫ですよー、それではお疲れ様でした」
軽い挨拶を済ませると、なな子は職場を後にした。
職場では大丈夫と言ったが、未だにずきずきと痛む。
「(うぅ、仕事にまで影響出るんじゃなあ・・・今度検査入院でもしてみようかな・・・)」
考え事をしながら歩いていたせいか、前からくる人影に気づかずぶつかった。
「っ!」
ぶつかった相手との体格差に思わず尻餅をついた。
いてて、と思いつつも目の前の人影に目を向けると自分よりも大きな体に、柄の悪い雰囲気の男がいた。
何やら大声で怒鳴っているようだがあまりの口の悪さに何を言っているのかわからなかった。
怒鳴り声と電脳痛と相まって理解できないだけかもしれない。
―――今日はついてない日だなぁ・・・。
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