この恋を掘り返すのは何回目
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何故か気分が優れなくて、ぐだぐだと教室に残り続けていたら、時刻は16:45。いつもならこの時間には家でごろごろしていたり、課題をしていたりするのだけれど、何もやる気が出ない。そんな梅雨に入る少し前の事。
「……あ、そうだ」
教室で自分の机にただただ突っ伏していた私は、リフレッシュ方法を思いつき屋上へ足を進める。こういう時に限ってすぐに動ける行動力の高さは長所だと思う。
気候がいいからか、入学してからの屋上は賑わっており、昼食時にはあまり行きたくないスポット第二位に食い込んでくる。もちろん第一位は食堂である。物珍しさからか、私と同じ青の上履きの学生たちが多いのだ。
「…あ、まって、鍵」
階段を二段飛ばしで意気揚々と駆け上がったものの、下校時刻には屋上に鍵がかかっていることを今更ながら思い出した。職員室は一階、屋上はもちろんのこと最上階であり、正直往復するのは本当に面倒臭い。けれど、一度思いついたリフレッシュ方法だ。そんなことで諦めるほど、私は諦めが良くない。
開いててくれ〜。
そう願いながらドアノブに手をかけて扉を押すと、すんなりとその扉は開いた。ビンゴ。
「…らっきー」
静かに扉を開けては閉め、すーっと深呼吸をして空気を吸い込む。まだ梅雨にも入っていないが、階段を駆け登ったせいで若干汗が滲んでおり、暖かな空気が体を通り抜けていく。心地よい感覚に満足したあと、手すり近くまで歩くと、グラウンドの中央で練習する野球部とその周りを走る陸上部、プールサイドにて綺麗に整列しながら顧問の話を聞く水泳部の姿が見えた。
「がんばってるなぁ」
そんな私は大した部活にも入っておらず、全くと言っていいほど活動のない文化系の部活に入っている。しかも、友人もいるし取り敢えず入っておこう、という舐めた態度での入部理由であった。
ここ最近の無気力感は頑張りのなさからのものであったのだろう。中学の時はそれなりに忙しい部活に入っていたし、それとなく忙しい生活を過ごしていた。
もっと、頑張らなきゃなぁ。と思っても、一体何を頑張ればいいのかが分からなかった。勉強?趣味?高校一年生にしてこんなことを考えているのは私だけなのだろうか。
自分を卑下するかのように出た溜息に落ち込んでいると、不意に後ろから声をかけられた。
「なにしてるの」
「っひ………って、あ、こ、こんにちは…?」
びっくりした。
慌てて後ろを振り向くと、そこには扉付近で座っている銀髪の男の人がいた。さっきは死角になっていて、彼の存在に気づくことができなかったのだろう。よく考えれば、屋上の鍵が開いているということは先客がいるということなのだが。
彼の上履きの色をみれば、彼の瞳と同じ色をした赤色で、瞬時に二個上の先輩であることがわかった。
「屋上、好きなの?」
「え…?まぁ、そうですね」
気分転換にちょっと…と作り笑顔で答えると、彼は立ち上がりこちらまで歩いてきた。初対面の人と話すことは決して苦手ではなく、いつも完璧な愛想を振りまいているつもりだが、何故かいつもより口角が上がりにくい。
決してパーソナルスペースが広いわけではないし、普通の人よりかは狭い自信もあるが、何故か彼とは距離をとりたくなった。
そんな本能から、彼との距離をバレないように離す。伸びをするためだと言わんばかりに、ごく自然に一歩遠のく。彼の近くにいると、なんだかそれだけで緊張してしょうがないのだ。
「アンタ、なんか悩んでる気がするし」
「………え〜?いやぁ、私ほど悩みない人とかいないと思いますよ?」
笑い混じりにそう答えながらも、彼に作り笑顔を向けると、深い臙脂色の瞳とぶつかり、一瞬だけ目が泳ぐ。やば、と思った時には目が泳いだことを指摘され、思わず作り笑顔が崩れて苦笑いになる。
「…悩みがないことが、悩みっていうか」
「中学の時はそれなりに、無意識の内に頑張ってたんですけど、なんか高校入ってからなぁんにもしてないなって」
彼から目を離し、手すりに体重を預けてグラウンドを見つめながらそう呟く。何故こんなことを初対面である彼に言ってしまったのだろう。けれど、彼の瞳からは逃れなさそうなそんな気がして、そんなことを考える前にダラダラと口から不安が溢れる。
「まぁ、こんな悩み贅沢なのかなぁって思いますけどね。現に、今部活頑張ってる人みたら、こんな事言えないです」
またヘラリと笑って誤魔化そうとすると、彼は無言で私のことを見つめてくるものだから、居心地が悪くなってまた彼から視線を外す。どうにも、私は彼の瞳が苦手みたいだ。
笑って誤魔化そうとするのは、アンタの悪い癖だと言わんばかりの瞳が少し怖い。何かあったら、笑おうとしてしまう癖をどうやら初対面の彼に見抜かれている。初めて顔を合わせた人間に、こうして弱点暴かれてしまうというのは、ちょっぴりというか、かなり不愉快だった。
「……あんまりよくわからないけど」
あれからしばらく口を開かなかった彼から出てきたのはそんな言葉だった。彼は私からグラウンドへ視線を移し、何も考えていないと言わんばかりの表情と声色で淡々と話していく。ようやく、彼の視線から逃れられるとほっとした。
「頑張ってるとか頑張ってないとか、アンタの物差しは厳しいみたいだし、やめれば?」
「……は?」
慰めでも罵倒でもないよくわからないその言葉に頭が真っ白になる。正直、何いってんだこいつ、としか思えなかった。そんな私にもお構いなく彼は言葉を続ける。
「アンタの頑張り、俺の物差しで測るなら頑張ってるに入るし」
慰めてくれているのだろうか。
「まぁ、そんなことで悩む暇あったら、早く帰ったほうがいいかも」
「え…?」
「多分今17:30とかだし」
屋上には時計がない上に外の時計は死角になっていて見えないので、正しい時刻は確認できないものの、空の色を見れば彼の言う通り、そのぐらいの時間帯であることがわかった。
「えっと、あの…励ましてくださって、ありがとうございました…?」
自分でもこんなに疑問符のついた感謝は良くないだろうと思ってはいるが、正直彼の考えていることが理解できない。けれど、決して私で遊んでいるわけではないのだろうと思えたので、この言葉が口から出た。
「アンタ、名前は?」
「…あ、神崎 芽衣です」
「ふうん。俺は武梨静」
武梨静。何度も心の中で唱えて、頭に染み込ませる。元々人の名前を忘れやすいから忘れたらどうしよう、と不安になったが、苗字は忘れても名前は忘れない気がした。彼の瞳と静という名前はどこか似ていて、繋がっている気がするからだろう。それかただの勘だろう。
「あの、私名前覚えるの苦手で…忘れたらまた聞いちゃうかもです」
またヘラリと笑ってしまい、あ、と思い直した頃には静さんとかちりと目が合っていた。けれど、さっきのような誤魔化しを見抜く瞳ではなく、どこか見守るような温かさが含まれていた。
「…そうやって媚びてくる笑顔は嫌いじゃない」
「悩んだらまたここ来たらいいし。俺がいつでも慰めてあげる…みたいな?」
そう言って、口角を少し上げて柔らかに笑う彼に、きゅう、と心臓が絞まる音がした。それに合わせて、ほんと少しだけ呼吸が止まる。それに耐えるかのようにして、下唇を軽く噛む。
やっぱり、どうにもこの瞳は苦手だ。
「……あ、そうだ」
教室で自分の机にただただ突っ伏していた私は、リフレッシュ方法を思いつき屋上へ足を進める。こういう時に限ってすぐに動ける行動力の高さは長所だと思う。
気候がいいからか、入学してからの屋上は賑わっており、昼食時にはあまり行きたくないスポット第二位に食い込んでくる。もちろん第一位は食堂である。物珍しさからか、私と同じ青の上履きの学生たちが多いのだ。
「…あ、まって、鍵」
階段を二段飛ばしで意気揚々と駆け上がったものの、下校時刻には屋上に鍵がかかっていることを今更ながら思い出した。職員室は一階、屋上はもちろんのこと最上階であり、正直往復するのは本当に面倒臭い。けれど、一度思いついたリフレッシュ方法だ。そんなことで諦めるほど、私は諦めが良くない。
開いててくれ〜。
そう願いながらドアノブに手をかけて扉を押すと、すんなりとその扉は開いた。ビンゴ。
「…らっきー」
静かに扉を開けては閉め、すーっと深呼吸をして空気を吸い込む。まだ梅雨にも入っていないが、階段を駆け登ったせいで若干汗が滲んでおり、暖かな空気が体を通り抜けていく。心地よい感覚に満足したあと、手すり近くまで歩くと、グラウンドの中央で練習する野球部とその周りを走る陸上部、プールサイドにて綺麗に整列しながら顧問の話を聞く水泳部の姿が見えた。
「がんばってるなぁ」
そんな私は大した部活にも入っておらず、全くと言っていいほど活動のない文化系の部活に入っている。しかも、友人もいるし取り敢えず入っておこう、という舐めた態度での入部理由であった。
ここ最近の無気力感は頑張りのなさからのものであったのだろう。中学の時はそれなりに忙しい部活に入っていたし、それとなく忙しい生活を過ごしていた。
もっと、頑張らなきゃなぁ。と思っても、一体何を頑張ればいいのかが分からなかった。勉強?趣味?高校一年生にしてこんなことを考えているのは私だけなのだろうか。
自分を卑下するかのように出た溜息に落ち込んでいると、不意に後ろから声をかけられた。
「なにしてるの」
「っひ………って、あ、こ、こんにちは…?」
びっくりした。
慌てて後ろを振り向くと、そこには扉付近で座っている銀髪の男の人がいた。さっきは死角になっていて、彼の存在に気づくことができなかったのだろう。よく考えれば、屋上の鍵が開いているということは先客がいるということなのだが。
彼の上履きの色をみれば、彼の瞳と同じ色をした赤色で、瞬時に二個上の先輩であることがわかった。
「屋上、好きなの?」
「え…?まぁ、そうですね」
気分転換にちょっと…と作り笑顔で答えると、彼は立ち上がりこちらまで歩いてきた。初対面の人と話すことは決して苦手ではなく、いつも完璧な愛想を振りまいているつもりだが、何故かいつもより口角が上がりにくい。
決してパーソナルスペースが広いわけではないし、普通の人よりかは狭い自信もあるが、何故か彼とは距離をとりたくなった。
そんな本能から、彼との距離をバレないように離す。伸びをするためだと言わんばかりに、ごく自然に一歩遠のく。彼の近くにいると、なんだかそれだけで緊張してしょうがないのだ。
「アンタ、なんか悩んでる気がするし」
「………え〜?いやぁ、私ほど悩みない人とかいないと思いますよ?」
笑い混じりにそう答えながらも、彼に作り笑顔を向けると、深い臙脂色の瞳とぶつかり、一瞬だけ目が泳ぐ。やば、と思った時には目が泳いだことを指摘され、思わず作り笑顔が崩れて苦笑いになる。
「…悩みがないことが、悩みっていうか」
「中学の時はそれなりに、無意識の内に頑張ってたんですけど、なんか高校入ってからなぁんにもしてないなって」
彼から目を離し、手すりに体重を預けてグラウンドを見つめながらそう呟く。何故こんなことを初対面である彼に言ってしまったのだろう。けれど、彼の瞳からは逃れなさそうなそんな気がして、そんなことを考える前にダラダラと口から不安が溢れる。
「まぁ、こんな悩み贅沢なのかなぁって思いますけどね。現に、今部活頑張ってる人みたら、こんな事言えないです」
またヘラリと笑って誤魔化そうとすると、彼は無言で私のことを見つめてくるものだから、居心地が悪くなってまた彼から視線を外す。どうにも、私は彼の瞳が苦手みたいだ。
笑って誤魔化そうとするのは、アンタの悪い癖だと言わんばかりの瞳が少し怖い。何かあったら、笑おうとしてしまう癖をどうやら初対面の彼に見抜かれている。初めて顔を合わせた人間に、こうして弱点暴かれてしまうというのは、ちょっぴりというか、かなり不愉快だった。
「……あんまりよくわからないけど」
あれからしばらく口を開かなかった彼から出てきたのはそんな言葉だった。彼は私からグラウンドへ視線を移し、何も考えていないと言わんばかりの表情と声色で淡々と話していく。ようやく、彼の視線から逃れられるとほっとした。
「頑張ってるとか頑張ってないとか、アンタの物差しは厳しいみたいだし、やめれば?」
「……は?」
慰めでも罵倒でもないよくわからないその言葉に頭が真っ白になる。正直、何いってんだこいつ、としか思えなかった。そんな私にもお構いなく彼は言葉を続ける。
「アンタの頑張り、俺の物差しで測るなら頑張ってるに入るし」
慰めてくれているのだろうか。
「まぁ、そんなことで悩む暇あったら、早く帰ったほうがいいかも」
「え…?」
「多分今17:30とかだし」
屋上には時計がない上に外の時計は死角になっていて見えないので、正しい時刻は確認できないものの、空の色を見れば彼の言う通り、そのぐらいの時間帯であることがわかった。
「えっと、あの…励ましてくださって、ありがとうございました…?」
自分でもこんなに疑問符のついた感謝は良くないだろうと思ってはいるが、正直彼の考えていることが理解できない。けれど、決して私で遊んでいるわけではないのだろうと思えたので、この言葉が口から出た。
「アンタ、名前は?」
「…あ、神崎 芽衣です」
「ふうん。俺は武梨静」
武梨静。何度も心の中で唱えて、頭に染み込ませる。元々人の名前を忘れやすいから忘れたらどうしよう、と不安になったが、苗字は忘れても名前は忘れない気がした。彼の瞳と静という名前はどこか似ていて、繋がっている気がするからだろう。それかただの勘だろう。
「あの、私名前覚えるの苦手で…忘れたらまた聞いちゃうかもです」
またヘラリと笑ってしまい、あ、と思い直した頃には静さんとかちりと目が合っていた。けれど、さっきのような誤魔化しを見抜く瞳ではなく、どこか見守るような温かさが含まれていた。
「…そうやって媚びてくる笑顔は嫌いじゃない」
「悩んだらまたここ来たらいいし。俺がいつでも慰めてあげる…みたいな?」
そう言って、口角を少し上げて柔らかに笑う彼に、きゅう、と心臓が絞まる音がした。それに合わせて、ほんと少しだけ呼吸が止まる。それに耐えるかのようにして、下唇を軽く噛む。
やっぱり、どうにもこの瞳は苦手だ。
