アルハイゼン
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「なんだ、ここは」
「いや、私が聞きたいんだけど」
「どうして芽衣がここにいる」
「いや私が聞きたいんだけど」
真っ白な部屋にたった一つの机。その上に紙が一枚置いているだけで、その他には何もないという殺風景な部屋である。そしていつの間にかアルハイゼンと芽衣はここに放り込まれていた、というわけだ。
「取り敢えず、そこの紙を読んでみよう」
「ふむ…」
見るからにとある建築科の人物の筆跡である紙には何やら長文で書かれているのだが、読むのすら面倒くさい。まぁつまり要約すると。
"僕が作った部屋から脱出したければ、出されたお題をクリアしろ"
というものだった。
「そのお題ってなに?」
「熱い抱擁だ」
「は?」
「…ん?熱い抱擁だ」
「………あ、うん、わかった」
平然としているアルハイゼンは芽衣の耳に聞こえなかったのかと思い二度言ったが、それは現実逃避を試みていた芽衣にとって急所をつかれたようなものだった。
「…ちょっと部屋の壁触ってくる」
こんな時旅人なら元素視覚で出口を見つけることができるのだろうが、生憎ここにあの二人はいないのだ。そんなことを思ってもしょうがないのである。
「……はぁっ!!!」
芽衣は身体中に力を張り巡らせ、元素力を壁に当ててみる。が、しかし反応はなく、ただ無駄に体力を消費しただけだった。アルハイゼンにも協力を頼もうとしても、彼は意味もなく身体や力を使用し、疲弊することを嫌っている。なんの悪びれも緊張も羞恥心もなく、熱い抱擁とやらを交わすだろう。
申し訳ないけれど私は仮にも女なのだ。そのようなことは避けたいし、出来れば他の方法を見出したい。
「芽衣、俺は早くここから出たい。早速実行しよう」
本当にやめてほしい。そう願った彼女はそれとなく彼の意識を別の方向へと逸らせないかと検討する。
「………アルハイゼン、これってカーヴェの思うツボでは?」
「あいつの思うツボであろうがなかろうが、俺は気にしない。そんなことよりも早くここから出ることが最も重要だ」
しかし彼女の努力は無駄に終わった。あぁ、そういう男だよなー、と全てを諦めたかのように芽衣はアルハイゼンの元に近寄った。アルハイゼンは来いとでも言うように手を広げたまま動かない。あくまでこちら側が動かなければいけないのだろう。
このような点を踏まえても、彼にデリカシーはないのだろう。彼女は溜息を一つつくと、アルハイゼンの前に立ち、抱きつこうとした。が、どうしても身体は動かない。なんだかとても恥ずかしいことを平気でしているのだと感じれば、そこから動けることはできなかった。
「……どうした」
それを不思議に思ったアルハイゼンは私に問いを投げてくる。答えられるわけがないのだ。どうせこの男に通じることはないのだから。回らない頭で必死に必死に考えて出たのはちっぽけだが彼女にとっては重要な疑問だった。
「………そういや、熱いって何」
「確かにそのような題ではあったな。ふむ、この場合では力強いという意味ではないだろうか」
「絞め殺されるのは勘弁…」
「安心しろ、力加減ができない馬鹿ではない」
そういう問題ではないとアルハイゼンに白い目を向けるも、彼はそのようなを変わり者見るような目に慣れているため全く気にしていない。まぁ彼は本当に変わり者なんだが。
さてこの状況をどう切り抜けるかだが、あまりに悲惨すぎる。せめて相手から来ればいいものの、相手には全く動く気配はない。相手から行動してほしいと願えば、必ず理由を求められる。しかしその理由が彼に通用するのだろうか。別視点の感情論を否定することはないだろうが、論破されて終わりだ。
しょうがない。いざというときのために残していたのだが、ここでカーヴェには犠牲になってもらおう。
「カーヴェ、聞こえてるよね?」
まぁ当たり前だが返信はない。しかし彼のことだ。万が一なにかがあったら危険だとこの部屋を監視しているはず。そう、優しすぎるがあまり彼には欠点が多すぎる。
「昨日の酒場での出来事、アルハイゼンに話すけど」
そう言った途端、なにもなかった部屋から扉が出てきた。その扉の元へ近づくと、案外あっさりと音をたてて開いた。それほどに昨日の酒場での彼の醜態は酷かったのだ。
「案外早かったな」
アルハイゼンのその言葉はカーヴェが扉を開けたスピードでも、閉じ込められていた時間でもなく、きっと私が握っているカーヴェの弱点を手放した速さについて触れているのだろう。
彼女は緊張から解かれるとため息を漏らす。カーヴェの醜態行為を収集するかと思い始まった彼女の朝はまだ始まったばかりであった。
「いや、私が聞きたいんだけど」
「どうして芽衣がここにいる」
「いや私が聞きたいんだけど」
真っ白な部屋にたった一つの机。その上に紙が一枚置いているだけで、その他には何もないという殺風景な部屋である。そしていつの間にかアルハイゼンと芽衣はここに放り込まれていた、というわけだ。
「取り敢えず、そこの紙を読んでみよう」
「ふむ…」
見るからにとある建築科の人物の筆跡である紙には何やら長文で書かれているのだが、読むのすら面倒くさい。まぁつまり要約すると。
"僕が作った部屋から脱出したければ、出されたお題をクリアしろ"
というものだった。
「そのお題ってなに?」
「熱い抱擁だ」
「は?」
「…ん?熱い抱擁だ」
「………あ、うん、わかった」
平然としているアルハイゼンは芽衣の耳に聞こえなかったのかと思い二度言ったが、それは現実逃避を試みていた芽衣にとって急所をつかれたようなものだった。
「…ちょっと部屋の壁触ってくる」
こんな時旅人なら元素視覚で出口を見つけることができるのだろうが、生憎ここにあの二人はいないのだ。そんなことを思ってもしょうがないのである。
「……はぁっ!!!」
芽衣は身体中に力を張り巡らせ、元素力を壁に当ててみる。が、しかし反応はなく、ただ無駄に体力を消費しただけだった。アルハイゼンにも協力を頼もうとしても、彼は意味もなく身体や力を使用し、疲弊することを嫌っている。なんの悪びれも緊張も羞恥心もなく、熱い抱擁とやらを交わすだろう。
申し訳ないけれど私は仮にも女なのだ。そのようなことは避けたいし、出来れば他の方法を見出したい。
「芽衣、俺は早くここから出たい。早速実行しよう」
本当にやめてほしい。そう願った彼女はそれとなく彼の意識を別の方向へと逸らせないかと検討する。
「………アルハイゼン、これってカーヴェの思うツボでは?」
「あいつの思うツボであろうがなかろうが、俺は気にしない。そんなことよりも早くここから出ることが最も重要だ」
しかし彼女の努力は無駄に終わった。あぁ、そういう男だよなー、と全てを諦めたかのように芽衣はアルハイゼンの元に近寄った。アルハイゼンは来いとでも言うように手を広げたまま動かない。あくまでこちら側が動かなければいけないのだろう。
このような点を踏まえても、彼にデリカシーはないのだろう。彼女は溜息を一つつくと、アルハイゼンの前に立ち、抱きつこうとした。が、どうしても身体は動かない。なんだかとても恥ずかしいことを平気でしているのだと感じれば、そこから動けることはできなかった。
「……どうした」
それを不思議に思ったアルハイゼンは私に問いを投げてくる。答えられるわけがないのだ。どうせこの男に通じることはないのだから。回らない頭で必死に必死に考えて出たのはちっぽけだが彼女にとっては重要な疑問だった。
「………そういや、熱いって何」
「確かにそのような題ではあったな。ふむ、この場合では力強いという意味ではないだろうか」
「絞め殺されるのは勘弁…」
「安心しろ、力加減ができない馬鹿ではない」
そういう問題ではないとアルハイゼンに白い目を向けるも、彼はそのようなを変わり者見るような目に慣れているため全く気にしていない。まぁ彼は本当に変わり者なんだが。
さてこの状況をどう切り抜けるかだが、あまりに悲惨すぎる。せめて相手から来ればいいものの、相手には全く動く気配はない。相手から行動してほしいと願えば、必ず理由を求められる。しかしその理由が彼に通用するのだろうか。別視点の感情論を否定することはないだろうが、論破されて終わりだ。
しょうがない。いざというときのために残していたのだが、ここでカーヴェには犠牲になってもらおう。
「カーヴェ、聞こえてるよね?」
まぁ当たり前だが返信はない。しかし彼のことだ。万が一なにかがあったら危険だとこの部屋を監視しているはず。そう、優しすぎるがあまり彼には欠点が多すぎる。
「昨日の酒場での出来事、アルハイゼンに話すけど」
そう言った途端、なにもなかった部屋から扉が出てきた。その扉の元へ近づくと、案外あっさりと音をたてて開いた。それほどに昨日の酒場での彼の醜態は酷かったのだ。
「案外早かったな」
アルハイゼンのその言葉はカーヴェが扉を開けたスピードでも、閉じ込められていた時間でもなく、きっと私が握っているカーヴェの弱点を手放した速さについて触れているのだろう。
彼女は緊張から解かれるとため息を漏らす。カーヴェの醜態行為を収集するかと思い始まった彼女の朝はまだ始まったばかりであった。