成人済みヒロイン。
ー序章ー
空欄の場合は「流畝舞美」になります
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※世界観設定など、ご都合主義ですー。※
ー私は、彼を忘れて、私が愛する者達と、私を愛してくれる者達とこれからも暮らしていく そのつもり、だったのに
…どうして…こんな事に…?ー
『…』
…此処は私が作った私と私が愛する者達がひっそりと暮らす特別な場所…特殊な力を持っていない限り、誰もこの空間には入る事は出来ない…
…此処は私と彼等だけの空間…
「ねーねー、主様ー。」
「…一つお伺いしても宜しいでしょうか…?」
…サンスが用意してくれた紅茶と洋菓子を食べながら、書類に目を通していると…ふいに、座る私の膝の上に顎を乗せていた二人…イノス・アノスが問い掛けてきた…
『んー?なぁに?』
…そんな二人が可愛らしく、愛おしく見えて、二人の頭を撫でながら、柔らかく微笑む…
「…水鏡 とは、一体何者ですか…?」
「…主様の大切な人ー?」
…その言葉に、柔らかな雰囲気はかき消された…
「こら、二人共。主様を困らせるな。」
…すかさずサンスが会話を終わらせようとしてくれるけど…私はそれを手で制した。
『…良いのよ。サンス。…何れは話さなければならない事だと、思っていたから…』
…私から生まれた彼等とは、心の内側が繋がっている。だから、私が強く思うモノは、人でも物でも、彼等の中にも強く残ってしまうのだ…
「…私の主様にそんな顔をさせるなんて…只者ではありませんねぇ…?」
正面のソファーに座り、同じく紅茶を飲んでいた白兪 が口角を吊り上げ呟いた…
「…お主の、ではなく…我 等の主様、じゃな。」
その隣に座り、煙管から煙をくゆらせながら、にこりと微笑み紫 が言葉を続ける…
「嫌ですねぇ…?お歳を召されると細かい事が気になるようで…」
すかさず白兪が口元を扇子で覆いながら、悪態を突く。
「見た目こそ違えど。我らは皆、大まかな同い年じゃぞ?…若人はせっかちで困るのぉ…?」
仕事きっちり、しっかりの白兪と本気を出せば、直ぐに片付けられるのに、それをせず、マイペースな紫、その性格の真逆さが合わないのか、二人はよくこうして衝突するのだ…
「…なんですって…?」
…キッと紫を睨む白兪…楽しそうにはしゃぎながら、それを見るアノス・イノス、やれやれまたか…と呆れ気味のサンス、目を細め勝ち誇った様に優美に微笑む紫、最早見慣れてしまい日常化している私は皆に聞こえる様に大きな溜息をつく。
『…聞く気がないなら、話さないけど、良いかしら?』
「「っ……申し訳ありません。主様…どうぞ続きをお話し下さい…」」
…私が言えば、2人は姿勢を正し、衝突を止める。…これまた習慣になってしまった対応だ…
「それでそれで…?!」
「…その御方は、主様の恋人、ですか?」
…イノス・アノスの言葉に、私は嘲笑する…
『は……だったら、良かったけどね…』
…私の言葉に、皆は眼光が鋭くなる…それは私の声色が余りにも冷たかったから…でもそれは彼のせいじゃない…いや、寧ろ、誰のせいでも、ない…
「…嫌いだったのですか?…その方が…」
「…主様を傷つけたの…?」
…アノス・イノスの瞳が赤く光る…怒っているのだ…二人の反応が嬉しい、と思いつつ苦笑しながら、話の腰を折らない為にも、話を続ける。
『…違うわよ。だから落ち着きなさい。二人共。そもそも何も始まってすらない。ただ私は彼の事を愛していたわ。とても…』
…今度はサンスと白兪が眉をぴくりとひそめる。
「「…あなた様に、そんな顔をさせておいて…?」」
『…落ち着きなさいってば。サンスに白兪。私が一方的に愛してたってだけ。』
「…我らの主様が一方的に…とは、その者は見る目がないのぅ…?」
…煙を吹かせながら、紫は言う。どこか殺気を込めて…
『…殺気を引っ込めて?紫。…言ったでしょう?…私が勝手に好意を抱いていただけ…そもそも、私は彼から逃げたのだから、そんな資格も無いわ。』
…私の言葉に今度は皆が目を見開く。そんな彼等の様子に苦笑しながら…
『…。…私は……弱かったの、心が…。…まぁ、今もさほど変わらないけど……彼には、愛していた人がいた。…私が想いを伝えたとしても、絶対に成就しないと…分かるぐらいに愛していた人が…だから私は、何も言わず、彼の前から、勝手に姿を消して、逃げ出したの。…見たくなかったから…自分の醜い姿をこれ以上……』
しんと静まり返るその場の空気…まぁ、当然よね。
「…主様…」
「…申し訳ありません。軽弾みに聞いていい事ではありませんでした。」
…しゅんとするイノス・アノス…
『良いのよ。…皆ずっと気になっていた事だろうし。これで多少はスッキリしたでしょう?ま、今となってはうん百年前の事よ。過去の事。今はあなた達がいてくれるから、私は楽しいし、幸せよ。』
…誰が悪かった訳でもない…が、 彼等 から勝手に逃げ出した私にはもう、会う資格も無ければ、会う機会もない…そんな事を考えていたら、ぐい、と引っ張っられる私の腕、ぽすんと、紫の膝の上に座わらされていた。
「そうじゃな?今の舞美様には、我らがおる。…何も心配する事はないぞ?」
…流れるような自然な動作で、紫は妖艶に微笑みながら、私の下唇を親指でなぞる…
『ち、ちょっと紫。』
いきなり過ぎて、ちょっと動揺しつつも、彼の胸板を押し返そうとすると、そんな紫の頭を白兪の扇子が叩いて、ぐいと腕を掴み、私を抱き寄せる…
「あいたっ」
「どさくさに紛れて、舞美様に触れないで下さい。…このくそじじぃが。ポツリ」
『…出ちゃってるわよ。白兪。心の声が。』
…苦笑しながら言えば、今度はイノスとアノスが私の腕を掴み、二人で私の腕にしがみつき、白兪と紫を睨みつける。
「(見た目)おじいちゃん組ばっかズルいー!僕達だって、舞美様に触れるの、ずっと我慢してたのにー!」
「えぇ、全くです。ねぇ?舞美様?」
「お、おじいちゃん組み…。…何故私まで…私達は大まかな同年齢組みですよ…!」
「くく、さっきの我の言葉じゃな。」
「くっ、あなたは黙っていて下さい…!」
「…くすくす、安心して下さいませ、舞美様。あなた様には、俺達が付いていますから。」
…少なからずショックを受けている白兪…
それを見て、愉しそうに笑う紫…私の後ろでこそりと耳打ちをしてくるサンス…そんな様子に私も可笑しくて、嬉しくて、笑う……そう、これが私の日常…だから、私は生きていける…
けど…
『…!』
「「「…!!」」」
…突如その場を包む込むような神聖な気配に、皆で外を見る……待って、…嘘でしょう……?…この、嫌でも、懐かしいと思う気配、は……
ぐるぐると思考を巡らせていると、真後ろの影の空間から黒龍 が姿を現した…心臓の音が、やけに鮮明に聴こえて、うるさい…
「…主様…報告します。」
『…どうしたの…?』
…ぎゅと胸元に置いた手を強く握る……鼓動が、どんどん大きく、なってくる…
「…この屋敷の隣に、新たな謎の屋敷が現れました。…大まかにしか確認出来ませんでしたが、妙な気配を纏った者が数名、屋敷内にいるようです。」
『…そう…。』
…だめだ。黒龍の声が上手く…聴き取れない…だって……、私には、分かる…これは、この、気配は…
「…舞美様、大丈夫ですか?…顔が真っ青ですよ。」
サンスが私の肩に手を置き、私ははっ…と正気を取り戻す。…見れば、皆がこちらを心配そうに見つめていた。
『…大丈夫よ…、きっと、私の知り合い…だから……行きましょう。様子を、見に行かなくては…』
「「「…」」」
もしかして…とサンス達の表情が険しくなる…行きたくない…歓迎されないのは、目に見えてる…それに、そんな資格、私には、無い……でも、よく考えてみたら逆に…私に対して無関心かも…?…昔みたいに……けど、もし、私に、 彼等 に対する未練があったとすれば…?
……私は創造神だ。…強い思いは力を勝手に誘発してしまう…もしも私が、彼等を呼んでしまったとしたら…?……戻し方、なんて…分からないけど…私には、呼んでしまった責任がある…、彼等に私に対する関心がなかったとしても…勝手にいなくなったのも事実。こんな形で、贖罪をさせられる時が来るなんて…思わなかったけど…罰が、当たったのね。…彼等から逃げ出した罰が……
『…』
…外に出て、現れた屋敷を改めて見る…
『……やっぱり…』
それは昔、痛いくらいの思い出が残る、彼等と過ごした屋敷そのものだった…
「…主様?舞美様。大丈夫?」
「…舞美様…顔色が先程よりも悪いですよ。」
気遣うように、アノス・イノスが私の横に立ち、心配そうに肩に手を置いてくれる…
『…平気よ…』
…優しく微笑みながら、そっと二人の手を離す……そうだ、きっと昔と変わらない…皆、私の事は、見ていなかったのだから…
サンス「舞美様…しかし顔色が…」
白兪「…サンス殿。舞美様は平気だと言っていますよ。」
サンス「っ……はい。」
黒龍「…舞美様…」
紫「やれやれ…殺伐としとるのぉ…?」
アノス・イノス「「舞美様…」」
『…』
いたたまれず彼等に向かい苦笑する…決意を固め、現れた屋敷の入り口へと歩を進める……皆いる…屋敷の入り口、見覚えのある人影が見える。
『っ…』
…何だろう…空気が、重い気がする…どう声を掛けたら良いか分からなくて、迷っていると、すっと赤と白の着物が、私の前に歩み寄る…
「…本当に、お前か…?舞美…」
『…』
「「「!」」」
…伸ばされる手…懐かしい声…でもサンス達は、彼が私に触れようとした事と、呼び捨てにした事が気に入らなかったようで臨時態勢になる。…私はそんなサンス達を手を上げて制する。…ほんと優しい子達なんだから…
『…久しぶりだね、怜 君…』
「っ…!」
私が苦笑すると、怜君は私に詰め寄ってきて両肩を掴まれた。
「「「舞美様…!!」」」
サンスに続き、他の皆も私に近づこうとするけど、私は更にサンス達を手で制する。…驚いた。思った反応と、違う……怜君…
「久しぶりじゃねぇよ…!お前!今まで何処にいたんだ…!」
『っ…!怜く…!』
…激しく揺さぶられる私の体…
「貴様…!」
黒龍が飛び出そうとするから、私は声を張り上げる。
『大丈夫だから黒龍!…彼は、怜君は私に危害は加えない…!』
「っ!…しかし!舞美様…!」
…すると今度は、緑と白色主体の着物の端が、怜君の後ろから現れる…
「…怜、気持ちは分かるけど、乱暴は駄目だよ?…舞美さんも、その後ろにいる人も困ってる。」
「ちっ…!」
舌打ちをしながらばっと、私から手を離し視線を横に逸らす怜君…その様子に蓮 君は困ったような表情を浮かべ、私に向き直ると、にこり微笑む。
「…お久しぶりですね。舞美さん…」
『…うん。久しぶり、蓮君…ありがとう。』
「いえ、あのままですと、聞きたい事が聞けませんから…。」
『…そう、だね…』
…蓮君、確かに笑ってるんだけど…彼の回りの空気がぴりぴりしてる…蓮君もやっぱり…怒って、る…?
「何で止めるの?」
「…遥 。」
続いて、蓮君の後ろから、心底不機嫌そうに黄と白主体の着物の遥君と、白色の着物の優 君が顔を出す…
『…遥君…優君…』
おずおずと二人を見れば、先に目が合った遥君に凄い剣幕で睨まれる…
『…っ…!』
「…」
思わずたじろいで俯いてしまうと…白兪が私の前に立ち、視界を遮断する…
「…遥、舞美さんが、怖がってる。」
「っ…」
優君が遥君の肩に手を置くと、遥君は唇を引き結び、ふいと視線を反らしてしまう。……?…一瞬悲しそうに見えたような…気の所為…?…そして、そっと優君が苦笑しながら私に歩み寄り言う…
「…急に居なくなったから、心配しました。」
『…うん、ごめんなさい…』
いたたまれなくて顔を上げられない私…おかしい…皆私に無関心、だったはずなのに…皆、怒ってる…当たり前、か…でも、何で…?などとぐるぐると思考を巡らせていれば、少し離れた場所、淡い水色の着物が風に靡く…
『ぁ……』
ドクン、と心臓の音が大きく鮮明に聴こえる…ゆっくりと顔を上げると、目が合う…しかし…
「…」
痛い位殺意の籠もった目で見られて…ビクリと体が震え、けど何か言いたくて思わず彼に向かい手を伸ばす…
『っ…水…!』
けど…突然の体への衝撃に、伸ばした私の手は宙を舞い…
「舞美さん!」
『っ…!?……葵、君…?』
私に抱きつき、ぼろぼろと涙を流しながら此方を見る葵君に掴まれた…
「舞美さん…!…僕、僕…!ずっと、心配、で…っ…」
『…ごめん。ごめんね。葵君…私は大丈夫だから…』
私を強く抱き締めながら泣きじゃくる葵君に、罪悪感が溢れ出す…そんなに、心配してくれたの?…もしかして、怜君達も…?
……でもこんな事になるなんて…今更水鏡に、彼等に何て話せば良い?……だって、こんな怒ってるとは、思わなかった…昔、あの時は皆、私を見ていなかった筈なのに…誰とも、目が合わなかったのに……何故…?……見て、いなかった…?…本当、に…?
「舞美さん?…悲しいの?」
『…そう、だね…』
涙を流し続け私を心配して、見上げてくる葵君に申し訳なくて優しく頭を撫で、苦笑する…
…私、何か、忘れて、る…?…一体、この違和感は、何…?
結局、その後水鏡とだけは話せず、怜君達も屋敷に戻って行ってしまって、一旦落ち着く必要がある。と思い、私も自分の洋館に戻った…
これから、私は、どうすれば良いのだろう…これで良いと、このままでいいと、そう、思っていたのに…
ー止まっていた時が、再び動き出した瞬間だったー
ー私は、彼を忘れて、私が愛する者達と、私を愛してくれる者達とこれからも暮らしていく そのつもり、だったのに
…どうして…こんな事に…?ー
『…』
…此処は私が作った私と私が愛する者達がひっそりと暮らす特別な場所…特殊な力を持っていない限り、誰もこの空間には入る事は出来ない…
…此処は私と彼等だけの空間…
「ねーねー、主様ー。」
「…一つお伺いしても宜しいでしょうか…?」
…サンスが用意してくれた紅茶と洋菓子を食べながら、書類に目を通していると…ふいに、座る私の膝の上に顎を乗せていた二人…イノス・アノスが問い掛けてきた…
『んー?なぁに?』
…そんな二人が可愛らしく、愛おしく見えて、二人の頭を撫でながら、柔らかく微笑む…
「…
「…主様の大切な人ー?」
…その言葉に、柔らかな雰囲気はかき消された…
「こら、二人共。主様を困らせるな。」
…すかさずサンスが会話を終わらせようとしてくれるけど…私はそれを手で制した。
『…良いのよ。サンス。…何れは話さなければならない事だと、思っていたから…』
…私から生まれた彼等とは、心の内側が繋がっている。だから、私が強く思うモノは、人でも物でも、彼等の中にも強く残ってしまうのだ…
「…私の主様にそんな顔をさせるなんて…只者ではありませんねぇ…?」
正面のソファーに座り、同じく紅茶を飲んでいた
「…お主の、ではなく…
その隣に座り、煙管から煙をくゆらせながら、にこりと微笑み
「嫌ですねぇ…?お歳を召されると細かい事が気になるようで…」
すかさず白兪が口元を扇子で覆いながら、悪態を突く。
「見た目こそ違えど。我らは皆、大まかな同い年じゃぞ?…若人はせっかちで困るのぉ…?」
仕事きっちり、しっかりの白兪と本気を出せば、直ぐに片付けられるのに、それをせず、マイペースな紫、その性格の真逆さが合わないのか、二人はよくこうして衝突するのだ…
「…なんですって…?」
…キッと紫を睨む白兪…楽しそうにはしゃぎながら、それを見るアノス・イノス、やれやれまたか…と呆れ気味のサンス、目を細め勝ち誇った様に優美に微笑む紫、最早見慣れてしまい日常化している私は皆に聞こえる様に大きな溜息をつく。
『…聞く気がないなら、話さないけど、良いかしら?』
「「っ……申し訳ありません。主様…どうぞ続きをお話し下さい…」」
…私が言えば、2人は姿勢を正し、衝突を止める。…これまた習慣になってしまった対応だ…
「それでそれで…?!」
「…その御方は、主様の恋人、ですか?」
…イノス・アノスの言葉に、私は嘲笑する…
『は……だったら、良かったけどね…』
…私の言葉に、皆は眼光が鋭くなる…それは私の声色が余りにも冷たかったから…でもそれは彼のせいじゃない…いや、寧ろ、誰のせいでも、ない…
「…嫌いだったのですか?…その方が…」
「…主様を傷つけたの…?」
…アノス・イノスの瞳が赤く光る…怒っているのだ…二人の反応が嬉しい、と思いつつ苦笑しながら、話の腰を折らない為にも、話を続ける。
『…違うわよ。だから落ち着きなさい。二人共。そもそも何も始まってすらない。ただ私は彼の事を愛していたわ。とても…』
…今度はサンスと白兪が眉をぴくりとひそめる。
「「…あなた様に、そんな顔をさせておいて…?」」
『…落ち着きなさいってば。サンスに白兪。私が一方的に愛してたってだけ。』
「…我らの主様が一方的に…とは、その者は見る目がないのぅ…?」
…煙を吹かせながら、紫は言う。どこか殺気を込めて…
『…殺気を引っ込めて?紫。…言ったでしょう?…私が勝手に好意を抱いていただけ…そもそも、私は彼から逃げたのだから、そんな資格も無いわ。』
…私の言葉に今度は皆が目を見開く。そんな彼等の様子に苦笑しながら…
『…。…私は……弱かったの、心が…。…まぁ、今もさほど変わらないけど……彼には、愛していた人がいた。…私が想いを伝えたとしても、絶対に成就しないと…分かるぐらいに愛していた人が…だから私は、何も言わず、彼の前から、勝手に姿を消して、逃げ出したの。…見たくなかったから…自分の醜い姿をこれ以上……』
しんと静まり返るその場の空気…まぁ、当然よね。
「…主様…」
「…申し訳ありません。軽弾みに聞いていい事ではありませんでした。」
…しゅんとするイノス・アノス…
『良いのよ。…皆ずっと気になっていた事だろうし。これで多少はスッキリしたでしょう?ま、今となってはうん百年前の事よ。過去の事。今はあなた達がいてくれるから、私は楽しいし、幸せよ。』
…誰が悪かった訳でもない…が、 彼等 から勝手に逃げ出した私にはもう、会う資格も無ければ、会う機会もない…そんな事を考えていたら、ぐい、と引っ張っられる私の腕、ぽすんと、紫の膝の上に座わらされていた。
「そうじゃな?今の舞美様には、我らがおる。…何も心配する事はないぞ?」
…流れるような自然な動作で、紫は妖艶に微笑みながら、私の下唇を親指でなぞる…
『ち、ちょっと紫。』
いきなり過ぎて、ちょっと動揺しつつも、彼の胸板を押し返そうとすると、そんな紫の頭を白兪の扇子が叩いて、ぐいと腕を掴み、私を抱き寄せる…
「あいたっ」
「どさくさに紛れて、舞美様に触れないで下さい。…このくそじじぃが。ポツリ」
『…出ちゃってるわよ。白兪。心の声が。』
…苦笑しながら言えば、今度はイノスとアノスが私の腕を掴み、二人で私の腕にしがみつき、白兪と紫を睨みつける。
「(見た目)おじいちゃん組ばっかズルいー!僕達だって、舞美様に触れるの、ずっと我慢してたのにー!」
「えぇ、全くです。ねぇ?舞美様?」
「お、おじいちゃん組み…。…何故私まで…私達は大まかな同年齢組みですよ…!」
「くく、さっきの我の言葉じゃな。」
「くっ、あなたは黙っていて下さい…!」
「…くすくす、安心して下さいませ、舞美様。あなた様には、俺達が付いていますから。」
…少なからずショックを受けている白兪…
それを見て、愉しそうに笑う紫…私の後ろでこそりと耳打ちをしてくるサンス…そんな様子に私も可笑しくて、嬉しくて、笑う……そう、これが私の日常…だから、私は生きていける…
けど…
『…!』
「「「…!!」」」
…突如その場を包む込むような神聖な気配に、皆で外を見る……待って、…嘘でしょう……?…この、嫌でも、懐かしいと思う気配、は……
ぐるぐると思考を巡らせていると、真後ろの影の空間から
「…主様…報告します。」
『…どうしたの…?』
…ぎゅと胸元に置いた手を強く握る……鼓動が、どんどん大きく、なってくる…
「…この屋敷の隣に、新たな謎の屋敷が現れました。…大まかにしか確認出来ませんでしたが、妙な気配を纏った者が数名、屋敷内にいるようです。」
『…そう…。』
…だめだ。黒龍の声が上手く…聴き取れない…だって……、私には、分かる…これは、この、気配は…
「…舞美様、大丈夫ですか?…顔が真っ青ですよ。」
サンスが私の肩に手を置き、私ははっ…と正気を取り戻す。…見れば、皆がこちらを心配そうに見つめていた。
『…大丈夫よ…、きっと、私の知り合い…だから……行きましょう。様子を、見に行かなくては…』
「「「…」」」
もしかして…とサンス達の表情が険しくなる…行きたくない…歓迎されないのは、目に見えてる…それに、そんな資格、私には、無い……でも、よく考えてみたら逆に…私に対して無関心かも…?…昔みたいに……けど、もし、私に、 彼等 に対する未練があったとすれば…?
……私は創造神だ。…強い思いは力を勝手に誘発してしまう…もしも私が、彼等を呼んでしまったとしたら…?……戻し方、なんて…分からないけど…私には、呼んでしまった責任がある…、彼等に私に対する関心がなかったとしても…勝手にいなくなったのも事実。こんな形で、贖罪をさせられる時が来るなんて…思わなかったけど…罰が、当たったのね。…彼等から逃げ出した罰が……
『…』
…外に出て、現れた屋敷を改めて見る…
『……やっぱり…』
それは昔、痛いくらいの思い出が残る、彼等と過ごした屋敷そのものだった…
「…主様?舞美様。大丈夫?」
「…舞美様…顔色が先程よりも悪いですよ。」
気遣うように、アノス・イノスが私の横に立ち、心配そうに肩に手を置いてくれる…
『…平気よ…』
…優しく微笑みながら、そっと二人の手を離す……そうだ、きっと昔と変わらない…皆、私の事は、見ていなかったのだから…
サンス「舞美様…しかし顔色が…」
白兪「…サンス殿。舞美様は平気だと言っていますよ。」
サンス「っ……はい。」
黒龍「…舞美様…」
紫「やれやれ…殺伐としとるのぉ…?」
アノス・イノス「「舞美様…」」
『…』
いたたまれず彼等に向かい苦笑する…決意を固め、現れた屋敷の入り口へと歩を進める……皆いる…屋敷の入り口、見覚えのある人影が見える。
『っ…』
…何だろう…空気が、重い気がする…どう声を掛けたら良いか分からなくて、迷っていると、すっと赤と白の着物が、私の前に歩み寄る…
「…本当に、お前か…?舞美…」
『…』
「「「!」」」
…伸ばされる手…懐かしい声…でもサンス達は、彼が私に触れようとした事と、呼び捨てにした事が気に入らなかったようで臨時態勢になる。…私はそんなサンス達を手を上げて制する。…ほんと優しい子達なんだから…
『…久しぶりだね、
「っ…!」
私が苦笑すると、怜君は私に詰め寄ってきて両肩を掴まれた。
「「「舞美様…!!」」」
サンスに続き、他の皆も私に近づこうとするけど、私は更にサンス達を手で制する。…驚いた。思った反応と、違う……怜君…
「久しぶりじゃねぇよ…!お前!今まで何処にいたんだ…!」
『っ…!怜く…!』
…激しく揺さぶられる私の体…
「貴様…!」
黒龍が飛び出そうとするから、私は声を張り上げる。
『大丈夫だから黒龍!…彼は、怜君は私に危害は加えない…!』
「っ!…しかし!舞美様…!」
…すると今度は、緑と白色主体の着物の端が、怜君の後ろから現れる…
「…怜、気持ちは分かるけど、乱暴は駄目だよ?…舞美さんも、その後ろにいる人も困ってる。」
「ちっ…!」
舌打ちをしながらばっと、私から手を離し視線を横に逸らす怜君…その様子に
「…お久しぶりですね。舞美さん…」
『…うん。久しぶり、蓮君…ありがとう。』
「いえ、あのままですと、聞きたい事が聞けませんから…。」
『…そう、だね…』
…蓮君、確かに笑ってるんだけど…彼の回りの空気がぴりぴりしてる…蓮君もやっぱり…怒って、る…?
「何で止めるの?」
「…
続いて、蓮君の後ろから、心底不機嫌そうに黄と白主体の着物の遥君と、白色の着物の
『…遥君…優君…』
おずおずと二人を見れば、先に目が合った遥君に凄い剣幕で睨まれる…
『…っ…!』
「…」
思わずたじろいで俯いてしまうと…白兪が私の前に立ち、視界を遮断する…
「…遥、舞美さんが、怖がってる。」
「っ…」
優君が遥君の肩に手を置くと、遥君は唇を引き結び、ふいと視線を反らしてしまう。……?…一瞬悲しそうに見えたような…気の所為…?…そして、そっと優君が苦笑しながら私に歩み寄り言う…
「…急に居なくなったから、心配しました。」
『…うん、ごめんなさい…』
いたたまれなくて顔を上げられない私…おかしい…皆私に無関心、だったはずなのに…皆、怒ってる…当たり前、か…でも、何で…?などとぐるぐると思考を巡らせていれば、少し離れた場所、淡い水色の着物が風に靡く…
『ぁ……』
ドクン、と心臓の音が大きく鮮明に聴こえる…ゆっくりと顔を上げると、目が合う…しかし…
「…」
痛い位殺意の籠もった目で見られて…ビクリと体が震え、けど何か言いたくて思わず彼に向かい手を伸ばす…
『っ…水…!』
けど…突然の体への衝撃に、伸ばした私の手は宙を舞い…
「舞美さん!」
『っ…!?……葵、君…?』
私に抱きつき、ぼろぼろと涙を流しながら此方を見る葵君に掴まれた…
「舞美さん…!…僕、僕…!ずっと、心配、で…っ…」
『…ごめん。ごめんね。葵君…私は大丈夫だから…』
私を強く抱き締めながら泣きじゃくる葵君に、罪悪感が溢れ出す…そんなに、心配してくれたの?…もしかして、怜君達も…?
……でもこんな事になるなんて…今更水鏡に、彼等に何て話せば良い?……だって、こんな怒ってるとは、思わなかった…昔、あの時は皆、私を見ていなかった筈なのに…誰とも、目が合わなかったのに……何故…?……見て、いなかった…?…本当、に…?
「舞美さん?…悲しいの?」
『…そう、だね…』
涙を流し続け私を心配して、見上げてくる葵君に申し訳なくて優しく頭を撫で、苦笑する…
…私、何か、忘れて、る…?…一体、この違和感は、何…?
結局、その後水鏡とだけは話せず、怜君達も屋敷に戻って行ってしまって、一旦落ち着く必要がある。と思い、私も自分の洋館に戻った…
これから、私は、どうすれば良いのだろう…これで良いと、このままでいいと、そう、思っていたのに…
ー止まっていた時が、再び動き出した瞬間だったー
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