成人済みヒロイン。
全て、お見通し…
空欄の場合は「流畝舞美」になります
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ー沈む、落ちる
思考、と言う、澱みの渦へー
『………』
…思考…考える、と言う事は、物事を変える為の解決作であり、同時に、その者をより思考の深みへ誘う愚策でもある…
『…疲れた。』
…特別、何かあった訳でも、何をした訳でも無い…
ただ、人と言う生き物には、必ずしも気持ちが沈む事がある…
考えても始まらない、考えた所で問題が解決する訳でもない…
そうは解っていても、人は思考する事を止められない…
それが、自分を、更に貶める行為だったとしても…
『………』
彼女にとって、それが今日らしい…ソファーの下で膝を抱え、無気力に座っている…
「…失礼ながら、女王陛下?見えますよ。」
『…別に。茨さんが相手なら尚の事どうでもいい。』
いつの間にやら入って来た茨は言う…
「あっはっはっ!自分ならいつでも貴女様に触れても良い、と言う解釈に致しますが、宜しいですか?」
いつもの調子で言う茨に、彼女は顔を上げてキッと睨みつける…
『………悪いけど、用事があるのなら、また後日にして。今は貴方に付き合う気分じゃないの。』
一瞬だけ顔を上げて、茨を見て言ったかと思えば、彼女はまた顔を埋めてしまった…
「…。やれやれ、どうやら重症みたいですね。」
茨が近付いてくる気配がしたかと思えば、肩越しに引き寄せられ彼の肩に頭を乗せる形にさせられる…
『…、何?頼んで無いんだけど。』
…態勢はそのままに悪態を付かれても、茨は気にしていない様子、どうやら、これ、がこの二人の日常らしい…
「…頼まれずとも、どうしたら良いか、自分には分かるのですよ。閣下程では有りませんが、これでも貴女様とは長い付き合いなのでねぇ。…さ、どうぞ吐き出して下さい。此処には自分しかいませんから。」
『…』
…その言葉を合図に、彼女は静かに涙を流し始めた……
「……」
『……っ…』
…彼は何をする訳でも無く、彼女の横で、肩を抱きながら、そこにいるだけ……
それから、数十分後…
『………。』
「…よしよし。良い子ですね。少しは、落ち着きましたか?」
『…。うん。…でも、何か納得いかない。…茨さんの癖に、生意気だな…。』
「やれやれ、口を開いたかと思いきや、何です?貴女様は、自分を何だと、お思いで?」
『…。利益だけを求める陰湿な毒蛇。』
「…そこだけは、しっかりと口が回るんですね。本調子に戻った様で安心しました。」
『……お陰様で。』
「…結構。では、どんなお返しをしてもらいましょうかねぇ〜…?」
…瞬時にいつもの調子に切り替わる茨…
『切り替わるの早っ。…でもそうはさせない…』
「…は?それはどう言う意…」
言うや否や、彼女は茨の首の後ろに両手を回して、そのまま彼の唇に触れるだけのキスをする…
「!…おやおや。」
初めは少し驚いた様だが、次には茨も挑発的に目を細め、彼女の肩と腰に腕を回す…
「…もう返して戴けるので…?」
茨が言えば、彼女は彼の首元に顔を埋めて…
『…これで、貸し借りは、無し…だから…』
…そう言って、動かなくなってしまった…
「…んん?ちょっと、舞美さん…?」
…心配した茨が話しかければ、直後に聴こえてくる寝息…
「…ちょっとマジですか。ここでお預けとか、嫌がらせにも程があるんじゃないですかねぇ?」
…しかし、寝込みを襲うのも彼の中で何か違うようで…
「…やれやれ、仕方有りませんね。」
大人しく姫抱きをして、寝室へ向かう…
「…俺は本来、振り回されるより、振り回す方が好きなんですけどねぇ…」
眼鏡を押し上げながら、呟く…
口ではそう言いつつも、律儀に寝室へ向かう辺り、なんだかんだ茨も彼女の事を相当気に入っているご様子。
「…本当なら、貴女様がこうなる前に、気づいておきたかったのですが…」
茨は彼女をベットに寝かせる…そして、神妙な面持ちで舞美の髪に優しく触れながら…
「…結局はあんたも、俺も、そう言う事が得意じゃない…慣れていないから…自分の弱い部分を見せる事に…それが当たり前だったから…自分もそうだった…だが、お節介なあんたが引き出した…だから、あんたが辛そうなら、俺もその苦しみを無理にでも引きずり下ろす。それがあんたが俺を明るい方へと導いた罰だ…」
…そうは言いつつ、やってる事と言ってる事が違うように見えるのは…どうやら、毒蛇も、彼女の事になると、毒が抜かれる事もあるらしい…
『…うー、ん、茨さんの、性…悪…』
絶妙なタイミングで舞美がそう言ったかと思えば…
「誰のせいだと思っているんですか。それにそれはお互い様ですよ。…お休みなさい。舞美さん。良い夢を…」
髪を一房掬いに口付けをして、部屋の明かりを消すと、その場を後にした…
ー彼には、彼女の事は、全てお見通し、なのだー
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