どこまで耐えれるのかが気になる、それにこれほど力を出したのは久々だ。
ここ最近で一番力を込めて攻防を交わしている。
それに自分が戦ってきた誰よりも若い。


楽しい...

ふ、と瞳がオレンジがかるーーー。


バギイッ！！！



沖田の竹刀が折れた。

「「！？」」

由羅「っ！ぅ、わ！」

咄嗟に力を込めていた由羅は沖田にあてまいと手を引く。
すると沖田はしゃがみ込み由羅の足に蹴りを入れようとする、が軽くジャンプをし避けられる。

由羅「続けんの！？」

沖「まだ俺も攻撃は１つも当たってねェですぜ」

見越していたかのように沖田は体制をなおす。

「隊長！使ってください！」

隊士が沖田へ竹刀を投げる。
受け取る前に一本とろう、と思った由羅の攻撃は交わされ空振りした由羅の竹刀をはたく。

由羅「！」

次の瞬間には自分に竹刀が振り落とされていることに気づくとかろうじて落とさず持っていた竹刀で沖田からの攻撃を防いだ。


ニヤリと笑う沖田。

沖「初めてソレ使って防御に周りやしたねィ」


ゾク、と体が震えた。
久々に好敵手と呼べる相手がいる。
ただただそのことに興奮した。

由羅「...」

それを振り払うと由羅はすかさず沖田へ攻撃をしかける。


沖「(戦闘狂とは聞いてたが...興奮すると黙るタイプか)」

体や竹刀を使いながらも沖田は由羅からの止まない攻撃をかわす。


ーーー


土「近藤さん、あれ大丈夫か」

近「今止めたら総悟に殺される...」


気付けば見ていた隊士達はワーワーと騒ぎどちらともに応援を飛ばしていた。
二人は耳に入らないほど戦闘を楽しんでいる。


土「完全に瞳の色変わってやがる」

近「まぁ皆そんなこと気付かないでガヤとばしてるけどね」

完全にお祭り状態になっており誰も止めるものはいない。

ーーーーー


沖「これで決めまさァ！」


沖田が大きく踏み込み突きをいれようとする。
大きく背後に隙が開くのをみると由羅は後ろへ回った。


土「総悟のやろう...早まったな」


すると沖田は竹刀を手から離し、一歩下がると後ろへ倒れようとする。

由羅「っえ！」


下から上へと突き上げようと思っていたが、これでは力の加減ができずにぶっ飛ばしてしまう。

それが当たっても受け身はとれるだろうと踏んで力を込めていたが、これでは致命傷だ。


由羅「(やばい...！)」

咄嗟に竹刀を手から離し、沖田の脇に手を突っ込んだ。






「「...」」







沖田は膝がほぼ90度の状態で体を支えられながらもぽかんとしている由羅を見上げた。

由羅「え？...え？」

沖「一本」

由羅「いで」

ポスッ、と由羅の額にチョップをかます。













「「ウォォオオオオオ！！せこい！せこいけどやったぞオォォオォ！！！！」」


由羅「....ぇ、.....えええええ゛え゛！？！？」


沖田は由羅に支えられていた腕に力を込め立ち上がる。

沖「甘いですぜィ、由羅さん」

由羅「ゴリラァ！ヤニカスゥ！！こんなのアリなのォォォ！？」

近「...まぁ、一本は一本かもね..はは」

沖「由羅さん、目」


うわあああ、と嘆いている由羅にそっと耳打ちをすると失敬失敬、と目を隠して深呼吸をし再び顔を上げる頃にはいつもの赤色へと戻っていく。


土「計算高い餓鬼だな、ったく」

沖「うるせェヤニカス」

土「総悟まで真似してんじゃねぇよ！」

沖「由羅さん、ずっとここぞという攻撃は怪我させねェようにしてたでしょ。
煽りまくって興奮させて、力加減できなくなった頃にこっちが力抜いてやろうってね」

由羅「んわぁぁぁ...しゅごいぃ...」

近「まぁ戦場では通じないけどね」

沖「うるせェヤニカス」

近「俺はゴリラだよォッ！」

土「ツッコミ間違えてんぞ！...にしてもなんだこのバカ騒ぎは」

お祭り騒ぎと化している隊士達を宥めに近藤と土方は二人から離れる。





すごいな...と感心する由羅に沖田はニタニタと笑いながら話しかける。

沖「俺で興奮しやしたかィ？」

由羅「アドレナリン射精しかけたわ...」

沖「まだ力の全部出し切ってないとは思いやしたがね」

由羅「いや、結構本気だった、ここ5年くらいの中じゃ一番本気だったかも。竹刀折ってごめん」


やはりまだ本気ではなかったか、悔しいとは思うも褒められた事に対して何とも言えない感情になる。

由羅「早さも強さも身のこなしも、俺が教える事なんて何にもねぇよ。隙の見せ方もうまい、どうやったら俺が背後に回るかも考えてやったんだろ」


すげぇわお前、と言いながら沖田の頭をぐしゃぐしゃと撫でるとその手を抓る。

由羅「いでででででごめんごめんごめんなさい子供扱いしたつもりじゃなかったんです」

沖「その発言が既に子供扱いしてんでしょーが。...目の色が変わるのは分かりやすかったけど、興奮すると黙々と黙ってやりだすから分かりやすかったですぜ」


普段由羅の真顔をあまり見ないために余計に分かり易かった。
いつもヘラヘラしているか大口あけて馬鹿みたいに笑ってるか、意地悪そうな顔で笑うか、気まずそうな時は話したくないとすぐに顔に出る。

由羅「はっず！そんなん言われんのはっず！」

沖「俺も、アンタの戦い方には興奮しやした。それまで見てたってのもありやすけど、交し方がうざかったでさァ。まるで葉っぱと戦ってるみてェで」

由羅「葉っぱ。葉っぱて！今まで名前の通り猫みたいだとか言われてきたけど葉っぱは初めてだわ」


ケラケラと笑い出す由羅に先程までの重圧感はどこから来ているのかが不思議で仕方がない。

沖「んで？由羅さんは俺の何を聞いてくれるんですかィ」

由羅「今日夜仕事は？」

沖「書類」

由羅「んじゃ山崎召喚すりゃあ休みになるってことだな」

沖「はなからそのつもりでさァ」




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