飛べない蝙蝠は鷹の背中で夢を見る

【星降る夜にきみを想う 後編】

《大我side》



「月が、綺麗だね」

気持ちを素直に言葉にできない俺は、そっとその言葉に別の意味を乗せて呟く。

きっと、北斗は知らないだろうな。

『I Love You』を『月が綺麗ですね』と訳した文豪のことを。

いや、知らない方がいいけど。

「本当、月が綺麗でしょうがない」

北斗の言葉に、思わず振り向いたら、吐息のかかる距離まで近付く唇が、そっと俺のそれに重なった。

「……ん…」

唇を覆って食むように口づけるのは、北斗の癖だろう。

でも俺は、それじゃ足りない。

薄く唇を開いて、北斗の舌を誘う。

ざらりと舌の触れ合う感覚に、毎回呆れるほど、身体が反応する。

片方の腕を腰に回して、もう片方の手のひらが、頬を撫ぜて耳の輪郭をなぞる。

「……んッ……」

髪を梳く指先が項を掠めては、ゾクリと身体が震え、じゅっと舌を吸われる度に甘い声が漏れるのは仕方のないことだ。

「京本、車に入ろう」

立っているのがやっとで、北斗の首に縋りついたら、耳元で呟く低音に、こくんと頷いて答えた。

アイドリング状態の車の中は涼しくて、二人で助手席に向かい合わせで乗り込んで、北斗がシートに深く背中を預けて、雑にズボンをずらす仕草に、鼓動が跳ねた。

ダッシュボードの中の薄い膜を付けあって、愛しさとともに一つに繋がった。

腰に手を掛けて何度も深く穿つ北斗に、いやいやと首を振りながら、堪らず膜の中に欲を吐き出すと、それに続くように北斗が詰めた息を吐いた時、じわりと最奥に熱を感じた。

俺を見あげる北斗が、目を細めて微笑んで言う。

「あぁ、月が綺麗だ」

振り返っても、俺の位置からは月なんて見えなかった。

「ねぇ、北斗。ちゃんと言って?」⁡
⁡⁡
⁡まさか……と、悪戯っぽく訊けば、途端に視線を泳がす北斗が愛しくて、唇を重ねた。⁡
⁡⁡
⁡⁡

【終】


5/17ページ
スキ