君が僕を思うほどには僕は君のことをなにも知らない

【story㉓ 青の慟哭】


《北斗side》



「ねぇ、京本。今日だけは、俺の好きにさせて?」

そう言って唇を合わせたら、一瞬大きく見開かれた瞳から、瞬きに押し出された涙が、頬を伝った。

「北斗…?」

不安に揺れる瞳が、俺を見上げる。

もう一度、今度は食むように深く口づけたら、びくりと華奢な肩が震えた。

「…京本。口、開けて?」

おずおずと開く唇に舌を差し入れて、逃げる舌を絡めると、途端に京本から甘い吐息が漏れる。

「…ふ、、ぁ、、ん、、」

頬を伝う涙を拭いて、手のひらで後頭部を支えてから、更に深く唇を合わせた。

何度も角度を変えて、舌を絡めては甘く吸いついて、上顎をなぞる。

「…ん、、待っ、、苦し…」

弱々しく胸を押す京本の腕を掴んで、手のひらを合わせて繋ぐ。

「京本…もっと…」

「は、、んぅ、、ほく、、、」

ガクンと京本の膝が落ちるのを、咄嗟に腰に腕を回して支えた。

「……は、、ごめ…」

「そんな、気持ちよかった?」

親指の腹で濡れた唇を拭って、悪戯っぽく微笑んで見せれば、京本は顔を真っ赤にして腕の中で俯いてしまった。

そっと鍵をかけて、京本を縦抱きに抱えて移動する。

「…え、うわっ!ちょっ、、北斗!?」

「ダメだから。俺から目を反らさないで?」

シャワー室のドアを開けて、洗面台の前に京本をおろして、ブレザーに手をかけた。

「北斗…ま、まだ夜じゃ……」

ネクタイを取ろうとして、焦った京本に手首を掴んで阻まれる。

「大丈夫。外の方が煩いから、どんな声出しても聞こえないよ」

掴まれたまま引き寄せると、すっぽりと腕の中に収まる華奢な身体。

首筋に顔を埋めて、唇を這わして言う。

「脱がせてよ、京本」

「…んッ、、」

耳元で囁いたら、堪らず吐息を漏らす反応はいつもの京本で、弱い所を攻めたら、後は欲に従うだけだ。

でもそれは、誰にでもそうなってしまうかもしれない危うさを孕む。

これが俺ではなくて、例えば樹でも…。

チリッと灼けつく胸の痛みを、これから何度経験するのだろう。

そんなことを思いながら、ゆっくりとシャツのボタンをはずしていった。




【㉔へ続く】
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