君が最後に笑うなら

【きみが最後に笑うなら ㉔-Ⅱ】



《大我side》



「……ん…つぅッ」

目が覚めて寝返りを打とうとしたら、全身の筋肉が悲鳴をあげる。

酷く抱かれた訳でもないのに…、もう少し運動しないと。


ふと隣を見ても樹の姿はなくて、あまりの俺の醜態に嫌気がさして、早々に帰ったのかと悲しくなった。

次に会った時に、どんな顔をすればいいのんだろう…。

気怠い身体を起こして、カラカラの喉を潤すためにキッチンまで移動して、棚から常温のペットボトルを取り出す。

それを半分まで飲み干したところで、ペットボトルを危うく落としそうになった。

「…樹」

ソファで身体を丸めて眠る樹を見つけて近付くと、穏やかに寝息を立てる手には、昨日貸した俺のシャツが握られていた。

「なんでこんなところで…」

セミダブルのベットは男二人では少し狭い気もするけれど、寝れないわけではない。

ソファで眠る樹の気遣いが、さっき気落ちした分、余計に俺の心にしみる。

「きょも…こっちおいで…」

不意に薄目を開いた夢現の樹に腕を引かれて、樹の身体に乗せられて、向かいあわせでピタリと重なる。

「……樹?」

「ん…ちょっと…このまま」

まだ眠いのか掠れた声で、樹が呟く。

「うん」と短く返事をして、しばらく心地いいリズムで拍動する鼓動に耳をすませた。

「きょも…身体、大丈夫?無理させてごめんな」

そっと髪を撫でられて、今度は覚醒した声で訊く樹に、顎を上げて答えた。

「……謝らないで。大丈夫だから」

次の瞬間、樹が腰に腕を回して、くるりと反転させられて、樹が俺に跨る。

「もう一回は無理だよ?」

「なっ!そんなこと考えてないからっ」

「どうだか…」

緩く芯を持ち始めた樹の下腹部に視線を遣ると「これは生理現象だって!」と、顔を紅くして、ソファから降りてゆく。

「なんか軽いもの作るから、きょもは寝てて」

樹が乱れた髪を掻きあげる仕草に、鼓動が跳ねた。

____あれ?





樹が作ってくれたスープと、トーストには目玉焼きを乗せて、俺には紅茶、樹はコーヒーを準備して、いつものように向かいあわせで座るダイニングテーブル。

「なんか…。こんな時に食べる朝食って、恥ずかしいね」

んふふ、とスープカップに口をつけたまま思わず含み笑いをしたら、コーヒーを一口含んだ樹が、軽く吹き出した。

「ちょっと、樹っ」

「きょも!わざわざ言わなくていいから」

ティッシュで口元を拭きながら、首の後ろを掻く仕草は照れ隠しからだろう。

「でも、こんな朝も悪くない」

言って、トーストを一口かじった。

いつも朝食は一人だから、誰かと食べるのも悪くはない。

「そうだな」

数拍の沈黙の後、樹がぽつりと呟いた。




【続く】
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