君が最後に笑うなら

【きみが最後に笑うなら ㉓】


《樹side》


きょもの手が、なにも無い空間を彷徨うから、その手を取って首に誘導する。

まるで焦点の定まらない瞳が、虚ろに俺を見つめる。

「…あ…ぁ……樹…ッ」

「……きょも、なんて顔してんの。ほら、俺を見て?」

きょもの怯えたような表情。

_____この違和感はなんだ?

額から頬に唇を寄せて、最後にしっとりと唇を重ねた。

「………樹?」

「そう、俺。唇噛まないでよ、きょも」

噛んで紅く染まる、きょもの形のいい下唇をぺろりと舐める。

「んッ……」

そのまま首筋から、さらに下へと下がりながら、ゆっくりと後ろへと指を這わせて、ひくつくそこへ沈めれば、思った通り柔らかく受け入れる。

_______あいつとも…。

わかっていたのに、チリッと痛いくらいに胸が灼ける。

「きょも、力抜いて?」

慣らさなくても十分なそこに自身をあてがうと、浅く呼吸を繰り返すきょもが、目を閉じて詰めた息を吐いた。

その瞬間を逃さずに、きょもの中に自身を沈めた。

「―――ッ!うぁぁッ…は…ぁッ…じゅ…り…ッ」

きょもが縋るように、ぎゅっと首に抱きついてくるけれど、俺も初めての経験から手加減ができそうにない。

それでも慎重に根元まで沈めて、入口に比べて随分と狭いきょもの中に驚く。

_____この違和感の正体は…。

「樹ッ」

きょもが眉間に皺を寄せる様は、それだけで俺の質量を増す。

「んんッ…やッ…もうッ」

「ごめん。やだって言っても、やめてやれない」

耳元で低く囁いて、 きょもの髪を梳く。

「樹…」

名前を呼ぶ声が切なくて、俺を揺さぶる。

「……きょも。もしかして、最後までは初めて?」

そう訊けば、弧を描く瞳が大きく見開かれた。

______そうか。違和感の正体は、これか。


「樹…。俺…怖い…なんか…変…」

カタカタと震える肩を両腕で包み込んで、できるだけ安心させたくて、口づけた。

きょもも初めてのことに、戸惑ってる。

俺が持っていかれてどうする。

「……きょも、大丈夫。優しくするから、一緒にいこうな」

「…うん。樹で…満たしてよ…」

涙を溜めて揺れる瞳に、情けないくらい戸惑う俺が映る。

今までこの行為に、こんなにも緊張したことはなかった。

それなりに好きな相手もいたはずなのに…。

今この瞬間の俺は、ほんの少しもきょもの心に傷なんて付けたくはないと、今までの行いを信じてもいない神なんてものに懺悔する。


だからどうか、きょもの頑なな心を溶かすチャンスをくれないか。



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