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イチジ

僕は貴族だ。

有名な国王の娘だ。

そう、``娘´´だ。

そこで必ずと言っていいほどある事が起こる。


``政略結婚´´


嫁入りしなければならない。

最悪だ。

何故好きでもない奴と結婚なんて……!!

それによりにもよって相手はヴィンスモーク・イチジ。


分からないみんなの為に説明をしようか。

ヴィンスモーク・イチジとは、ジェルマ王国の国王、ジャッジとその嫁、ソラの間に生まれた長男坊。

ジャッジはジェルマ66の総師でもある。


……一応これでも情報網だけは広いからね。

女貴族は何も出来ないなんて言わせないよ。


で、話を戻そうか。

今、まさに……


「──誓のキスを」


式中なんですけどぉぉぉぉぉ!!!

どうやったら止めさせられますかね!?

キスとかファースト!!初めてなんですけど!!

何で初めてを好きでもない人にあげなきゃいけないの!?


でもいくら僕が強くても……ヴィンスモーク家には勝てない。

人間じゃない奴が三人もいるんだから……。

諦める運命しかないのか……。


自問自答している間にベールが上がる。


「っ、」


そんな筈ない!有り得ない!

……僕の瞳に映り込んだイチジの顔が、ちょっとだけ、ほんの少しだけだけどかっこよく見えたとか……!!

絶対ない!!


「大丈夫か?」


小さな声で呟くように、イチジが心配の声を掛けてくれる。


「ぁ……ぅん、はい」


小さく頷く。


待って、イチジってこんな優しかったっけ!?

僕、もしかしてイチジの何かを勘違いしてたかもしれない……。


身長差が大きい為、僕が背伸びをする。

段々と近付いてくる、イチジの整った顔。

反射的にぎゅっ、と目を瞑る。


待って、心臓が五月蝿い……。



額に柔らかい感触が。


「!?」


ひ、額……?


それから5秒程たった頃だろうか。

唇が離れた。


その時のイチジは薄らと微笑んでいた……様な気がする。


多分分かってくれてたんだ……。

イチジ(さん)の事、あんまり好きじゃないとか、ジェルマ66自体が好きじゃないとか。


顔に熱が集まる。









あぁ、政略結婚の筈なのに、このままじゃ本当に貴方の事、好きになってしまいそうです。








またの御来店を心よりお待ちしております。
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