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クラッカー

「クラッカーさーん!どこですかー!」



今朝から私の旦那さんの姿がない。


流行り病の予防接種だからよね、きっと。痛いのが嫌いって言ってたもの。

思わず子供かっ!って突っ込みそうになったけど。



「クラッカーさんってばー!どこにいるんですかー!出てこないと私嫌いになっちゃいますから!」



すると渋々私の前に姿を現したクラッカーさん。


注射なんて一瞬チクッとするだけなのに。



「予防接種して下さい!」

「痛いのは嫌だ」

「でもクラッカーさんが病にかかったら大変です。私だって心配しますし!」



ビスケット大臣の彼が病にかかれば、国が大騒ぎになるだろう。


あっ!そうだ!



──もし注射を嫌がった時は、ご褒美にキスしてあげるって言えば絶っ対してくれるわ!



プリンちゃんが言ってたことを思い出す。



「クラッカーさん!もし予防接種したら、その……キ、キス……してあげます、から……」



段々声が小さくなっていくのが自分でも分かる。最後の方は声すら出てないかもしれない。


恥ずかしくて思わず手で顔を覆う。



「本当か?」

「はい……」





その時はまだ、まさか、あのクラッカーさんが本当に注射をするなんて思っていなかったのだ。





「おい、約束だぞ」

「……目、瞑っててくださいね」



ゆっくり深呼吸をして目を瞑る。



──ちゅっ



「っ、」



私は自分のしたことに恥ずかしくなって部屋を飛び出してしまった。





「あの顔は反則だろ……」



だからその後照れて顔が赤くなったクラッカーさんのことは知らない。









またの御来店を心よりお待ちしております。
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