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カク

私はガレーラカンパニーの社員。元々船マニアだったお陰で、結構腕が立つ方だと思う。


そして三年前にここに来たカクさんに恋をしている。

くりくりの大きな瞳、長い睫毛、長くて四角い鼻、ちょっと低めの落ち着く声。全部が好き。


仕事中にも視線がいっちゃってアイスバーグさんとか鳩のハットリとかに注意されることもしばしば……。



「のう」

「ひゃ、ひゃい !!」



しまった!カクさんに急に声を掛けられて噛んじゃった!



「ククッ、なんじゃその返事っ」



そう言ってカクさんは笑いを一生懸命堪えている。


いっそ笑い飛ばしてくれた方がいいんですけど。



「五月蝿いですよ!……で、用は何ですか?」



私のところに来たってことは、恐らく船の構造上とてつもなく複雑で修理が大変だったのだろう。



「あぁ、これなんじゃが……」



大まかに船のつくりが描かれたものを渡される。



「あー、これは多分今から約五百年前に造られた、レタール号のレプリカ船ですね。過去に造られた船の中でも、構造が非常に複雑になってます。私が代わりましょうか?」



そう言って椅子から立ち上がる。



「わしも付いていってええか?」

「勿論です!というか、寧ろ私が付いてきてほしいくらいです。この船は直せる船大工さんがほぼいないので、一人でも増やしたいんです!」



するとカクさんの顔が一瞬歪んだように見えた、のはきっと気のせい。





修理が終わり、自分の持ち場に戻る。

その頃には、真っ青だった空が真っ赤に染まっていた。



「やっぱりお前さんは凄いのう」

「いえいえ、ただ趣味が高じただけですよ」

「……そういう謙虚なところもじゃ」



そう言ってカクさんは私の頭をぐしゃぐしゃと乱暴な手つきで撫でる。


顔が熱い。絶対朱くなってる。



「そ、そそそういうことを異性にするのは好きな人にじゃないと──」

「わしがお前さんを好きって言ったら?」

「え?」

「好きだったらこうしてもええんじゃろ?」

「え、ま、まぁ……」



カクさんの表情は真剣そのもの。


カクさんが、私のことを、好き?

でも嘘をついてるようには見えないし……。


すると不意に抱き締められる。



「付き合うてくれんか?」



心臓が五月蝿い。



「はっ、はい!」



当然のことながら、そのあと見ていた社員全員に冷やかされた。









またの御来店を心よりお待ちしております。
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