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イチジ

「ニジ様!見てください!」



その場でくるりと回る。


先日ジャッジ様に了承を得てメイド服のスカート丈を短くしたのだ。

こっちの方が断然動きやすい。



「あぁ、見た」



そう言いながらお菓子に夢中なニジ様。


絶対見てないだろお前、と心の中で悪態をつく。



「どうですか!?」

「まぁいいんじゃねーの、短ぇけど」

「……変ですかね、これ」

「いやだから変じゃねぇって」

「あ!ヨンジ様!これどう思いま__痛ぁっ!! 誰殴ったの!」



振り返ると、そこにはイチジ様が立っておられました。←



「お前は少し黙っていられないのか」

「はい!静かにしてると考えただけでむず痒いです!ところでイチジ様はこの服どう思いますか?」

「……短い」



え、それだけ?



「か、可愛いですか?」

「服がな」



服が!? いやそこはお世辞でも可愛いって言うところじゃないの!?


しゃがんで床にのの字を書き始める。



「……しょぼくれモード入っちまったな」

「こうなると長いからな」



ニジ様!ヨンジ様!聞こえてますから!面倒くさそうに言ってるのとか全部聞こえてますから!



「おい、立て」



そう言って私に手を差し伸べるイチジ様。

取り敢えずその手を掴んで立ち上がる。


なんだその態度の変わりよう。やっぱり考え直したのか!←



「元の丈に戻せ」

「な、何でですか?」



恐る恐る聞いてみる。


やっぱり似合わなかったのかな。



「他の奴に見られてると思うとイライラする」



イチジ様はそう言った。


いやー、あのイチジ様でも嫉妬なんてするんだね。



「イチジ様がそう仰るのなら」



私がそう言うと、イチジ様は満足そうに笑みを浮かべ、くちづけをして元にいた(と思われる)場所に戻っていった。


私は夕焼けの如く朱く染まった顔のまま暫く動くことができなかった。





「……俺たち空気だな」

「あぁ、だな」









またのご来店を心よりお待ちしております。
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