宇宙人は地球人と交信を図って仲良くなりたいだけなんです


 デートにあたって、2人は歩き慣れない街並みの中ゆっくり歩みを進めていた。鋼田一はミキタカに縋り付くように彼の腕を掴んで、ミキタカはそれを横目に、しかし目的地は明確なようで道には迷わず進んでいた。


「デートって言ってもなにをするんですか?」


 実際は平地なのだがまだふわふわする足元を気にしつつ、鋼田一はミキタカに話しかけた。もう2、30分は歩いただろうか。


「食事です。ワタシは鋼田一さんの作るご飯がとても好きですが、たまにはこちらからご飯を食べて頂こうと思いました」


 ミキタカは鋼田一に目線を合わせそう答える。そう言った後はすぐにまた道路を見るために正面を向いた。鋼田一は構わず質問を続ける。


「その…変なこと聞くんですけど、お金は…」


 私何も持って…ないですが…と小声で鋼田一が俯き呟くが、そんなことは気にもせずミキタカは


「母親にせびりました、
今日は何をどうしても大丈夫です。」


と答えた。鋼田一は、高校生みたいなところもあるんですね、と言いたかったが彼の母親は洗脳されていると言っていたのを思い出し、お金を盗んだに近いのか…?という考えが頭に巡りいやいや、と首を振る。それを見てミキタカは


「あ、違いますよ。これはお小遣いです。
ワタシも母の手伝いをしたりして、ちまちま集めたものです。盗んだりしてませんよ」


と言う。その時は目を見開いてぽかんとしていた鋼田一だったが、やがて「いや、頭の中さらっと読むのやめてくださいよ」と冷静に口に出した。

 道なりに進んでいくと、看板が立っているのが見えてきた。そこには『イタリア料理 Trussardi ここ左折100m先』と表記してある。しかし鋼田一には、いつも鉄塔からこの街を見てきたけどこの先には霊園があったような…?という思考が頭をよぎる。まさか霊園に向かってるわけじゃないよな、思いつつ歩いていると、


「鋼田一さんは苦手なものはありませんか」


と、今度はミキタカの方から話しかけてきた。


「え。えと…ないです。私は外が苦手なくらいで」

「よかったです。ワタシは実はサイレンの音がとても苦手で。もし聞こえた時には、頼ることになるかもしれません」

「へぇ、なんだかミキタカさんに苦手なものがあること想像できないです」

「私だって『人間』ですから。」

「ジョークに聞こえますよ」


 そして2人は目を合わせて微笑む。
 2人の質問内容も先ほどからの会話も、どんな人が見たって本当に他愛無いものであったに違いない。しかしこの2人は『外』における話題や会話をするのはほとんど初めてで、この他愛のないと思われる会話自体がミキタカと鋼田一にとって、今、大切だと互いに感じているのである。
 
 一時は会話でブレた霊園のことだったが、結局看板に書いてある指示通りにミキタカはどんどん霊園の方へと進んでいった。多少不安になる鋼田一を横目に、2人の歩みは霊園の入り口まで行かず、その数メートル手前の小さな建物の前で止まった。


「あ、着きました。ここです」

「ここ…?」


訝しげ顔の鋼田一に向かってミキタカは大丈夫ですよ、と言う。


「ご飯がおいしいところです。以前億泰さんに教えていただきました。『トラサルディー』といいいます」


 鋼田一自身はこの店に覚えがなく、いつも俯瞰で見ている街並みと実際歩いてみる街並みの違いをここで初めて実感した。


「ここ、新しい建物が立ったのは知ってたんですが、レストランだったんですね。」


そして店の風貌を上から下までじっくりと見る。やがてその視線が店の扉の前で止まり呟く。


「なんか私、ほんとに外に出るの久しぶりだから、お店に入るのも緊張しちゃうな…」


 しかし、「大丈夫です、一緒にいきましょう」
と返事が返ってき、手を引かれた。

 店頭にはおすすめメニューが書いてあったのまで見えたが、鋼田一はグイグイ引っ張られてしまったためその内容までは見られなかった。
まぁあとでメニューは確認できるだろうと思って店内に入ると、目の前に大きなコック帽の外人が立ちはだかって声をかけてきた。


「いらっしゃいませ」

「こんにちはトニオさん」


トニオと呼ばれた大男は、こんにちは、と挨拶を返してニコ、と微笑んだ。


「ミキタカサン…と、そちらの方ハ?」


トニオは鋼田一の方に目線を動かす。


「鋼田一さんです。今日はデートに来ました」

「恥ずかしいからやめましょうよ…」


 鋼田一はどうやらミキタカとトニオが顔見知りであることは理解したが、トニオもミキタカとは違う雰囲気の掴み取りづらさがあり、どうしようかと腰がひけていた。だがトニオは


「オー、はじめまして。
ワタシ、イタリア人でス、トニオ・トラサルディーと言います。トニオ、と呼んでください。
デートはイイことデス。さぁこちらの席にドウゾ」


と自己紹介と案内をすらすらと終わらせてから、厨房の方へ早々と去っていってしまった。ミキタカもそれに「ありがとうございます」と返し、先に案内された席に着いた。


「鋼田一さんも早く座りましょう」

「…なんか、不思議なところですね。」

「料理はとてもおいしいですよ」


 そう言われて眉をしかめつつも、ようやく鋼田一も椅子を引いて控えめに椅子に腰掛けた。そしてメニューを見ようと思ったが、テーブルの上にはメニューがないことに気がつく


「メニューないみたいですが、どうやって注文するんですか?」

「このお店はトニオさんがお客さんに合わせて料理をつくってくれます」

「はぁ〜、そんなお店もあるんですね」


 そこにトニオが水を持って帰ってきたので、ミキタカが「トニオさん、いつものでお願いします」と伝えた。
 トニオは「オ・カピート」、と言ってはにかみ、また厨房の方へと返っていく。
 机には2人分の水だけが置かれている。


「……」

「……」


 そして鋼田一は、少しの沈黙が気まずく感じ何を話そうか思考を巡らせはじめた。

いつものってなんか常連ぽいな
よく来るのかな
なんだか喉が渇いた気がする…

…というか自分は、「恋人になることについて」が1番聞くべきことだと分かっている…

 店の改まった雰囲気のせいか妙に緊張して、結局彼は話題も声に出せずもごもごと口を動かすだけにとどまってしまった。


「どうしました?」


それにミキタカが気付いて声をかける。


「な、なんかいざこういう風にお出かけすると、何話したらいいのかわかりませんね…」

と言うと、「そうですか?ワタシは楽しいのであまり気にしていませんでした」と返ってきたため、

「あ、はは、そうですか」


と鋼田一は笑いつつ、異星間ギャップにほんのちょっぴり心細くなった。どう切り出そうか悩んでいたが、ミキタカが「ではいつもみたいにお話しましょう」と言って、と鋼田一からの話題を待ってくれたため、その「間」に鋼田一は少し甘えさせてもらおうと考えた。

……そして結局5〜6分の沈黙が続いた。
心配したミキタカがそろそろ自分が話しかけてもいいかなと口を開こうとした時、やっと鋼田一が辿々しく言葉を発した。


「ミ、ミキタカさんって、その…ほ、ほんとに私と恋人になるつもりなんですか…?」


やっと声に出せた。
 安堵して息をつく鋼田一を他所に、ミキタカは疑問符を浮かべたような表情で、


「ほんとに…とは?ワタシは嘘を言っているつもりはありません」


と答えた。そこに鋼田一は続ける。


「え、その、自分で言っちゃってなんだけど、普通恋人って男と女でなるもんだし…」

「鋼田一さんはイヤだと思っているのですか?」


飄々とした態度でミキタカは答える。


「いや、そんなことはないですけど…」

「ならいいじゃないですか。ワタシ、鋼田一さんとならなんでもイヤじゃないですよ」

「う〜ん、でも、恋人ってその…フったりしなかったら、人生終わるまでずっと一緒なんですよ。ミキタカさんってそれでいいのかなって…」

「鋼田一さんはイヤなんですか?」

「その聞き方ずるいなァ…」


水掛け論であった。


「ワタシは言った通り、
鋼田一さんと一緒にいたいと思うので」

「でも、その、そのですよ。例えばミキタカさんも、普通に恋するじゃないですか、女の子と。その機会を奪っちゃうの申し訳ないし…それに私はこれから先も鉄塔から出られないから、私と恋人になるってことはミキタカさんも鉄塔に縛られちゃうというか。」

「ワタシがオンナノコとコイ…?」

「だからあの…女の子と…恋……人に………」

「女性とコイビトに」

「えっと、私以外に好きな人ができるってことですよ!」

「そんなことあるんでしょうか?」

「これから先、私と一緒に過ごさない時間を別の人に充てたら、多分あると思います」

「え、鋼田一さんと一緒に過ごさないんですか? 寂しいじゃないですか」

「んーーっ」


 常識が通用しない宇宙人にどんどん自分の考えをぶった斬られて、鋼田一は頭を抱える。ミキタカはそんな彼を見て不思議そうな顔をする。


「鋼田一さんは何をそんなに気にしているのですか?セケンテイ?」

「いや、なんか、いざ恋人!とか言われると気が引けてきちゃって。申し訳ないというか、なんというか…」

「ワタシはコイビトになれるなら嬉しいのに、鋼田一さんはそうだと悲しいんですか?」

「…えーっと…」


 コイビトになりたいと言われ、キスしてからの鋼田一の生活は、夜な夜なミキタカとの関係をどうするか悩むものだった。

 ミキタカのことは好きだ。
でもその好きってやっぱり恋人のものではない…気がする。しかも自分では何かダメな気がする。
 なぜそんな気がするのかはわからないが、ミキタカに選ばれていいほど自分がいい人間だとも思えない。
 そんでもって、敵だったし…

とまぁそんな調子で、なんとか断る理由を正当化しようと毎晩毎晩頭を抱えて布団に蹲っていた。

 と言うのも、断わる理由が正当になければ、自分は全然ミキタカと恋人になれてしまう。だが自分はそれだとなんだかダメな気がするので、断わる理由を…と、もう堂々巡り、こんな調子で鋼田一はここ1週間は十分眠れていない


(いや、とりあえず、落ち着いて水でも飲もう)


 そう思いテーブルに置かれた水に手を伸ばした。
 「ミキタカと恋人になれる」という立場、それになんだかドキドキしている自分は確かにいた。
 その反面、ミキタカのようなキラキラしている人間(?)に選ばれ、この人を鉄塔の中に閉じ込めるなんて自分は足枷になるのではないか?という考えも捨てられなかった。
 昨日だってそうしてグルグル悩んでいた。
(なんなら今日デートすると思ってなかったので今日の夜もそうやって悩む予定だった)

 そして、悩みに悩んでいると、なんだか少し泣けてきた。


「なんか…涙が…」


…………?
いや、ちょっと待って、涙止まらないな。
出過ぎじゃないか?待て、なんか自分の周りビチャビチャじゃないか!?なんだこれ!?


「すごい!鋼田一さん!白目のところが萎むくらい涙が出てます!面白いですね、特技ですか?」


 ミキタカが嬉々として自分の顔面を覗き込んでくるが、鋼田一はそれどころではない。


「ええ!?なんで!?特技じゃないです!!」


と、ここで厨房から返ってきたトニオがその様子をニコニコと見ながら料理を運んでくる。


「トニオさん!なんですかこれ!?」


大声でそう問うが、それに全く動じずトニオは
「アナタは昨日睡眠不足だったようですネ〜」と答える。


「あれ、どうしてわかるんですか…」


と不思議そうに大泣き(?)しているとミキタカがハンカチを鞄から取り出し、


「トニオさんはなんでもわかるので、料理で悪いところを治せるらしいです。鋼田一さん、ハンカチどうぞ」


と言った。
そしてその言葉でなんとなくこの涙の理由にが分かった気がした。


「ありがとうございます…
なるほど、トニオさんは、スタンド使い…なんですね?」


そう確認すると、トニオは「シー」とだけ軽く返事をして、


「さ、料理をお出ししマス。
こちら仔牛のカルパッチョデス。ミキタカさんは杜王町のお野菜を使ったバーニャ・カウダをドウゾ」


と机の上に料理を並べた。


「ありがとうございます、料理も来たので食べつつお話ししましょうか」

「ありがとうございます、いただきます…」


とトニオにお礼を言って先にミキタカからハンカチを受け取ろうとしたところで鋼田一は気付く。


「ミキタカさん!!これはハンカチじゃなくてミキタカさんの手!俺で遊ばないでください!」

「バレちゃいましたか」


 そのように少し戯れたあと、2人は食事のためにナイフやフォークを手に持ちはじめた。料理が運ばれてきてからは食べることに集中しだしたので、話題は「恋人について」からだんだんと逸れていった。
 加えて、鋼田一がなんだか目がスッキリしたことに気が付いたのは次の料理の効果が発揮されはじめた時だった。






✴︎






「デザートをお持ちしますネ」

「なんか…なんか、どっと疲れたような、爽快感がすごいような…」

 結局フルコース全部の効果を食らった鋼田一は、体が熱くなるやら肌に潤いが戻るやら巻き爪が爪ごと吹き飛ぶやらその他もうなんやかんやで散々な目に遭い、体調全回復の反面メンタル的な疲労感がどっしりと残ることとなった。
 いや、料理は本当に美味しかったのだが。

 しかも横でミキタカは毎回楽しそうに鋼田一の変化を見ているので、なんとも気恥ずかしい気分だった。


「鋼田一さん面白かったです。ワタシはあんな風になったことは一度もないので」


その言葉にトニオが申し訳なさそうに反応する。


「ミキタカさんだけは、どうもワタシの料理では掴めない部分があるようで…完璧を提供できなくて申し訳なく思っておりマス」

「美味しいので大丈夫です。ワタシ、こちらの料理の味は全部とても好きですよ」


とミキタカが言うと、トニオは安心したような表情で「グラッツェ!」と返す。

 疲労感もさながら、なにも食らっていないミキタカに多少恨めしげな顔をしつつ鋼田一は、「ミキタカさんはもう何回もここにきてるんですか?」と問いかける。


「そうですね…何度かお邪魔させていただいています。気に入っているので、今日鋼田一さんを連れて来れて良かったです」


 そんな返答を返されるので、ほんの少しだけ頬が緩む。自惚れているようだが、この人は本当にオレの話ばかりするなと鋼田一は思う。

 2人席について、食後のデザートが来るのを待っている。普段は鉄塔でしか過ごせないため、この時間が貴重で、奇妙で、優雅な、ゆったりとした時間に感じられた。


「えっと…この後って、何か予定とかあるんですか?」


ふと、鋼田一が口を開く。


「いいえ、食事をしようと思っていたのでこの後は何も。それに仗助さんたちを長いこと待たせるわけにもいきませんし。」


 ミキタカのその返答に、鋼田一は「あ、そうですよね…」と呟く。どうやら自分は普段過ごせない時間が、ほんの少し名残惜しく感じられたようだと鋼田一は自覚をする。しかし、東方仗助たちは待たせるとどう怒ってくるのかもわからないので怖いし、散々恋人ということにマイナスに対応してきた自分が言うようなことではないなとも思う
 そして2人で過ごすこと自体は、あの鉄塔でもできることだ。

そう思っていた矢先、

「…まだ何処かに行ってみたいですか?」

と、目の前から声が聞こえた。


「え!いや、その…」


 行きたくないわけではないけど、諸々の事情もあるし、良い歳して我儘も言ってられないしと焦った様子の鋼田一とは裏腹に、ミキタカは言いたいことを悩むまでもなく口に出してくる。


「行きましょう!」

「え…」

「ワタシは鋼田一さんともう少し遊びたいです
仗助さんたちには申し訳ないですが」


 本当にこの宇宙人は、照れるそぶりもなくそんなセリフが出てくる。だが鋼田一の気持ちも今は彼と同じだった。


「あ、え、その、お、オレも…もう少しだけ」

「では億泰さんの好きなアイスクリーム屋さんに行きましょう、鉄塔への道沿いにあるので」


 ミキタカはそう言ってにっこりと笑う。
 こうやって始終高校生に引っ張られて、ちょっと情けないなと鋼田一は思う。その一方で、自分は人見知りで計画ごともできない優柔不断だが、ミキタカはいつも迷うことなくはっきりと自分を先導してくれる


そう思うと、相性自体は悪くないのかな


そう考えかけた思考を、「デザートをお持ちシマシタ」と言ったトニオの声が遮った。







✴︎






「アイスなんて食べるのほんと何年ぶりだろう」

「アイスクリーム、ワタシも好きです」


 そのセリフに、ミキタカの星にはアイスがあるのか聞こうかと思った鋼田一だったが、すぐ注文しに並ぶ羽目になったので結局声に出すことは叶わなかった。

 休日の昼間のアイスクリーム屋『ICECREAM RAINBOW』は、遊びに来た女子高生や家族連れなどで、やんわりと席が埋まっていた。そんなアイスクリーム屋の店内の端っこ、小さな席に、トラサルディー同様2人は向かい合って座った

 設定上地球に馴染んでないはずの宇宙人が熟れてアイスを頼む一方、この街の鉄塔に住む男はそもそもアイスクリームなんて物を本当に数年ぶりに食べるため注文もぎこちなく、食べ方もなんだか忘れている気がした。


「トニオさんのところでデザートも食べたのに、甘いものが続いて大丈夫でしたか?」

「あ、いや、全然大丈夫です。
ほんとにいつも食べるものとは全然違うので楽しいし…」


 それは良かったです、と言ってミキタカはアイスを口に含む。ミキタカはストロベリー&チョコチップを、鋼田一は抹茶を選び、2人とも控えめに小さいサイズを選んだのだった。

目の前で小さなスプーンでアイスを食す異星人相手に、鋼田一はそういえば、と声に出す。


「ミキタカさんって、気にしないですよね」

「なにがですか?」

「その…オレが、ミキタカさんに、嘘しか言ってないこと…というか。その…あの…」


口に出してみて、なんでこんなこと話しちゃったんだろうとちょっと後悔する。あんまり楽しい話題ではない。


「ウソ?」

「うーんと、オレ、名前も偽名だし、顔もマスクだし。今もミキタカさんのことは、すごく信頼してるんですけど、結局本当の自分なんて一度も出せないままで。」


 そしてあわあわと、無理やり言葉を続ける。
 鋼田一はミキタカが彼の好きなアイスの味を選んだ時、相手が素直に(まぁ嘘かもしれないが)宇宙人だとか、苦手なものだとか、好きな味を自分に向けてなに一つ隠してないことに薄らと気がついた。それに比べれば自分という存在は戸籍も姿も味の好みも生活のために作り上げた嘘だらけのものなのではないか、ということと同時に


「こんなに隠し事してるのにミキタカさんは、自分の全部を出して話してくれるじゃないですか」

「そうですね」


ミキタカがそれを肯定するので、少し心臓が縮んだような思いがする。だが続ける。


「だからオレ…その、不釣り合いな気がして。
平等じゃないというか、公平じゃないというか」


 また自分とミキタカでは恋人になってはダメな理由だった。しかし、先ほどの世間体などに近い理由に比べればどちらかといえば自分の気持ちに近い理由だった。

 鋼田一は人付き合いが苦手だ。

 それは相手が悪いことも、タイミングが悪いこともあるともちろんわかっているが、それでもどこか自分にダメなところがある気がする。
 長年積んできた自己否定がなんとなく自分とミキタカがこれ以上近づくことを許していないのだと思った。「よく私に飽きないですね」、というようなニュアンスだったのかもしれない

 しかし当の相手本人はけろっとした表情で、


「そうですか?ワタシはあまり気にしていませんでした」


とか言うもんなので「えぇ…?」と口から怪訝さが漏れ、頭に疑問符が浮かぶ。

 なんで自分と公平だと思うんだ? なんで自分のことがこれでもかって言うくらい、嫌にならないんだ?

 そんな表情を浮かべる鋼田一に、小さなスプーンを加えて「うーん」と唸った後、ミキタカは鋼田一のアイスを指差して言う。


「鋼田一さんは、そのアイスがおいしいと思いますか?」

「え、あぁ、はい」

「今、楽しいですか?」

「えーと、はい」


それなら、と目を細め、
にっこり笑ってミキタカは言う。


「その気持ちは本物です。隠し事が多いといっても、鋼田一さんは自分の気持ちに正直にワタシと話してくれているとわかるので、ワタシは不公平に感じたことはないです」


その言葉に心がギュッとする。
嘘も受け止めてくれるような宇宙を目の前に、ほんの少しだけ蟠りが解けた気がする。


「…あの、オレ…」

「それに」

「?」

「言った通り、ワタシは鋼田一さんなら、マスクの下でもキスができます。鋼田一さんも必要ならマスクを取ってくれますよね?」


 まぁまぁ通る声での秘密暴露に鋼田一はさっきまであったまりかけた心が急に冷え、喉元がヒュッと鳴った。


「だからワタシは、鋼田一さんは最後には本当の鋼田一さんをワタシに見せてくれる気がしているんです」

「そ、それは!え、う、嬉しいのですが…!」


 鋼田一はミキタカにグッと近づき、人差し指を口元に当ててひそひそ声で言う。


「ここではあんまり大声で言わないでください…!」

「どうしてですか?」

「き、その、えーと…そういうのは、秘密にしとくことであんまり大声で言うことじゃないんです…!」

「なるほど。『二人だけの秘密』ですね。」

「うーんと、そうなるのかも…」


 慌てた反面、鋼田一は少し納得もしていた。
 なるほど確かに、ミキタカのように自分に物怖じせず付き合ってくれるような人物なら、いつか自分の方からうっかり秘密を明かせる時が来てしまうのかもしれない。
 頭の中が現在悩み事とネガティブ要素でいっぱいの鋼田一に反して、ミキタカは鋼田一が寄ったことで鋼田一のアイスのカーキ色が大きく目に入る。

 ミキタカは、億泰に「アイスクリームっつったらよォ、ストロベリー&チョコチップが定番だぜェ!」と吹き込まれていたので流れるようにこの味を選んだが、他の味があることをそもそも知らなかった。

 悩みつつも鋼田一がアイスに齧り付いてもぐもぐと口を動かしていたところに、ミキタカは声をかける。


「鋼田一さんのそのアイスは、美味しいと言っていましたね」

「あ、はい!美味しいです」

「わけっこしてもらってもいいですか」


 ちょっとだけ欲しくなってしまった。
 その気持ちは、相手が食べてる物を食べたいとか下心満載のものではなく、純粋に知りたいという欲だ。


「わ、わけっこ」


一方激しく動揺する鋼田一。
それにミキタカは淡々と返事をする。


「はい、同じ高校に通う『カップル』がアイスを共有することをそう言っていました」

「…ちなみに、恋人とカップルが同じ意味なのは知ってますか…?」

「え、そうなんですか。なぜ地球では同じ意味の言葉をいろいろな言い方でわけっこするのでしょう」

「え…その、いろんな人がいるからじゃないですか?やっぱり。はい、どうぞ」


 カップルのわけっこってロクな物じゃないのでは…と一瞬身構えた鋼田一だったが、話題の逸れ方から単純にこれは知りたいことがあるからだとも理解したので、手に持っているコーンに乗っかった抹茶の小玉をミキタカの方に傾ける。


「ありがとうございます、では」


そう言ってミキタカは自分が持っているアイスのカップを置いて、机に手をつきふんわりと距離を詰めてきた。

そしてミキタカの口に触れたのは自分が今目の前に出した抹茶のアイス…





ではなく正真正銘、鋼田一自身の口元だった。


「…………?」


「はい、どうぞ」の口のままミキタカにかぷりと食われてしまった鋼田一はしばらく呆然としていた。
 だがミキタカが味を探そうと口内をずるっと舌で舐めたとき、ようやく肉体の方に突き抜けたゾクゾクしたような感覚が伝わり、ブンッと後ろに思いっきり仰け反った。

そんなことをしておいてミキタカの次の一言は、


「なるほど、
ワタシのアイスより少し苦いのですね」


である。

 椅子の背と同化するくらい仰け反った鋼田一と、偶然みてしまい少し騒つく客らをよそに、ミキタカは口周りをペロリと舐めてまた自分のアイスをスプーンで食べ始めようとする。
 しかし流石にそこには鋼田一の悲鳴というストップがかかったのだった。



「………………え、ええええーーーーーーッ!?!?」


「どうかしましたか」

「どうもこうもなにも!!な、な、な、何も……!」

「何も?」

「う、うわーーーーッッ!!!」


そう言って鋼田一は頭を抱え、その体勢のまま肘をドンッッッと机に叩き下ろす(ちなみにアイスはギリギリ握っているので無事である)。
 それに比べると相手の反応のなんと平坦なことで、曰く。


「どうしたんですか」

「ミキタカさん!!!その!あぁいうのはあんまり人前でやりたくなくて!!その!!あぁもうなんて言ったらいいんだろう!」


 初めにそういうのはあんまり大声で言うもんじゃあないと言ったのは鋼田一のほうだった。それに気がつき「アッ!」とした顔をした後、ほんの少しの理性が彼の声のボリュームを落とす。
 そしてミキタカの目に訴えるように、いつもより開かれた目でミキタカを睨む。その顔は熟れたトマトの如く真っ赤である。


「コイビトはするものじゃないんですか?何か間違っていましたか」

「ま、間違って…間違ってはない、いや間違って……その…!」


というかまだ恋人ではないのでは?
いやいやというかやっぱりカップルのわけっこってそういう!?それは学生カップル特有の下心アリアリのやつじゃあないか。

 なにから言ったら良いのかわからずミキタカから視線を逸らしまた口をもごもごさせる鋼田一に、ミキタカは少し落ち着いた声色で声をかける。


「やっぱり、前と同じでイヤ…でしたか?」


眉毛は八の字で、目も笑うような寂しいような形で、言う。なんだか髪の毛までも萎れて見える。


「い…………」


その顔を見たとき、前の鉄塔でのキスが鋼田一の頭にフラッシュバックする。
そして頭に一つの問いかけが残った。



ミキタカにこんな顔をさせてまで
自分はまた嘘をつくか…?




「い、イヤ、じゃ…イヤじゃないです!」

「!」

「というか前もイヤなわけじゃなかったんです…!」


あぁ、言うことができた…
本当はもっと早くに伝えたかった言葉だった。

 ただ、今日。相手が自分に正直にいてくれるなら、自分もゆっくりでいいので正直になっていくことで、鋼田一はもしかして自分がミキタカと釣り合う人間になれる日が来るのではないかと、そんな考えが小さく彼の背中を押したようだった。


「え、本当ですか?」

「そうです、次会ったときは言おうと思ってて…傷つけてごめんなさいって…いや、違うそうじゃないんですけど!」

「詳しく教えてください」

「………その…は、恥ずかしくて。そういうことするの、すごく、すっごく、恥ずかしいんです…」

「恥ずかしい…」


 客観的に見ればキスした後恥ずかしい恥ずかしいと言っているイチャイチャカップルの方がすごく恥ずかしいものだが、生憎今ここにいる日本人にそれを口に出せる人はいなかった。
 客の中でSNSに状況を呟いた人間はいたかもしれない。

 そして「恥ずかしい」のだ、と言われたミキタカという宇宙人が返す言葉はこの一言。


「恥ずかしい、とは……」


 鋼田一は「ウワーーーーーーーーーッ!!!!!」と叫んで机に頭をぶつけてしまった。目で見て耳で聞く、体感型の地獄であった。
 手を離してしまった抹茶のアイスをミキタカが危ないですよと言って掴み取る。


「でも、イヤではないんですね」

「……そ、そうです…」


机に突っ伏したまま
くぐもった声で鋼田一は答える。


「鋼田一さんは、キスがイヤじゃなければコイビトになれると言いませんでしたか」

「…確かに言いました」

「では、ワタシたちはコイビトになれるのですか」

「…」


 隣の席のおじさんが、イヤホンの競馬より横の男性同士(いやもしかすると金髪の方は女性か?)のこの小っ恥ずかしい痴話喧嘩に聞き耳を立てていた。その奥の女子高生たちが「なにあれ?」と話し合い、反対側の席の家族の子供がつぶらな瞳で2人を見ていた。店員も、客の対応をしつつアイスのカウンター越しにそれから先の流れに耳を澄ましていた。

 店内は、そんなこと知らない赤ん坊と、今入ってきたお喋りなお客と、他数名の女子高生らのみが控えめに騒めいていた。

 そこに店員からはギリギリ聞こえないかくらいの声で、痴話喧嘩をしていた片方が話し出す。


「オレ、正直に言います…
その、えっと、アレ、その、キス…されたとき、全然イヤじゃなくて」

「はい」

「でも、ミキタカさんがそんなに好意を向けてくれているのに、オレは上手に返せなくて」

「そんなことはないです」

「いやでも…だから、どうしてかなって考えてて…」

「はい」

「…それで、ミキタカさんから受ける好意を、自分が認めるっていうのが、自分は何も好意を伝えられてないのに一方的に言わせてばかりだし、失礼で気恥ずかしく感じたんです……。
だけど、自分もミキタカさんのことは全然嫌いじゃなくて、むしろ好きで…」


 言葉に詰まった。悩み続けた夜のようにぐるぐると言いたいことが頭をめぐる。しかしミキタカは「ゆっくりでいいですよ」と伝えてくれた。
 それに頷き、支えられてやっと言葉が出てくる。


「…つまり、何が言いたいかっていうと…
お、オレが、ミキタカさんにその、こ、告白というか…」

「はい」

「オレの方から好きって言えたら、それでミキタカさんに受け取ってもらえたら、今までの分お返しできると思って…」

「ええと、つまり」

「その…こ、恋人になろうと決めたとき、
自分から付き合ってくださいって言おうと思ったんです…
だ、だから、もう少し、気持ちと言葉が整理できるまで、待ってて欲しいです」


鋼田一は、どれくらいかかるかわからないけど…とまた小さな声を落とす。

 伝えたいことがあったのだ。
 それは鋼田一なりの考えで、ミキタカを受け入れる手段だった。

 結局付き合うつもりなら何が違うの?という感じだが、鋼田一は考えた。ミキタカが常に自分を肯定し自分と付き合おうとするから、自己肯定の低い自分は遠慮しようとしてしまうのである。もし自分からミキタカに告白をするのなら、受け止めるのはミキタカであるからきっとそんなことは気にしないはず。告白する側に必要なのは、自分が言葉に出す勇気、それだけになるはずなのだ。
 それは受け止める側の心の準備より、大変楽に思えた。妥協案だったかもしれないし、責任転嫁だったかもしれない。

しかし鋼田一は分かっていた。
きっとこの目の前の宇宙人は、それでも。




「モチロンです!」



そう言って目をチカチカさせながら、
ゆるりと笑い肯定してくれるはずだと。

アイスは少しだけ溶けていた。
2人の温度で溶けたようだった。

ミキタカが嬉々として話し出す。


「あぁ、なんだかとても心が暖かいです。
この気持ちを何かで出力したいのですが、こういうときはどうしたらいいんでしょうか?」


 鋼田一も一生懸命に言葉を紡いだ疲労から「オレも…なんかわかんないです…」と曖昧な応答をする。すると宇宙人は、


「そうだ、『ハグ』しましょう。
前に由花子さんが康一さんにしているのをみたことがあります」


と言う。
 目が覚めたようにガバッと起き上がった鋼田一は、人目を気にするようにくるくると店内を見渡し、ミキタカの手を引いて店の出口の方へ向かっていく。

 ミキタカも初めはなんだろうという顔でその行動を見つめていたが、やがてあぁ、そうだ。『恥ずかしい』んでしたね、と意味を理解した。

 店外もそれなりの人通りで、鋼田一にとってはここでハグするのもまぁまぁの精神的ショックを負いそうだった。どうしよう…と考えていると、今度はミキタカが鋼田一の手を引っ張って道をまっすぐ進んでいく。


「どこへ行くんですか?」と聞くと、
「帰り道にいきましょう」と返って来た。


 2人は片手にアイスを、もう片方の手には互いの手を握りながら妙に高揚した気持ちで鉄塔に向かう道まで歩いて行った。
 なんとなく言葉は交わさなかったが、それでいいと思ったし、不思議と互いの気持ちが手に取るようにわかった。


テレパシーだったのかもしれない。






✴︎






「不思議ですね、地球では暖かい気持ちになるとなんだかその人に触れたくなります」


 街の外れ、鉄塔に続く道は、急に人気がなくなる。そんなに遅い時間でなくても、鉄塔の連なる平地に用がある人間なんてそうそういないだろう。
 だからそこに着いた時、ミキタカが「鋼田一さん!」と言って振り返り両腕を広げたのにも、鋼田一は(まぁ多少は周りを見回したが)比較的すぐに応答して両腕を広げ返した。

 覚悟なら決めたぞ、といった顔だった。

ミキタカはそこに向かって飛び込み、
鋼田一を全身をかけてガッチリと掴んでそのまま今に至る。


「感覚ですけど、わからないことはないです」

「ワタシの星ではこんな気持ちになることはありませんでした。この星に来てワタシの中の何かが変わったのかもしれません」


 抱きついているので互いの距離は近くても互いの顔は見えなかった。それでも全身で自分たちの温かさを感じながら、2人は鉄塔に続く道の真ん中でじっと動かなかった

抱きついた鋼田一の体越しに自分が持っていたアイスカップを見て、ミキタカは声を出す。


「あ、鋼田一さん、アイスが液体になってしまいました。アイスクリームって溶けてしまうのですね、知りませんでした」


 ミキタカはハグすることしか考えていなかったため、手に持ったアイスはまるで体の一部としか捉えていなかった。つまり気にしていなかった。鋼田一はすごい勢いで引っ張られつつも、ここに来る途中でなんとかアイスを食べ切ったようだったが。


 なんだ、アイスはやっぱりミキタカさんの星にはないんですね。そう言おうとして鋼田一はやめる。


 野暮なことを言うより今は、ミキタカの存在がここにあると思うだけでいいかなと思った。







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「仗助さん、億泰さん。遅くなってすみません」


午後6時を少し過ぎた頃、ミキタカと鋼田一はようやく鉄塔に帰宅した。


「おせーよお前ェ!
親父たちには先帰ってもらっちまったぜ!」


億泰が不満を顔と口調に露わにする。


「すみませんでした。これ、お礼と言ってはなんですが」


 そう言って手に持っているアイスクリームを億泰に差し出すミキタカだったが、「お、いいやつじゃん」と手を伸ばそうとする億泰を牽制し仗助が割って入ってくる。


「…どうせお前の手だろ」

「バレましたか。でも精度は上がっているはずです。今日味を知って来たので」

「アイスまで食って来たのかよ!
仗助、俺らも寄って帰ろうぜェ〜…」

「まぁ、楽しめたんならよかったっスよ」

「本当にありがとうございます、
とても楽しい時間が過ごせました」


 秋の中旬、ほんの少しだけ日暮れが早くなった空は夕方と夜の間を繋ぐ優しい紫色をしている。


「そんじゃあ俺らは帰るぜ。
なんだかんだゆっくり過ごせたし、今回はお互い様ってこった」


仗助がピクニックシートを畳み始める。
億泰も靴を履いてそれを手伝う。


「はい、ありがとうございます」

「お前アイス奢るくらいはしろよ」

「さっき渡したら受け取ってくれなかったじゃないですか」

「お前の体じゃなくて、本物の!」


 うだうだと口論するミキタカと億泰に、仗助は呆れながらも声をかけてやる。


「行こうぜ億泰、アイスくらい奢ってやるからよ」

「お、仗助ェ!お前いいやつだなァ」


そうすればたちまち億泰も笑顔になる。


「じゃあなミキタカ!この後どうすんのか知らないけどよ、気をつけて帰れよ」

「ありがとうございます、お二人ともお気をつけて」


 そしてミキタカと鋼田一は鉄塔の中へ、仗助と億泰は鉄塔の外へと入れ替わり、いつも通りの風景の中に鋼田一たちは取り込まれた。
 見えなくなるまで手を振る億泰達に、ミキタカもずっと手を振り返しているのを鋼田一は横から見ていた。
 ぶっちゃけあの不良少年2人の前では何をされるか分かったもんじゃあないので全く声は出なかったが、まぁ円満に終わってよかったかと見慣れた景色の中でほぅとため息をついた。

 手を振り終わったミキタカが鋼田一の方に振り返る。


「晩ご飯はどうしますか、鋼田一さん」

「オレはその…今日も作りますけど、ミキタカさんは食べていきますか」


ミキタカは目を細めて答える。


「はい、お言葉に甘えて。ところで…」

「?」

「いつ『告白』してくれるのですか?」

「そ!それは…
 あと、1ヶ月くらい待ってください…」


 目を逸らし気まずそうにする鋼田一を、まるで気にしないといったふうにミキタカは答えた。


「では楽しみにしておきます
今日も星が綺麗ですよ、鋼田一さん」

「そうですね」


 見上げれば空に雲はなく澄んでいて、1番星が見える頃だった。鋼田一は、この広い空のどこかにミキタカの故郷があるのかなと少しだけ宇宙に思いを馳せる。

そこにミキタカが

「見ながらまたゆっくりお話しましょう」

と声をかけるので、こちらも「はい」と笑って答え、晩ご飯用に道具や材料を持ち、2人はいつものように鉄塔へと登っていく。




鉄塔からみる街並みはいつもより明るい気がした。
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