拓　「・・・さゆさん、」



さゆ 「ん？

　　　　はい、できたよ、

　　　　今夜は異物の位置、
　　　　ここで我慢してくださいね、」



拓　「・・・俺と、付き合わへん？」



さゆ 「・・・は⁈」






急に、


真面目な顔で、


言うから。






拓　「彼氏、いてる？」



さゆ 「・・・い、ない、けど、」






あなたは、いるでしょう？彼女。


とは、言えない。


純喜から、聞いたよ、なんて。






拓　「・・・おれへんねや、」



さゆ 「い、ません、

　　　　こーゆー仕事してると、なかなかね、」



拓　「・・・ふーん。」



さゆ 「なんで、また、冗談でしょ？

　　　　からかって、どーすんの、」



拓　「・・・からかってへんよ、

　　　本気やねん、」



さゆ 「そ、んなこと、

　　　　言われても、

　　　　川西さん、モテそうだし、」






彼女、いるんでしょ？


サブ？ってこと？


それでも、いいから、


近付きたい、なんて。


わたしは濃厚イチゴＪＡＭ。


忘れてないよ。


わたしは拓実の、大ファンだから。






拓　「モテへんよ、

　　　おれ、しゃべりも下手やし、」



さゆ 「それが、」






かわいいんじゃん！


って言いそうになった自分を抑える。






拓　「それが、なに？」



さゆ 「な、んでも、ない、」



拓　「だめ？

　　　おれ、さゆさんのこと、

　　　あっという間に、すきになったよ、」






そ、んな目で、


見ないで。


わたしこそ、


魔法にかかるよ。






さゆ 「・・・あー、えと、あの、

　　　　仕事、もう終わりだから、

　　　　帰らないと、」



拓　「・・・ずるっ、逃げんの？」



さゆ 「逃げ、る、わけじゃ、ないけど、」






意外と、


男らしくて。


わたしが思ってた、姫なイメージとは、


また違う一面。






拓　「おれじゃ、あかん？

　　　何がだめ？」



さゆ 「・・・えーと、

　　　　髪！髪がほら！

　　　　派手、だし、あんまり、そーゆーのは、」






なんだその理由、






拓　「・・・タイプやないんや、

　　　わかった、

　　　あとは？」



さゆ 「あとは、って、、

　　　　こーゆー仕事してると、

　　　　勘違いしちゃうんだよ、結構。

　　　　退院したら、マジックにかかってたって、

　　　　気付くから。」






よくいるんだよ、


患者さんで。






拓　「マジック？」



さゆ 「弱ってる時に、お世話してもらって、

　　　　好きって錯覚してるだけ。

　　　　大丈夫だよ。

　　　　退院したら、わかるから、」





これは師長の酔っ払った時の名言ね。





拓　「・・・それはおれをばかにしてるよ、」





鋭い目を、


わたしから逸らさないから。


わたしが、逸らした、


このままじゃ、


吸い込まれるって思ったから。





さゆ 「そんな、つもりじゃ、」



拓　「退院したら、見ててよ、絶対、」



さゆ 「・・・退院したら、

　　　　会うことも、ないじゃん、」



拓　「・・・どうだろね？

　　　もう、寝るよ、おやすみなさい、」



さゆ 「たっ、」






あ、



名前、



だめ、








慌てて、病室を出た。



気付かれたかな？



拓実、



って、



呼びそうになった。