沢北栄治様

今年最後の手紙です。
届く頃にはクリスマスシーズンでしょうか？
アメリカのクリスマスって、慎ましやかなのか派手なのかどっちなんでしょうね。文化や宗教の違いもありますが、協会でお祈りを捧げる人達、家でたくさんの飾り付けをして楽しく過ごす人達、外に出かけて素敵な夜を過ごす人達。
...こっちとそんなに変わらない気がしてきました。
実際どうなのかはあなたのみ知るところですね。

私は私の知っていることをお話しします。何のことかは時期的に察していることでしょう。
そうです、期末テストです。
今回は河田さんに頼まれて美紀男君の勉強をみてあげました。もともと危うい程の成績ではなかったので苦手な科目を少しだけですが、良い結果を収めることが出来たと喜んでいました。私が教えたのはほんの一部だけなので、彼の努力の結果だと思います。
私の方はと言えば、テスト最終日に風邪をひいてしまいました。本来なら補講コースでしょうが、追試扱いにしてもらえたのは不幸中の幸いです。
なんでも、試験中に急性盲腸炎で救急搬送された生徒がいたことがあったため、病欠の場合は追試を受けるようになったのだとか。
これってイチノさんのことですよね？前にあなたから聞いたままでしたし。
正直、あの話信じてなかったんですが、我慢しないように、と念押しする先生の必死さから実話だと確信しました。
とにかく、冬休み前に心配事がなくなって良かったです。

もうひとつ。
詳細を書くと長くなるので省きますが、初夢は31日の夜ではなく1日の夜に見る夢のことって知っていましたか？悪夢がどうとかって話はしたことありますが、初夢に触れたことはなかったですよね。新年最初の占いではあるけれど、お互いその辺りは無頓着でしたから。
諺にあるような縁起物の夢とまではいかなくても、素敵な夢が見られますように。
ああそれと、アメリカでは年越しの瞬間にキスをするのが一般化されていると伺いました。年越しの瞬間に何をしているかで新しい年がどんなものになるか決まる、所謂迷信ですね。キスやハグは愛に溢れる年を意味するのだとか。

...わがままを言いますね。
もとよりスキンシップの多い国ですし、郷に入っては郷に従えと言いますが、私以外の人とキスはしないでほしいです。

それでは、良いお年を。

上田奈緒子

p.s
今年も雪がたくさん積もりました。足を取られてしまうから勢いをつけたいのに、それだと転けてしまいそうで大変です。あなたが隣にいることの偉大さを再認識しました。身体的にも、精神的にも。