未満
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あと何日もしないうちに行われる卒業式。
そんな中で学生達が湧き立つものと言えば、やはりあれだろう。
「沢北はさ、中学の頃に第二ボタンあげたの?」
まだ見送られる側ではない自分と、同じく見送る側のクラスメイトに投げかける質問は、この時期特有のもの。
「いーや」
「欲しがられなかった?」
「...声はかけられたけど」
「やるじゃん」
「けど、誰にもやってねぇよ」
「なんで?」
「そんな親しくなかったから...」
「へー...意外と硬派」
だからと言って軟派だとも思わないけれど。
「あ、ボタンっつったらさ...あれ意味みたいなのがあんの知ってる?」
「意味?」
「そー。オレもテツ...じゃない、親父から聞いたんだけど」
曰く、第一ボタンは自分、第三ボタンは友人、第四ボタンは家族、第五ボタンは他人。
そして、第二ボタンは一番大切な人を意味するらしい。
「へー、おもしろいね」
「だろ?」
「...あ、ねぇ、沢北」
「なんだよ」
「ボタン、予約して良い?」
「は?予約?」
「うん、来年の。第三ボタン...だっけ、友人のとこ」
先程の話を挙げながら、第三ボタンが付いている位置を指差す。
すると、彼から返ってきたのは予想外なセリフ。
「第二じゃなくて良いのか?」
「えっ」
「だから、第二ボタンでも...」
「...やだ、突然の告白?」
「ばっ...!そ、そーじゃなくて!」
「ふふ、知ってるよ」
「...揶揄うなよ!」
「ごめんごめん。で?第二が良いって言われないのはちょっと悔しいの?」
「別に...」
「負けず嫌いだね、ホント。さっき意味教えてくれたの忘れた?」
「や、けど一応、上田は女友達の中で一番仲良いし...」
「一応は余計」
「うっ...」
「あと沢北、あんた私以外に女友達いた?」
「くっ...!」
「...ふふふ」
「ほ、本当に第二じゃなくて良いんだな?!」
「うーん...」
彼の様子からして、特別な感情があるわけではないのは理解出来た。単純に、退くに退けなくなっただけだろう。
ならばここは、友として私ものってあげねばなるまい。
「第二ボタンにする」
「...!言ったな?」
「うん、言った言った」
「よし、じゃあ決まりな!」
「その代わり、やっぱなしとかやめてよね」
「あのなぁ、予め約束しておくことを予約って言うんだぞ!」
「...知ってるけど」
「そしてオレは守れない約束はしない!」
「良いことだね?」
「だから!」
「ちょ、声でかい...」
「オレの第二ボタンは!上田にやる!どぅーゆーあんだすたん?」
整った顔とはアンバランスな日本語英語。
(性格知ってるからイメージが崩れるとかないけど...ふふっ...)
「...そんな、キメ顔で...あははっ!」
「悪いかよ」
「んーん、全然」
むしろ、それでこそ私の知ってる沢北栄治。
「ありがとね、沢北」
「...?おう!」
私達の卒業まであと約一年。
それまで、彼から第二ボタンを貰うに相応しい相手で、異性の友人の中で一番に居続けなければ。
だから、お願い。
(...はやく落ち着いて、私の心臓)
友情以上にならないように、この距離を保ったままでいさせて。
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