答えはここに。
name change
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まだ小学校にあがる前の頃、近所に一組の家族が越してきた。
お父さんとお母さんと、私と同じくらいの年齢の男の子。後で聞いたらピッタリ同い年。
男の子とお父さんは、ほぼ毎日バスケをしていた。朝も、夜見えなくなるまで、ずっと。
バスケット漬けの二人だったから一緒に遊ぶなんてことはそんなになかったけど、見てるだけでも楽しくて、よく見に行かせてもらってた。
そうするうち、自然とその家族との距離は近くなるもので。
男の子が呼んでたみたいに私も”テツ”って、彼のお父さんことを呼ぶようになった。お母さんのことは”美佐ちゃん”。男の子のことは”栄治”。だって、二人がそう呼んでたから。私も呼び捨てにされてたし。
優しいのは美佐ちゃんもだけど、私が特に懐いたのはテツの方。
優しくて強くてかっこいいテツは、幼いながらに憧れの存在。多分、感覚的には近所の素敵なお兄さんみたいなものだったと思う。
「オレのテツだぞ!オレの父さんなんだからな!」
「おじさん、おばさん...って呼ばれるより、二人も嬉しいと思う」
「うっ...」
たまに栄治から入る苦情は正論で言い負かした。
それでも、年齢を重ねる毎に少しだけ変わっていった呼び方。敬称をつけるくらいではあったけど。
そしてある時、訪れた転機。
「テツ君テツ君って!テツはオレのテツだぞ!」
たしか、中学にあがって少し経ったくらい。
慣れてきたのか諦めていたのか、名前呼びに対して突っかかられなくなったな...と思っていた矢先、久々に苦言を呈された。昔と同じように。
今度はどう言い負かそうか考えている中、栄治の言葉は続き、その内容に思わず言葉を失った。
「そんなにテツって呼びたいなら奈緒子もテツの娘になれよな!」
絶対にその意味を理解していないであろうこのセリフ。
初めて言い負かされたような気分だった。
多分この頃からだったと思う。
名前で呼ばなくなったのも、栄治に特別な気持ちが芽生えたのも。