かわいいかわいい後輩くん
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『何か用事あった?』
「いえ、見かけたから話しかけただけです」
これには思わず顔が綻んでしまう。まあ、上手く笑えてるかは分かんないしどうせ顔半分は見えないけどね。
『かわいい奴め』
「190近い男によくそんなこと言えますね」
『かわいいに大きいも小さいもないんだよ』
「そーですか」
『ところで部活中じゃないの?』
「休憩です」
『ならしっかり休憩しな。私ももう帰るし』
「えっ...せっかく会えたのに...」
さっきからかわいすぎない?
スマホを持つ手に力が入っちゃうじゃないか...マスクしてて良かった、多分今やばい顔になってる。
『また学校で会えるでしょ』
「それはそうですけど、校内でも遭遇率だいぶ低いじゃないですか」
『ダンジョンじゃないから会えなくはないよ』
「それと一緒にされても」
そう、3年の私と2年の彼とでは、まず学校内での生活区間が違う。
校舎は同じでも各々の教室は別の階にあるし、移動教室の授業でも出くわすことはあまりない。昼休みや放課後などの空き時間にたまたま会うくらいだ。
それだって私のクラスにいるバスケ部員に用事があった時。私は部活に入っていないし2年の教室に用事はない。
いくら親しいと言っても、男子生徒が圧倒的に多いこの学校で、我が校の有名人に会いに行くのは若干気が引ける。
彼女でもあるまいし。
『気が向いてタイミングも合えば行くかもね』
「それ多分来てくれないやつ」
『行けたら行く』
「それ絶対来ないやつ!」
『そう興奮するな、若者』
「一個しか違わないでしょ......あーもう、じゃあオレが会いに行きます」
『健気だね』
「会いたいんですよ!」
犬か......って、これだと私が主人みたいになるな。
『よーしよしよし』
「犬扱いですか」
『バレたか。あ、それはそうと』
「はい?」
『会いに来て、じゃないんだ?』
「そりゃ来てくれたら嬉しいですけど...」
『けど?』
「どうせ来てくれないでしょ」
『私そんなに薄情っぽい?否定は出来ないけど』
「そこは否定してくださいよ」
『ごめん』
「別に良いですけど...オレそろそろ戻りますね」
『うん、いってらっしゃい。頑張って』
「はい!じゃあ上田さん、また月曜に!」
爽やかな笑顔で去っていく沢北に口元が緩んでいくのが分かる...
...ってあれ?
「...麻酔きれてる」
どうやら自分で思っていたよりもずっと、彼への気持ちは大きかったらしい。
もう自由が効くはずの顔を両手で押さえながら、再び表情のコントロールを試みる。
マスク、してて良かった。