かわいいかわいい後輩くん
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会いたいと思う時は会えないのに、会いたくないって思う時程顔を合わせてしまうのは何故だろう。
「上田さーん!」
ほらね、今とかまさにそれ。
少し離れたところから後輩が呼んでる。手まで振っちゃって可愛いこと。
彼の名前は沢北栄治。我が山王工業高校が誇るバスケ部のエース。
彼のチームメイト(私にとってはクラスメイト)を通して親しくなったのだけど、自分でも謎なくらい懐かれている。女生徒の少ない学校だからそう感じるだけかもしれないけど。
てか、マスクで顔半分も隠れてるのに私だってわかるのすごくない?おじさんじゃないけど、JKなんて服装はもちろん髪型だって似たような子達ばかりなのに...まあいいか。
さて、いつもなら私も彼の名前を呼んで手を振り返すところだが、生憎今はそれが出来ない。
でも無視するのは気が引ける...と悩んでるうちに相手の方が近づいて来た。
ああもう、だから今は会いたくないんだってば!
「上田さん...?」
「...うん」
「あ、良かった。ここまできて人違いかと...土曜なのになんで学校に?」
「んー...」
「あとなんでマスク?」
「あー...」
「風邪とか?」
「んー...」
「...もしかして話しかけない方が良かったですか?」
それはない!
......とは叫べないから、代わりにブンブンと首を振っておいた。
観念して小さく溜息を吐きスマホを取り出す。
操作している最中ずっと、悲しそうな視線が刺さって痛い。
ごめん、無視してるわけじゃないから許して。そんな叱られた子供みたいな顔しないで、あんた17歳でしょうが。
罪悪感に駆られながら急いで文字を入力し、画面を見せた。
『ごめん、麻酔で痺れてて上手く喋れない。マスクは表情筋が仕事しないからつけてるの』
「麻酔?」
『歯医者』
「歯医者...あ、虫歯ですか?」
『うん。酷いわけじゃないけど位置的に麻酔必須だった』
「うわ大変...」
『学校には忘れ物取りに来ただけ』
「そうだったんですね。いろいろお疲れ様です」
『ありがと』
お礼の文字とは反対に、顰めっ面になってしまう。
そう、呂律が上手く回らないだけ。痺れが取れないと顔が面白いことになっちゃうからマスクは必須なんだよ。
会いたくないのもそれが理由。
だって恥ずかしいじゃない。