おんぶ、からの...
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人の背中に乗ると、何故だかこう叫びたくなる。
「いざ、発進!」
「しないよ」
そんな儚い童心を見事に一刀両断する幼馴染。
「なんで?!」
「逆になんで?」
「え、聡と私は唯一無二のパートナーでしょ?」
「いつから落雷出来る黄色い生き物になったわけ?」
「違うもん!人間だもん!落雷はされる側だもん!」
「落雷受けたらダメだろ」
「もー!良いから進んでよー!」
「イヤ」
「...そんなこと言って良いの?やってくれなきゃ降りないからね?」
「我慢比べするのか?このオレと?」
「するもん!」
...とは言ったものの、支えなしでしがみつくのは割とキツい。
だって、運動嫌いの帰宅部民だもの。他の人よりもひ弱な自信しかない。
「...腕疲れてきた」
「だから言ったのに」
「なんでそんな平気そうなの?」
「鍛え方が違うんだよ」
「そうだろうけど...!」
「しんどいなら早く降りな?」
正直なところ、その提案に頷きたくてたまらないのが本音。
「...えいっ!」
だけど、私にだって意地がある。
「うっ...!ちょ、苦しいんだけど...」
「ふふふ...このまま無様に負けるわけにはいかないんだから...死なば諸共よ!」
「たかがおんぶにそこまで執念かける?普通」
「人のこと言えないから!そっちこそ妥協してくれても良いでしょ!」
「断る」
「さっきから即答すぎじゃない?」
「変に気を持たせるのは悪いと思って」
「そんな気遣いいーらーなーい!」
声をあげたせいか、殆どない体力が更に削られていくようだ。
「あのさ」
「うん」
「しょうがないからさ」
「うん」
「...ひとまず今回は私が折れてあげる」
「そもそも奈緒子が勝手に乗ってきたわけだけど」
「そういうのは今いいの!」
「はいはい」
自分を曲げない頑固者の幼馴染だけど、敗北宣言してなお降りようとしない私をそのままにしてくれるあたり、やっぱり優しいと思う。
でも、それはそれとして悔しいのも事実。
だからもう少しだけ、この背中は占拠させてもらいます!