おんぶ、からの...
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何故背中に乗ったのか?
そこに背中があったからだよ。
「ってわけで...雅史、発進!」
幼馴染の後ろ姿を見つめる自分の目は、期待に満ちている。
見えないけど。
「どんなわけだ」
そして幼馴染の目は、恐らくいつもと変わらない。
見えないけど。
「急になんだ?人の背中乗って」
「そこに背中があったから!」
「山か」
「山のようなどっしりさは感じるよ、安心感!」
「褒めてんのかそれは」
「褒めて...わわ!」
油断して手に力を入れていなかったせいで、突然立ち上がる雅史に危うくその場へ置き去りにされるところだった。
「...っと、急に立たないで、びっくりするでしょ!」
「危ねぇから降りろ」
「雅史が支えてくれたら危なくないんだけどな!」
「我儘ばっか言うでねぇ、奈緒子」
「我儘じゃないもん!事実だもん!」
「どした、えらく粘るでねぇか」
「だってー...」
離れようとしない私に、さっきまでは1mmたりともこちらを見ようとしなかった顔が、ほんの少しだけ動く。
「...嫌なことでもあったか?」
こういう優しいとこ、ホント昔から変わらないよね。
でもごめん、粘るのに意味はありません。
「や、全然」
「なんなんだ、おめぇは」
「人間ですぅ」
「振り落とすぞ」
「雅史が床に座ってたから!背中に乗りなさいって言ってるようなものでしょ!」
「んなわけあるか。ほれ、降りろ」
「ヤダヤダヤダー!」
高校生にもなってこんな駄々の捏ね方を......とは思わない。
だってこれが、昔から続く私達の関係だもんね。
「はー....」
ほら、きた。
雅史がこの溜息を吐く時、次に来るセリフはほぼ確定してる。
「少しだけだぞ」
なんだかんだ甘やかしてくれるのは、今も変わらないって知ってるんだから。
「うん!」
それ程力の込められてない腕に身体を預けながら、頭の中を過ぎった根拠のない確信。
この背中より安心出来るところなんて、これから先きっと見つからない。