欲しかったやつじゃなーい!
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「まーつーもーとー!」
「人の名前をそんな大声で呼ぶなよ...どうした?」
「まーつーもーとー」
「いや聞こえてるんだが」
背の高い彼に合わせて高く掲げたのは、こんな風に名前を呼ぶことになった原因。
「見てよ、これ」
「...なんだこれ」
「牛乳」
「それくらい知ってる」
「自販機で買ったら出てきた」
「だろうな」
「ちーがーうーのー!」
「だから、なにがだ?」
要領を得ない発言に苛立つこともなく、穏やかな姿勢を崩さない松本に、慣れってすごいなと思う。
「私は!フルーツジュースを買ったの!なのにこれが出てきたの!」
それに全力で甘えてしまう私は改善すべきなんだろうけど。
「押し間違えたのか?」
「ううん。てか列も段も違うし間違えようないし」
「なら故障か。ツイてなかったな」
「でしょ?...松本、いる?」
「いや間に合ってる」
「そっかそっか...じゃあ、はい」
「人の話聞いてたか?」
「だって今日、お昼パンでしょ?お供にピッタリ!」
「なんで知ってるんだよ...」
「たまたま見えた。ね、良いでしょ?私飲めないし...持って帰るまでにダメになっちゃうかも」
「真夏の炎天下じゃあるまいし......はぁ、分かった。引き取る」
空っぽになった手が、この押し問答の勝者は私だと物語っているみたいで面白い。
「さすが松本、信じてた!じゃ、よろしく」
「あ、おいちょっと待て!」
「返品は受け付けません、クーリングオフ不可!」
「そうじゃなくて......ほら」
「あ、お金は大丈夫だよ!押し付けた自覚あるし」
「...そういうとこだけ変に気を遣うよな、上田は」
頑として拒否をする私を見た松本は、これ以上は無意味と判断したらしく、苦笑いを浮かべながら手を引っ込めた。
うん、律儀な性格が葛藤してるその素直な感じ、ホント松本らしい。
...と、微笑ましく思う私へ。
翌日、フルーツジュースを買ってきてくれる義理堅さを見せる彼に、今度は自分が折れる番になる。