彼と私と日やけ事情


「藤真様、お願いします!」

顔の前でパンッ!と手を合わせ、お願いしますのポーズをとる。

「は?なにをだ?」

キョトンとした顔で訊ねる彼に、心の中で謝罪をした。そんな表情も素敵だな、とか不埒なこと考えてごめんなさい。
でもほら、好きな人だとフィルターかかっちゃうし...じゃなくて。

今大事なのはこっち!

「美白の秘訣を教えてください!」
「知らん」
「即答でそれ?!」
「事実を答えたまでだ。知らないものは知らないんだよ」
「うー...神様は不公平だ...!日やけ止めなしでこんな美白なんて...」
「使ってないとは言ってないが?」
「えっ...で、でも知らないって...」
「美白の秘訣とやらはな。けど、日やけ止めは使ってる」
「...聞いといてなんだけど意外」

いや、本当、失礼な自覚はあるのだけど。
だって気にしなさそうだし、なんなら海でも塗らずにエンジョイしてそう...って、好きな人に対して持つ印象としてどうなの、私。

「...本当意外」
「二回目言うのか」
「いや、藤真って塗らなくてもやけなさそうだし...」
「まあ基本は赤くなるだけだが...昔油断して痛い目見たんだよ」
「痛い目?」
「ああ。日当たりの良いとこで寝てたら直射日光にやられてな...」
「うわ、やばいやつ」
「しばらくの間やけたとこが痛くて地獄だった」
「聞いてるだけで痛い...!」
「そんな訳で塗るようになった。美容というよりは健康の為にな」
「...なんか、浅ましい気持ちで聞いてごめん」

いっそ純粋に美の追求がしたくて聞いたなら、罪悪感は半減だったかもしれない。
下心を持って近づくのはダメだな、うん。良い教訓になった。

...けど、それはそれってことで。

「ちなみにどこの使ってんの?」

これは所謂チャンスというもの。
なんのかって?そりゃもちろん、好きな人とお揃いのアイテムを使えるチャンスですよ。

恋する乙女は強く逞しく、そして時に狡賢く生きるんだから。
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