彼と私と日やけ事情


好きな人のことを考えると脳はすぐにバカになる。

「...深津って、結構色白だよね」

気づいた時には遅かった。脳内だけで巡らせていたはずの言葉は、しっかり音となって相手の耳へ届いてしまったらしい。
そのうえ、幸か不幸か彼はこの唐突な呟きをスルーしなかった。

「これでもやけたピョン」

袖を捲って見せてくれた腕は、たしかに露出している部分よりも更に白い。
え、てかそんな、見せてくれるの?役得すぎる...!

「あ、えっと...じゃあ元から白い方なんだね!」
「まあ、そうなるピョン」
「良いなぁ。私、自黒でやけやすいから羨ましい......あ、でも!日やけしてる深津も好きだよ!白でも黒でも深津はかっこいいよ!」

思わぬところで会話のチャンスが訪れたせいか、興奮が抑えられない......あ、いつもか。

「やけるタイミングがあまりないだけピョン。体育や部活の外周くらいじゃたかが知れてるピョン」

そしてこの華麗なスルー、こちらもいつも通り。

「そっかそっかぁ...ちなみに日やけ止めはちゃんと塗るの?」
「必要に応じてやるピョン。後で痛い目見る羽目にはなりたくないピョン」
「あはは、小さい頃の私に聞かせてあげたい」
「その失敗のおかげで今があるピョン」
「や、優しい...!過去の痛みと後悔、今全部救われたよ...!」
「そうかピョン」

多分、本人に他意はないだろう。言葉こそ選ぶが、思ったことは飾らず素直に伝えるのが彼という人間。
そんなとこに心底惚れてるわけだけど、傍から見ればマゾヒストともとれるらしい。失礼な話だ。

「お礼にオススメ日やけ止めリストアップしてくるね!付け心地とかコスパとか分けたらたくさんあるから」
「それは助かるピョン」
「これで深津と日やけ止めお揃い...!」
「情報提供に免じて聞かなかったことにするピョン」

二度目のうっかりに反省しつつ、免罪符がなければどんな言葉を浴びれたのだろう...と考える私は、やっぱりマゾヒストかもしれない。
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